バイデン大統領 就任1か月 コロナ対策や外交政策で実行力強調

アメリカのバイデン大統領は、20日で就任から1か月を迎えます。優先課題と位置づける新型コロナウイルス対策や国際協調を重視した外交など、やつぎばやに政策を打ち出し、前のトランプ政権からの転換を図るとともに、実行力をアピールしています。

バイデン大統領は就任してから1か月、新型コロナウイルス対策や気候変動の問題、外交などの分野で、相次いで政策を発表し、アメリカ第一主義を掲げたトランプ前政権からの転換を打ち出しています。

19日には多国間外交の場に初めて出席し、オンライン形式で開かれたG7=主要7か国の首脳による会議と安全保障問題について話し合う「ミュンヘン安全保障会議」の特別会合で、国際協調を重視した外交を進める考えを改めて示しました。

そして、前政権下の4年間でぎくしゃくしたヨーロッパ諸国との関係の修復をはかるとともに、同盟国や友好国と連携して中国に対抗していく重要性を強調しました。

また、バイデン大統領は19日午後からは政権の最優先課題と位置づけるウイルス対策の一環として、中西部ミシガン州にある製薬大手、ファイザーのワクチン製造施設を視察し、政権発足後100日間で1億回分という目標を上回るペースでワクチン接種が進んでいるとアピールしました。

そのうえで、「この危機が一日でも早く終わるようできるかぎりのことをしている」と述べ、感染拡大防止に全力を尽くす考えを示しました。

スピード感を重視する姿勢のバイデン政権をめぐっては評価する声がある一方で、議会を通さずに大統領権限を多用することへの反発もあります。

また、トランプ前大統領を支持し続けている保守層も多く、就任式で訴えた国民の結束をはかり、野党・共和党の理解も得ながら、200兆円規模の経済対策などを実行に移せるのかに関心が集まっています。

大型の経済対策に注力

バイデン大統領が就任直後から注力しているのが、新型コロナウイルスの感染拡大の防止と、傷ついた経済の立て直しに向けた大型の経済対策です。

計画する対策の総額は200兆円規模で、ひとり当たり1400ドル、日本円で15万円近くの現金給付のほか、失業保険の積み増し措置や中小企業支援の延長などが含まれています。

アメリカ経済は、去年1年間のGDP=国内総生産の伸び率がマイナス3.5%と、74年ぶりの低い水準に落ち込みました。

ことしはプラス成長への回復が見込まれていますが、失業率が6%台で高止まりするなど、実体経済は楽観できる状況になくバイデン大統領としては、すみやかな対策で労働者保護の政権のスタンスを示したいねらいとみられます。

住宅価格の高騰で経済格差も

一方でアメリカでは、経済格差の問題を一段と深刻化させかねない事態も起きています。その1つが住宅価格の高騰です。

不動産関連企業、「レッドフィン」によりますと、ことし初めの時点でのアメリカの住宅価格の中央値は31万9000ドル、日本円で3300万円余りで、新型コロナウイルスの感染拡大前の1年前に比べて、13%上昇しています。

背景には、大規模な金融緩和でマネーがあふれ、不動産への投資が活発になっていることに加え、感染拡大に伴う在宅勤務の増加があります。

ロサンゼルス近郊で暮らす会社員のデレク・フレックさんは、これまでワンルームで婚約者のヘイリーさんと生活していましたが、去年、引っ越しました。

コロナ禍で2人とも在宅勤務になり、部屋が手狭になったためで、新居は、中心部から車で40分ほどの場所にあり、2つのベッドルームやゆったりとしたリビング、それにベランダのある物件を選びました。

フレックさんは「引っ越したことで別々の部屋で在宅勤務ができ、私が電話で話しても彼女の仕事を邪魔することはありません。仕事は快調です」と話しています。

新居の価格は日本円で8000万円余りだということですが、住宅ローンの金利が低いこともあって大きな負担は感じないといいます。

フレックさんは「金利がとても低いので家を買うなら今だと思ったんです。この家は3年ほどしたら売り払って、郊外の一軒家に引っ越すつもりです」と話していました。

一方、住宅価格が上昇する影で家賃を払いきれない人も増えていて、ロサンゼルスではホームレスの人たちが去年は6万6000人余りと5年間でほぼ1.5倍に増加。大きな社会問題になっています。

不動産市場に詳しいコンサルタントのリック・パラシオスさんは「コロナ禍や歴史的な低金利によって住宅市場は過熱している。ホワイトカラーの人たちは在宅で仕事を続けながら、株式市場からも利益を得ている」と指摘していて、住宅価格の高騰が続けば、格差の解消に取り組むバイデン政権にとっても大きな課題になる可能性がありそうです。