専門家会合 1都3県“宣言解除でリバウンドの誘発に注意必要”

東京都など1都3県に出されている緊急事態宣言の期限が今月7日に迫る中、新型コロナウイルス対策について助言する厚生労働省の専門家会合が開かれ、宣言の対象となっている1都3県の感染状況について、感染者数の減少スピードが鈍化しているとしていて、緊急事態宣言の解除で感染の再拡大=リバウンドが誘発されることに注意が必要だとしました。感染者数の減少を継続させることで医療体制の負荷を軽くし、ワクチンを安定して接種できる体制を確保するとともに、変異ウイルスは緊急事態宣言下でも増加傾向が見られ、今後、拡大する懸念があるとして、検査体制の早急な強化などが重要だと指摘しています。

3日開かれた会合では、緊急事態宣言の対象になっている首都圏の1都3県の感染状況について、「減少傾向であるが、感染者数の減少スピードが鈍化し、東京都や千葉県では依然として人口10万当たりの新規感染者数はステージ3の15人に近い水準になっている」としたほか、医療体制についても、負荷の軽減は見られるが、病床使用率が高い地域もあるなど厳しさが見られるとしています。

また全国でも先月中旬以降、感染者数の減少スピードが鈍化していて、各地で若年層の感染者数の下げ止まりの傾向や、感染が縮小した地域でのクラスターの発生も見られ、リバウンドに注意が必要だとしています。

こうしたことから専門家会合は、新規感染者数の減少を継続させることで医療体制の負荷を軽くし、ワクチンを安定して接種できる体制を確保することが重要だとしていて、歓送迎会や花見など、年度末から年度初めの恒例行事に伴う宴会や旅行はなるべく控えてもらえるように、効果的なメッセージの発信が必要だとしています。

また緊急事態宣言の解除について、「リバウンドが誘発されることに注意が必要」だとしていて、特に首都圏では感染が継続した場合に他地域への影響も大きいとして、「感染の再拡大を防ぐためには、できるだけ低い水準を長く維持することが必要だ」と指摘しています。

さらに変異ウイルスについて、緊急事態宣言下でも感染力が高いとされるものなどの増加傾向が見られ、今後、接触機会の増加や感染対策の緩みで既存のウイルスから置き換わっていく可能性もあり、リスクが拡大する懸念があるとしています。

このため専門家会合は、変異ウイルスの影響を抑えるための対応として、水際対策の強化を継続することや、民間検査機関などとも連携した、変異ウイルスを見つけるための検査体制の早急な強化などが必要だとしています。

脇田座長「従来対策では減少しない懸念も」

専門家会合の脇田隆字座長は会合後の記者会見で、首都圏の感染状況について「新規感染者数は下げ止まりや、減少スピードの鈍化が見られる。東京都では感染者数の1週間の平均が260人程度で、これは去年11月中旬と同じくらいの状況だ。去年はそこから徐々に拡大していったことを考えると、さらに感染を低減することが再拡大を防ぐために重要だ」と述べました。

そのうえで今後の対策について「飲食店を中心とした対策、不要不急の外出自粛、テレワークの推進のような、これまでの緊急事態宣言下の対策では、感染が減少しないのではないかという懸念が会合で出された。見えにくい感染源を見つけるために、感染経路の調査を強化することで、どういった場所で感染が起きているのかしっかり調べ、対策を行っていく必要がある」と話しています。

変異ウイルス 感染事例の分析結果報告

新型コロナウイルス対策について助言する厚生労働省の専門家会合では、国立感染症研究所が2月25日までに確認された188例の変異ウイルスへの感染事例について分析した結果が報告されました。

国内で確認されたケースでは10歳未満が21%など、若い世代が多くなっていましたが、脇田隆字座長は感染が確認された人の数はまだ少なく比較的大きなクラスターがあると割合が多くなってしまう可能性があるとしていて、データの分析を続ける必要があるとしています。

専門家会合に出された資料によりますと、変異ウイルスへの感染が確認された188例のうち、空港などの検疫で確認されたのは43例、それ以外の国内での確認は145例となっています。

この145例を詳しく見ると、感染力が高まると考えられる変異が入った、イギリスで最初に報告された変異ウイルスが139例で96%を占めていました。

また、感染力が高まると考えられる変異に加えて抗体の攻撃を逃れるタイプの変異が入ったもののうち、南アフリカで最初に報告された変異ウイルスが4例で3%、それにブラジルで広がっている変異ウイルスが2例で1%でした。

そして国内で確認されたケースのうちで海外への渡航歴があったのは10例と7%にとどまり、93%にあたる135例は渡航歴のない人から確認されていました。

また、年齢別に見ると
10歳未満が最も多く31例で21%、
10代が9例で6%、
20代が16例で11%、
30代が28例で19%、
40代が24例で17%、
50代が16例で11%、
60代が10例で7%、
70代が2例で1%、
80代が2例で1%、
90代以上が6例で4%、
確認中が1例で1%となっていて、
若い世代の感染が多い傾向がありました。

脇田座長は「従来のウイルスに比べて子どもや若い人の感染が多いように見えるが、変異ウイルスへの感染が確認された人はまだ少なく、比較的大きなクラスターがあると、割合が多くなってしまう可能性がある。今後もデータの分析を続けていく必要がある」と話しています。