“宣言”発出から8週間 1都3県は感染者数の下げ止まり明確に

緊急事態宣言が出されてから5日で8週間、1都3県での延長が決まりました。感染状況を示す指標の1つで、1人の感染者から何人に感染が広がるかを示す「実効再生産数」をNHKが簡易な手法で計算したところ、1都3県では感染者数の下げ止まりが明確になってきています。
専門家は「緊急事態宣言が出ている最中にとても心配な状況で、今後、再拡大しないか特に注意する必要がある」と話しています。

NHKは、国立感染症研究所の鈴木基感染症疫学センター長の監修を受け、緊急事態宣言が出されている1都3県と、先月末に解除された地域について、4日までのデータに基づいて簡易な手法で実効再生産数を計算しました。

実効再生産数は、1人の感染者から何人に感染が広がるかを示し「1」を上回ると、感染が拡大に向かう一方、「1」を下回ると収束に向かうとされています。

より正確に出すには発症日を推定して計算するなど、さらに多くの条件を考慮する必要がありますが、時間がかかるため、あくまで目安の数値として、確認された日ごとの感染者数をもとに簡易な手法で計算しています。

※今後、公的な機関などが発表する実効再生産数のデータと結果的に異なる場合があります。

首都圏 1都3県

【東京都】
実効再生産数は、緊急事態宣言が出された、
▽ことし1月7日時点で1.28、
▽1月14日時点で1.22と、「1」を超えていましたが
▽1月21日時点に0.94と、「1」を下回りました。

その後、
▽1月28日時点で0.73、
▽2月4日時点で0.75、
▽2月11日時点で0.78、
▽2月18日時点で0.82、
▽2月25日の時点で0.84、
▽3月4日の時点では0.97と、
感染が減少するスピードは鈍っていて「1」に近づいています。
【神奈川県】
▽1月7日時点で1.11、
▽1月14日時点で1.45でしたが
▽1月21日時点では0.97と、「1」を下回りました。

その後、
▽1月28日時点では0.68、
▽2月4日時点で0.71、
▽2月11日時点で0.71、
▽2月18日で0.74、
▽2月25日時点で0.95と、徐々に数値が上がり、
▽3月4日の時点では1.05と、
再び「1」を上回り、感染が拡大する方向になっています。
【埼玉県】
▽1月7日時点で1.10、
▽1月14日時点で1.25、
▽1月21日時点で1.05、
▽1月28日時点で0.73、
▽2月4日時点で0.89、
▽2月11日時点で0.80、
▽2月18日時点で0.83、
▽2月25日時点で0.81、
▽3月4日の時点では0.98と、
減少のスピードが鈍り「1」に近づいています。
【千葉県】
▽1月7日時点で1.22、
▽1月14日時点で1.42、
▽1月21日時点で1.04でしたが
▽1月28日時点では0.82と、「1」を下回りました。

その後は、
▽2月4日時点で0.78、
▽2月11日時点で0.74、
▽2月18日時点で0.85、
▽2月25日時点で0.98と、徐々に数値が上がり、
▽3月4日の時点では1.02と、
再び「1」を上回りました。

【1都3県全体】
▽1月7日時点で1.21、
▽1月14日時点で1.30、
▽1月21日時点で0.98、
▽1月28日時点で0.73、
▽2月4日時点で0.77、
▽2月11日時点で0.76、
▽2月18日時点で0.81、
▽2月25日時点で0.88、
▽3月4日の時点では1.00と、
感染者数の下げ止まりが明確になってきています。

東海 2県

一方、先月末にすでに解除された地域です。
【愛知県】
緊急事態宣言が解除される直前の、
▽2月25日時点では0.77と、「1」を下回っていましたが、
▽3月4日の時点では1.04と、再び「1」を上回っています。
【岐阜県】
▽2月25日時点で0.67、
▽3月4日の時点では0.72と、「1」を下回っています。

関西 2府1県

【大阪府】
緊急事態宣言が解除される直前の、
▽2月25日時点で0.83で
▽3月4日の時点で0.95と、
「1」を下回っていますが、感染が減少するスピードが鈍る傾向になっています。

【京都府】
▽2月25日時点では0.65だったのが、
その後、
▽3月4日までの1週間では、1日の平均の感染者数が10人を下回っていて、京都府単独では統計学的に数値の信頼性が低いため示せません。
【兵庫県】
▽2月25日時点で0.68でしたが、
▽3月4日の時点では1.02と、再び「1」を上回りました。

【関西の2府1県】
▽2月25日時点で0.77、
▽3月4日の時点では0.94となっています。

福岡県

▽2月25日時点で0.71、
▽3月4日の時点では0.79と、「1」を下回っています。

全国では

▽1月7日時点で1.18、
▽1月14日時点で1.27、
▽1月21日時点では0.96、
▽1月28日時点で0.77、
▽2月4日時点で0.74、
▽2月11日時点で0.75、
▽2月18日時点で0.80、
▽2月25日時点で0.85、
▽3月4日の時点では0.99と、
「1」を下回っていますが、感染者数が減るスピードは鈍っています。

専門家「心配な状況 再拡大しないか特に注意が必要」

日本感染症学会の理事長で、東邦大学の舘田一博教授は「緊急事態宣言が出ている最中に1を上回る地域が出たのはとても心配な状況で、今後、感染が再拡大しないか特に注意する必要がある。緊急事態宣言が再び延長される1都3県では、延長の効果で医療現場の負担は確実に減ると考えられるが、2週間程度で感染状況が劇的に改善するとは思えず、これまで以上に一人一人が対策に取り組む必要がある。これから気候も暖かくなり花見などの機会も増えるが、ことしは屋外だとしても大人数での飲食の場への参加は避けて過ごしてほしい」と話しています。

また、解除された地域でも「1」を上回る地域が出ていることについて「感染者数が減ったため、感染者数の多少の増減が数値に大きく反映されている可能性も否定できないが、解除による緩みが出てこないか慎重に見ていく必要があり、楽観すべき状況ではない」と話しています。