コロナ禍でデパート売上減 今後の方向性を議論 経産省

新型コロナウイルスの感染拡大でデパートの売り上げが大きく落ち込む中、経済産業省はデジタル化を通じた従来のビジネスモデルからの転換など業界が目指すべき今後の方向性について議論を始めました。

経済産業省は、2日、デパートやアパレルの業界団体のトップなど、経営者や専門家からなる研究会を開き、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で売り上げが大きく落ち込んでいるデパート業界の課題と今後の方向性を議論しました。

この中で、経済産業省の担当者は、人手不足やデジタル化への対応などが業界全体として遅れていることが背景にあると指摘しました。

また、出席者からもコストの削減や業務の効率化のために営業時間の短縮やデパートと出店するテナントが販売データを共有することが必要だといった指摘が出ました。

研究会では店舗に足を運んでもらい商品を買ってもらうという画一的なビジネスモデルからインターネットを使った接客やネット通販の強化、それに顧客データの効果的な活用など新型コロナウイルスの収束後を見据えた今後の方向性についても検討していくことにしています。

研究会では、消費者へのアンケート調査なども実施する予定で、ことし7月ごろまでに議論を取りまとめることにしています。

ネット通販などのデジタル技術の活用に注力

新型コロナウイルスの感染拡大に伴って、営業時間の短縮や外出自粛の傾向が広がり、デパートは売り上げが大きく落ち込むなど、打撃を受けています。

日本百貨店協会によりますと、去年1年間の全国のデパートの売り上げは、前の年よりも1兆5000億円余り減って、1975年以来、45年ぶりの低い水準となりました。

売り上げの柱となっている女性向けの衣料品や化粧品が落ち込んだほか、海外との往来が途絶えたことで近年、大きな割合を占めていた外国人観光客向けの売り上げもほとんどなくなったためです。

さらに、長年、デパートに出店していたアパレル企業が相次いで店舗の閉鎖を決め、売り場をどう維持していくのかといった課題も抱えています。

こうした中、デパートが注力しているのがネット通販などのデジタル技術の活用です。

既存のネット通販に加えて、販売員が商品をネットの生中継で紹介する「ライブコマース」を取り入れるところも出ています。

このうち、大丸東京店は今月、東日本大震災の復興支援として売り出す福島県産の牛肉や水産物などを初めてライブコマースで紹介することにしています。

また、デパート大手三越伊勢丹ホールディングスの次期社長に就任する細谷敏幸氏も、先月26日の記者会見で、「すべてのお客さまとデジタルでつながらねばならずデジタル化のスピードを落とすことはない」と述べるなど、新型コロナウイルスの影響が長引くなか、デパート各社は、デジタル技術を活用したサービスの開発に力を入れています。

ただ、売り上げ全体に対してネット通販の占める割合はごくわずかで、この割合をいかに早く引き上げるかが課題となっています。