コロナ影響 倒産企業1000社超に 中小企業に必要な支援とは?

全国で合わせて1026社。
去年2月から15日までに新型コロナウイルスの影響で倒産した企業の数です。

業種別では、
▽「飲食店」が163社と最も多く、
次いで
▽「建設・工事業」が89社、
▽「ホテル・旅館」が79社などとなっています。
信用調査会社の帝国データバンクによりますと、これまではおおむねひと月で100社増えてきましたが最近はペースが加速しているということです。

厳しい状況に置かれている中小企業に今どのような支援が必要なのでしょうか。

膨らむ借金… 倒産最多の「飲食店」では

横浜市の飲食関連会社で専務を務める槇島千城さん。

会社は宴会などのオードブルを配送するサービスを手がけていますが、新型コロナウイルスの影響で毎月の売り上げが感染拡大前よりおよそ80%減ったといいます。

槇島さんたちは何とか活路を見いだすため、取り引きのある信用金庫に相談し新たなサービスを立ち上げるための費用などとして去年7月と先月の2回、合わせて数千万円の融資を受けました。

その結果、会社の借金は年間の最終利益の5倍に膨らんだということです。
そして新たに立ち上げたのが「オンライン飲み会」向けの冷蔵食品の宅配サービスです。

少しでも気持ちが華やぐよう、あぶりサーモンやローストビーフ、それにキャラメルプリンなど彩りが鮮やかな料理を用意しましたが売り上げは思うように伸びていません。

2回目の緊急事態宣言が出された先月、会社の売り上げはさらに落ち込み去年の同じ月の1割にとどまりました。

このままでは借金が将来の重荷になりかねない現状に、槇島さんは「いつまでこの状況が続くんだろうというのが正直なところです。融資イコール借金なので借りればよいというものではありません。ここまで影響が長引いてくるのは想定外です」と話していました。

どう支える? 信金は模索続ける

借金が膨らんだ中小企業を、どのように支えていくのか。地域密着型の信用金庫は模索を続けています。

東京 品川区に本店を置く「城南信用金庫」には去年、運転資金を融資した中小企業から再び資金の支援を求める声が多く寄せられるようになっています。
「人件費や家賃を払っていけるか心配だ」
「事業を継続するべきか、やめるべきか、自分でも分からない」

この信用金庫が先月、取引先企業に行ったアンケート調査では、先行きへの不安を訴える回答が相次いだということです。

この信用金庫では緊急事態宣言の延長で資金繰りに悩む企業がさらに増えるとみていますが、取引先の中には融資額が実質無利子・無担保融資の上限に迫っている企業も少なくないということです。

上限を超える融資は信用保証協会による保証を受けられない可能性があり、その場合、焦げ付きのリスクは信用金庫が負うことになります。

その場合、追加の融資を行うかどうか慎重な判断が必要となりますが、もともとの売り上げの規模や今後の成長性などを見極めたうえで可能なかぎり支援を続けたいとしています。
城南信用金庫・川本恭治 理事長
「大丈夫かなと迷うことも最近はあるが、地域の企業がだめになるとわれわれもだめになる。運命共同体だと思う。われわれが寄り添って企業の将来を一生懸命考えることが非常に大事だ」

融資だけに頼らない道も

城南信用金庫は取引先が融資だけに頼らず本業を立て直す道も探ろうとしていて、担当者が横浜市にある飲食関連企業の槇島さんのもとを訪ねました。

槇島さんたちが始めた「オンライン飲み会」向けの冷蔵食品の宅配サービスの状況を聞き取るためです。

緊急事態宣言の影響で売り上げが伸び悩む中、担当者は全国の信用金庫の7500社余りの取引先が登録しているウェブサイトでこのサービスをPRするなど、販路の開拓を可能なかぎり支援していくことを伝えました。

槇島さんは「今は耐えて未来に向かう種まきの時期なのかなと思います」と話していました。

専門家「地域の金融機関 真価が問われる」

第一生命経済研究所・永濱利廣 首席エコノミスト
「いくら資金繰りの問題が解消されたとしても、さきざきの経営を立て直せるという期待や希望がないと企業の経営は続けられない。前向きな業態転換やオンラインを活用した販路の開拓を促すなど、経営コンサルティングのような支援が金融機関には求められる」

「いかに資金繰り以外のところで支援の付加価値を高められるか。地域の金融機関は、その存在意義という意味でも真価が問われている」