“持続化給付金の不正受給かかわった” 全国で509人摘発

持続化給付金の不正受給にかかわったとして全国で509人が摘発されたことが分かりました。

被害の総額は立件された分だけでおよそ4億円に上ります。

持続化給付金は、新型コロナウイルスの影響で売り上げが大きく落ち込んだ事業者を対象に、中小企業などは最大200万円、個人事業主の場合は最大100万円が支給されます。

一方で、受給する資格が無くてもうその申請をするケースが相次いでいて警察庁によりますと不正にかかわったとして今月10日までに全国で509人が摘発されました。

被害の総額は立件された分だけでおよそ4億円に上ります。

先月には慶應義塾大学の学生が不正を指南したなどとして詐欺の疑いで逮捕されたほか、税理士や行政書士、それに税務署の職員などが専門知識を悪用して逮捕されるケースも相次いでいます。

こうした場合の多くはうその申告書を作成したり申請の代行を請け負ったりした見返りに報酬を得ていたとみられています。

警察庁によりますと「軽い気持ちで不正をしてしまった」などといった相談が全国の警察に寄せられていて、これまでに3300件に上っているということです。

警察当局は「学生や会社員などがSNSや知人を通じて安易に不正に加担するケースが多い。組織的な詐欺グループが関与している場合もあり今後も摘発に向けた捜査を進めていく」としています。

“不正に受け取った” 国への返還総額は106億円余に

「持続化給付金」は15日申請が締め切られ、これまでの支給総額はおよそ5兆5000億円です。

一方、不正に受け取ったとして国に返還された総額は106億円余りに上っています。

経済産業省は、みずから申告して返還すれば加算金などのペナルティーは科さないとして、不正に受け取った場合は自主的に返すよう呼びかけています。

“不正受給”の後 警察に自首した女性「本当に後悔」

不正に給付金を受け取った後、警察に自首し国に返還した20代の女性がNHKの取材に応じました。

女性は、東京都内に住んでいて去年5月、知人から「申請すれば簡単に100万円がもらえる。知り合いの税理士がうまくやってくれるから大丈夫だ」などと誘われたといいます。

無職で事業は行っていないため受給資格はありませんでしたが、銀行の通帳や健康保険証などを用意して書類を提出すればよいと説明されたといいます。

手続きは紹介された税理士が行い、電話やLINEでやり取りして指示を受けながら簡単にできたということです。

女性の口座にはおよそ1か月後に100万円が振り込まれ、手数料として30万円を支払ったということです。

女性は「こんなに簡単にもらえるなんてラッキーだなと思った。不正とは認識していたが友人の紹介なので自分も大丈夫だろうと考えていた」と振り返っていました。

一方で「簡単に審査が通ってしまって驚いた。友人からはチェックが甘いから大丈夫だよとも言われていた」と話しています。

しかし、給付金の不正受給で逮捕される事件が相次ぎ、さらに別の知人から説得されたこともあって警察に自首し、その後、不正に受け取った100万円を国に返還したということです。

女性は「周囲に指摘されて、ようやく罪の大きさがわかった。いま振り返れば、やらなければよかったと本当に後悔している」と話していました。

弁護士「決して隠し通すことはできない 自首を」

元検事で詐欺事件に詳しい上原幹男弁護士は「若い人が他人にそそのかされて安易に不正を行っているケースが多いが、持続化給付金の不正受給は詐欺罪にあたり、法定刑は10年以下の懲役と重大な犯罪だ」と話しています。

そのうえで「不正の認識があればまずは名乗り出て受け取った給付金を返し、警察に自首するべきだ。国などが調査すれば決して隠し通すことはできない」としています。