東京五輪・パラの事前合宿 受け入れ断念する自治体相次ぐ

東京オリンピック・パラリンピックではホストタウンなど、全国の自治体で海外選手の事前合宿が予定されていますが、感染対策の負担などを理由に受け入れを断念する自治体が相次いでいます。

ホストタウンの事務局を務める内閣官房によりますと、全国で517の自治体がホストタウンに登録し、その多くが事前合宿を予定し、独自に受け入れを行う自治体もあります。

国は去年12月、選手の検査や行動管理など、新型コロナウイルスの感染防止の責任を自治体に課し、選手との大会前の交流はオンラインを活用するなど、直接接触しないよう求める指針を公表しました。

さらに、来月初めをめどに相手国と感染対策について合意するよう求めていますが、感染対策の負担や選手との交流が制約されることなどを理由に、受け入れを断念する自治体が相次いでいます。

【宮城県 栗原市】
南アフリカのホッケー、男子チームの事前合宿を独自に受け入れる予定でしたが、感染対策の負担などを理由に断念を決めました。

【島根県 奥出雲町】
ホストタウンとして、ホッケーのインド代表チームを誘致していましたが、感染防止の態勢を整えるのが困難だ、などとして受け入れを断念しました。

【岐阜県 郡上市】
感染防止対策をとるのが難しいなどとして、7人制ラグビー女子のコロンビアとマダガスカルの代表チームの事前合宿の誘致を断念しました。

【長野県 岡谷市】
卓球のカナダ代表の事前合宿を予定していましたが、カナダ側から感染拡大の見通しが不透明だとして、見送りの意向が示されたということです。

【愛媛県 西条市】
オーストリアのスポーツクライミングを誘致していましたが、オーストリア側から訪問が難しいとの意向を告げられ、誘致を断念しました。

今後、受け入れを断念する自治体が増える可能性があるという見方もあり、内閣官房は「住民が事前合宿での交流を楽しみにされていたと思うと残念だが、これまでのつながりがなくなるわけではないので、大会後などで交流を継続してほしい」としています。

「さまざまな対策必要で断念」

岐阜県郡上市は、おととし日本で開かれたラグビーのワールドカップで海外チームの事前合宿の誘致活動を行うなど、ラグビーの振興に力を入れ、東京オリンピックではコロンビアとマダガスカルのホストタウンに登録されています。

このうち、7人制ラグビー女子については、代表選手たちを招いて子どもたちと交流したり大会を開いたりするなどして、東京オリンピックに向けて代表チームの事前合宿の誘致活動を続けてきました。

しかし、市の関係者によりますと、移動中は専用の車両を確保し、宿泊施設ではほかの利用者との接触を避けるため施設を貸し切るなど、国が示す感染防止対策をとるのが難しいなどとして、これまでに誘致を断念したことが分かりました。

代表チームと市民の交流が難しいことも断念の理由になったということです。
郡上市スポーツ振興課の黒田隆成課長は「選手の移動や宿泊、交流などの際にさまざまな対策が必要となるため断念した。子どもたちとの交流ができずに残念だが、手紙やSNSを活用して交流は続けていきたい」と話しています。

交流を期待していた地元の中学生は

海外のオリンピック選手との交流を期待していた地元の中学生からは、トップ選手を間近で見る貴重な機会がなくなったことを惜しむ声が出ています。

南アフリカからホッケー男子の事前合宿の受け入れを予定していた宮城県栗原市は、県内で唯一、中学校でホッケーの部活動があります。

南アフリカの選手たちが事前合宿で使う予定だったホッケー専用グラウンドで、ふだん練習している市立築館中学校のホッケー部は、オリンピック2大会に出場した三橋亜記選手の母校で、現在は男女15人が活動しています。

3年前に、このグラウンドで日本代表と海外の強豪チームとの親善試合が開かれた際に、選手と交流した経験を持つ部員も多く、市は交流事業に招待することを検討していました。

ホッケー部を指導する曽根原龍太教諭は「慣れない英語でも、トップ選手と会話して吸収するいい機会だった。いずれ自分たちもオリンピックに出るという目標を持ってもらいたかったので残念だが、受け止めざるをえない」と話していました。
2年生で女子キャプテンの千葉麻衣さんは「3年前の交流では、選手と触れ合うことができて楽しかった。世界で戦う選手を間近で見る機会はめったにないので残念です。技術のコツを聞いてみたかった」と肩を落としていました。

苦渋の決断 「ワクチン接種だけでも手いっぱい」

宮城県栗原市は、20年前に国体の開催地になったのをきっかけにホッケーが盛んで、3年前に市のホッケー専用グラウンドで開かれた日本代表と強豪のドイツやカナダとの試合では立ち見が出ることもあったということです。

市はホストタウンには登録していませんが、去年10月に独自に南アフリカの受け入れを決め、専用グラウンドの確保や滞在するおよそ30人の選手とスタッフのため市内のホテルを2週間、貸し切るなど計画を進めていました。

しかし、その後、国が示した指針では選手や自治体の関係者への検査を求めるなど、感染防止の責任を自治体が負うとされました。

市は今後、ワクチン接種なども始まり地域医療への負担が重いなどとして、ことし1月下旬に受け入れを断念し、南アフリカ側も受け入れたということです。

市によりますと、ホッケー専用グランドに隣接した体育館は今後、市民のワクチン接種の会場になる可能性があり、接種が本格化すれば職員の業務が増えることも考慮したということです。

栗原市の千葉健司市長は「国は感染予防策をすべて自治体に委ねているが、いち自治体では対応できず、ワクチン接種だけでも手いっぱいという状況だ。市内にはホッケーに取り組む子どもが多く交流を考えていたので非常に残念だ。国の責任でやってもらえると受け入れへ前進できたのにと思う」と述べ、苦渋の決断だったことを明かしました。