GDP 経済指標は立ち直りの動きも 去年1年間は11年ぶりマイナス

去年1月から12月までの1年間のGDPは、物価の変動を除いた実質の伸び率が前の年と比べてマイナス4.8%と、リーマンショックが起きた翌年にあたる2009年以来、11年ぶりのマイナスとなりました。

四半期ごとに振り返りますと、感染が広がりはじめた1月から3月までが、年率換算でマイナス2.2%。1度目の緊急事態宣言が出された4月から6月まではマイナス29.3%と、最大の落ち込み幅になりました。その後、7月から9月までは前の期の反動もあってプラス22.7%と大幅な伸びとなりました。

そして、15日に発表された10月から12月までは、「Go Toキャンペーン」による個人消費の押し上げや、企業の設備投資の動きが戻ってきたことなどから、プラス12.7%と、2期連続のプラスになりました。

去年1年間のGDPは11年ぶりのマイナス

しかし、1年間を通してみると、前の年と比べてマイナス4.8%と、11年ぶりのマイナスとなり、新型コロナウイルスによる日本経済への打撃の大きさを示す結果となりました。

年間のGDPは、物価の変動を除いた実質の伸び率では、リーマンショックの翌年に当たる2009年にマイナス5.7%と、比較が可能な1995年以降で最大の落ち込みとなりました。

世界各地では記録的落ち込みに

一方、新型コロナウイルスの感染が拡大した去年1年間のGDPは、世界の各地で歴史的な落ち込みとなりました。

▽アメリカは去年1年間の実質GDPの伸び率はマイナス3.5%と、第2次世界大戦直後の1946年以来、74年ぶりの水準の大幅な落ち込みとなりました。

▽ドイツやフランスなどユーロ圏の19か国ではマイナス6.8%と、統計をとりはじめた1996年以降で最大の落ち込みになりました。

▽中国はプラス2.3%とプラス成長を維持しましたが、伸び率はマイナスになった1976年以来の44年ぶりの低い水準にとどまりました。
GDPによって去年10月から12月の3か月に日本でどのくらいの規模の生産や消費活動が行われ、経済が全体として成長したのかどうかが明らかになります。今は感染の再拡大で経済活動にブレーキがかかっていますがさまざまな経済指標をみると景気は、厳しいながらもこの時期は立ち直りつつあったことが見えてきます。

個人消費

グラフは個人消費の動きをみる総務省の家計調査。2人以上の世帯が消費に使った金額の変化です。

去年10月に1年1か月ぶりに前年同月比でプラス1.9%に浮上。11月もプラス1.1%でした。

「Go Toトラベル」や「GoToイート」が消費を押し上げた形です。
黄色のグラフは、国内のホテルや旅館の宿泊者数。

11月までは回復の傾向にあったことがわかります。

企業活動

企業の生産活動を示す「鉱工業生産指数」も方向感は同じです。

去年5月に78.7まで低下した指数は、去年10月には95.2まで戻りました。経済産業省は「生産は持ち直している」と判断しています。

貿易

回復の傾向が鮮明なのが輸出です。おもに中国向けの輸出が伸びていることから、去年5月を底に持ち直し、去年10月から12月は、前年並みの水準になりました。
7月からは6か月連続で貿易収支は黒字が続いています。

こうした指標などをもとに去年10月から12月のGDPは集計されて発表されました。

“脱炭素”へ動く中小のメーカーも

世界的に加速するとみられる“脱炭素”の流れに乗って成長を遂げようと、新たな事業に乗り出そうとしている中小のメーカーもあります。

東京・品川区に本社を置く「大川精螺工業」は、自動車のブレーキ関連の部品を製造する中小企業で創業87年を迎えます。

去年の5月から7月にかけては、売り上げが前の年の同じ月の半分以下に落ち込みました。

その後、自動車市場の持ち直しで売り上げは回復しましたが、“脱炭素”の流れをにらんで、新年度から新たな事業に乗り出そうとしています。

2年半前から開発を進めていた電気自動車用の充電設備の販売を始めます。

この充電設備は、高さが1メートル65センチ、横幅が15.5センチで、景観に溶け込むように22種類のデザインを用意し、ホテルやゴルフ場など、さまざまな施設に売り込む計画です。

そして、最大の特徴は、インターネットとつながるようにしたことです。

独自に開発したスマートフォンのアプリで事前に予約をすれば、利用者は外出先で充電できる仕組みです。

今後、アプリの機能をさらに高めて、充電の予約だけでなく、目的地の施設の利用も予約できるようにしようと考えています。

この会社は、今月9日の会議で充電設備の売り込みやアプリの高度化に向けて、営業マンやエンジニアなど15人程度を採用する方針を決めました。

さらに、国内外の自動車メーカーと連携する協議も進めていて、年内に50の施設からの受注を目指すとしています。

大川直樹社長は「モビリティー=移動の手段は技術革新でインフラ面もユーザー体験も大きく変わっていくと思う。コロナ禍でも、世界的には大きな変化が起きていて、それに対して何かできることはないのかという視点を失ってはいけない」と話していました。

「レトルト加工代行」で飲食店支援始めた大阪の業者も

去年10月から12月のGDP=国内総生産の実質の伸び率は2期連続のプラスとなりましたが、あしもとは緊急事態宣言の影響を受けて、特に飲食業界では厳しい状況となっています。

こうした中、苦境に陥った飲食店を支援しようとレトルト加工を代行する事業を始めた会社が大阪にあります。

レトルト加工の業務を始めたのは食料品を専門に運ぶ運送会社「HORICOO」です。

この運送会社は、冷蔵や冷凍の機能がついた軽トラックで弁当や生鮮食料品の運送を手がけていましたが、コロナ禍で売り上げが減少。

新たなビジネスとして、飲食店が作った料理をそのままレトルト食品に加工するサービスを開始しました。

会社によりますと、レトルト加工は安全性の検査が必要で手間がかかり、多くの食品加工会社は、最低でも500パックなど大量の注文がなければ生産を受けないといいます。

この会社は、コロナ禍で小さな飲食店から少ない量でのニーズが増えると考え、35食からと少ない量での注文を受け付けることに商機があると判断しました。

加工に必要な機械や設備におよそ600万円を投じました。

加工だけでは利益は出ませんが、会社が運営する通販サイトでレトルト食品を販売し、その売り上げのおよそ20%を手数料とすることで、事業を回す計画です。

食品衛生法の許可や手続きもこの運送会社が代行するため、飲食店は、新たな投資をすることなく、いつもどおり店で料理を作るだけでネットによる販路が広がることになります。

サービス開始から2か月で、30以上の店舗から申し込みが来ているということです。

サービスを利用した大阪市内のイタリアンレストラン「カルコス」の井上政人オーナーは、「個人店では商品を衛生的に仕上げることが難しいのですごく助かる。今後、この店の売り上げの核になっていくと思うので、しっかりやっていきたい」と話していました。

西村経済再生相「回復まだ道半ば」

去年10月から12月までのGDPが2期連続のプラスとなったことについて西村経済再生担当大臣は、15日の会見で「個人消費がプラスとなり、設備投資も底入れの動きが出てきており、日本経済の潜在的な回復力を感じさせる内容だ」と評価しました。

その一方で西村大臣は「2020年を通してみるとマイナス4.8%と大きな落ち込みとなっており、回復はまだ道半ばだ。緊急事態宣言を発出し、飲食、宿泊、サービス業を中心に非常に厳しい状況にいる事業者もたくさんおり、しっかり支援していきたい」と述べました。

そのうえで「まずは感染拡大を抑えることを最優先に取り組み、その後は段階的に制限を緩和し、経済のレベルを引き上げていく」と述べました。