ベルリン国際映画祭 審査員大賞に濱口竜介監督「偶然と想像」

世界3大映画祭の1つ、ベルリン国際映画祭で審査員大賞に濱口竜介監督の「偶然と想像」が選ばれました。

ことしで71回目となる「ベルリン国際映画祭」は、今月1日からオンラインで始まり、5日に世界各国から15の作品が出品されたコンペティション部門で審査結果が発表されました。

このうち審査員大賞には、3つの短編映画からなる濱口竜介監督の「偶然と想像」が選ばれました。

ベルリン国際映画祭は新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、映画祭を今月と、ことし6月に分けて行うことにしていて、授賞式は6月に行われる予定です。

ことしの映画祭は性別を区別しない姿勢を強く打ち出すとして「最優秀男優賞」と「最優秀女優賞」を廃止し、新たに「最優秀主演賞」と「最優秀助演賞」を設けたことでも注目を集めました。

審査員大賞に選ばれた作品 「偶然と想像」とは

濱口竜介監督の「偶然と想像」は、3つの短編作品からなる映画です。

1話目の「魔法(よりもっと不確か)」は、主人公の女性が友人から恋愛の相談を受けているうちに、相手の男性が自分の前の交際相手だと気付き、どうふるまうべきか思い悩む姿を描いています。

2話目の「扉は開けたままで」は、大学生の女性が、芥川賞を受賞して有名になった教授に恨みを持つ同級生に頼まれてスキャンダルを起こすため、研究室で教授を誘惑しようとする物語です。

3話目の「もう一度」では、20年ぶりに再会した2人の女性が、思い出話をするうちに会話が次第にすれ違っていき、物語は思いもよらない方向に向かっていきます。

いずれの作品も、偶然の出会いや出来事がきっかけで物語が大きく動き出すのが特徴で、ほとんどのシーンが2人の登場人物の会話だけで構成されています。

濱口竜介監督とは

濱口竜介監督は神奈川県出身の42歳。

東京藝術大学大学院の修了制作作品「PASSION」が国内外の映画祭に出品されて注目を集め、その後、東日本大震災をテーマにしたドキュメンタリー映画など、多くの作品を手がけてきました。

平成27年に公開された映画「ハッピーアワー」は、女性どうしの友情や夫婦関係の葛藤を描いた5時間を超える大作で、その年のスイスのロカルノ国際映画祭では、それまで演技の経験がなかった主演の女性4人が最優秀女優賞に選ばれて話題となりました。

平成30年には「寝ても覚めても」が、カンヌ映画祭の最優秀賞を競うコンペティション部門に選ばれています。

また去年、イタリアのベネチア国際映画祭で黒沢清監督が監督賞に選ばれた「スパイの妻」では、監督らと共同で脚本を担当しています。

濱口監督はNHKの取材に対し「派手な映画ではないので、そのよさを分かってくれる人がどれくらいいるだろうかと思いながら作っているので、大きな映画祭からメインのコンペティションの作品の一つとして選ばれるのはとても光栄です」などと話していました。

濱口監督「心からうれしく誇らしく思う」

ベルリン国際映画祭で審査員大賞に選ばれたことを受けて、監督や出演者がコメントを発表しました。

このうち濱口監督は「経験豊かな監督たちがそろった『審査員からの賞』が贈られたということを心からうれしく、誇らしく思っています。この映画、一番の見どころはと問われたら『役者の皆さんの演技』だと答えます。今はなかなか集まる機会が持てませんが、早く皆さんと喜びを分かち合いたいと思います」とコメントしています。

出演した中島歩さんは「『人を振り向かせる声』を探すところから始まったこの作品が、ひとつの大きな成果を得たことに興奮しています。それぞれが創造力を発揮し、信じ合えた結果だと思います」としています。

同じく出演者の河井青葉さんは「濱口監督の映画作りは私にとっても、映画界にとっても未来を切り開く一歩だと思っています。丁寧に時間を重ねるということの大切さを改めて感じる経験で、今回このようなすばらしい賞を授かったことはまさにその答えなのではないかと思っています。心からおめでとうございます!」とコメントしています。