森会長 辞任表明 アスリート・競技団体などの受け止めは

女性蔑視と取れる発言の責任を取って、東京オリンピック・パラリンピック組織委員会の森会長が12日、会長を辞任する考えを明らかにしたことについて、アスリートや競技団体などの反応です。

アスリートは

森会長の辞任をめぐって、東京パラリンピックの代表に内定している陸上女子走り幅跳びの中西麻耶選手(35)が12日、オンラインで取材に応じ「日本社会は、女性も障害者も社会に出て行きづらい状況にある。あってはならない発言だったとは思うが、森会長が辞任すれば済む問題ではなく、もっともっと深い問題だ」と指摘しました。

そして「さまざまな区別がこの国に根づいていることは事実で、東京オリンピック・パラリンピックは、『日本はそうじゃない』と否定して見せる場ではなく、現状を変えるための、いいきっかけなのではないかと思う。本当に変わらなければならないと改めて感じたし、女性や障害者の中にこの国を引っ張っていける人材が十分に育っているかと言えば、残念ながらそうなっていない。当事者がやるべきこと、それに関わる人が受け入れるべきことも明るみに出たと思うので、今回の件が国民一人一人が尊重され、社会の中で調和をとれる国になるため、海外からの厳しい意見も聞きながら、よりよい日本になっていくきっかけになればいいと思う」と話しました。

そのうえで東京大会に向けて「多様性を体現できるのは選手なので、障害があろうと、女性だろうと、いろんな困難に打ち勝って頂点を目指す姿を見せて、困難を乗り越える活力にしてほしい。日本選手の活躍を見て喜んでもらい、やってよかったなと思ってもらえる瞬間を1秒だけでいいから皆さんと過ごしたいので、東京パラリンピックで大活躍したい」と話しました。
また、森会長の一連の発言について、リオデジャネイロオリンピックでレスリング女子の吉田沙保里さんの連勝記録を止め、金メダルを獲得したアメリカのヘレンルイーズ・マルーリス選手(29)は11日、取材に応じ「男性と女性については文化によって違う捉え方をすることもあるかもしれないが、私は男女が平等であると信じている。平等というのは同じということではなく、それぞれが違う役割を持って違う価値を持っているということだ。価値の違いを認め合うことが大事だと思う」と話していました。

そのうえで「オリンピックにおける男女平等という理念は非常に大事なことだ。スポーツは男女関係なく人の成長にいい影響を与えるし自分の心を育てるものだ。私はレスリングを始めて20年になるが、子どものころオリンピックに憧れたのは、そうした価値を体現する選手になりたかったからだし、体現する選手を尊敬していたからだ」と話しました。

そして、吉田選手やオリンピック4連覇の伊調馨選手の名前を挙げ「彼女たちのように何度もオリンピックに出たいと思って東京オリンピックを目指してきた。レスリングを大切にしている日本という国で戦えることを楽しみにしている」と改めて2回目となるオリンピックへの意気込みを示しました。

聖火ランナーは

聖火ランナーを務めるハンセン病の元患者の男性は「森会長が辞めることは当然だが、辞めていく人が後任を打診したことは間違っていると思う。今回の問題をきっかけに改めて差別とは何なのかを考えてほしい」などと述べました。

ハンセン病の元患者の平沢保治さん(93)は、13歳の時に発症し、東京・東村山市のハンセン病の療養施設で80年近く暮らしています。

前回の東京オリンピックでは、当時の法律でハンセン病の患者は競技会場に入ることが許されず、こうした経験から今回の大会では“差別のない社会の実現”を訴えるため、みずからが走る姿を多くの人に見てもらいたいと、聖火リレーのランナーとして走ることを決めました。

こうした中、森会長の女性蔑視と取れる発言について、平沢さんは、「怒りを通り越して大変悲しく、聖火ランナーを辞退することも考えた。しかし、ハンセン病の回復者として差別をなくすために走りたいという強い思いもあり、どうするか悩んでいます」などと揺れ動く思いを明かしました。

さらに、森会長が辞任の考えを表明したことについて尋ねると語気を強めて「辞めることは当然だが、辞めていく人が後任を打診したことは間違っていると思う。みんなが希望を持てるような民主的な形で後任を選んでもらいたい」と話していました。

そのうえで「オリンピックは、融和と団結、平等で誰もが拍手を送れるスポーツの祭典でなくてはならないと思う。今回の問題をきっかけに一度立ち止まって多くの人に差別とは何なのかを考えてほしいです」と話していました。

競技団体などは

IPC=国際パラリンピック委員会のパーソンズ会長は声明を発表し「森会長の7年間にわたる組織委員会への貢献とリーダーシップに感謝する。森会長の後任とともに、長年にわたるすばらしい協力関係が続くことを楽しみにしている」としました。

そのうえで「悪い状況からよいものが生まれなければならないと信じている。この7日間の国内外の反応を生かし、社会が、性別だけでなく、人種、性的指向、障害者など、個々の違いを受け入れることをより重視するようになるよう願っている」としています。
JPC=日本パラリンピック委員会の鳥原光憲会長は「森会長は招致段階からオリンピック・パラリンピックを一体のものと位置づけ、大会の成功に向けて大きな役割を果たしてきたので今回の事態は誠に残念だ」とコメントしています。

そのうえで「東京大会のビジョンの1つは『多様性と調和』であり、障害の有無や性別、国籍の違いなど多様性を尊重し、誰もが個性を発揮して活躍できる共生社会の実現を目指している。組織委員会が速やかに新たな体制を固め、万全に大会の準備が進むよう願う」としています。
森会長の辞任をめぐり、日本パラ陸上競技連盟の増田明美会長は「私も何度か森さんとお会いしたことがあります。ピョンチャンパラリンピックの壮行会では選手一人一人に話しかけ、競技の成績や競技内容まで詳しくて驚きました。オリ、パラ分け隔てなく応援して下さった。今回の発言は許されないが、世界とのパイプ役や各界との調整などの功績は大きかった。それに応えるべく、パラ陸連としても東京パラリンピック成功へ向けてがんばっていきたい」とコメントしました。
また、東京オリンピック・パラリンピックの招致活動にも携わった日本フェンシング協会の太田雄貴会長がコメントを発表しました。

この中で「昨今の報道をきっかけに、日本のスポーツ界がまだまだ発展途上であり、改革のスピードを上げる必要性を感じています。改めて『社会の中のスポーツ』であることを強く認識致しました」とコメントしました。

そのうえで「新型コロナウイルスの流行も収束の兆しが見えない現状下、東京2020大会の開催についてもさまざまなご意見があることは承知しており、当然のことでもあると考えます。ただ、今の自分、今の日本のスポーツ界にできることは、そのような環境下でスポーツに出来ること、スポーツの価値を真摯(しんし)に議論しそれを目に見える形で実行していくことです。これからもっと多様性が活かされる社会を創出すべく、日本フェンシング協会会長として、また日本のスポーツ界を担う1人として、引き続き行動してまいります」としています。

また、日本フェンシング協会の取り組みとして「スポーツ団体ガバナンスコードに定められた女性理事40%以上、外部理事25%以上、在任期間制限、原則10年等の達成を目指すことはもちろん、何より多様な人材による活発な議論を通じてフェンシングの価値、スポーツの価値を高めるべく、日々、努力しています」と説明しています。

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日本郵政

日本郵政は「オリンピック・パラリンピックの精神に反する発言をされたことからやむを得ないと考える。後任の方には、多様性と調和を掲げるオリンピック・パラリンピックの精神にのっとった大会になるようご尽力いただくことを期待します」とコメントしています。

NTT

NTTは「森会長は、大会の成功のためにみずから身を引くと判断されたものと受け止めています。大会成功に向けて尽力されてきたことに敬意を表します。新会長のリーダーシップにより、国内外の信頼を獲得し、大会を成功に導いていただくことを期待しています」というコメントを出しました。

日本生命

日本生命は「大会成功に向けてのご判断だと受け止めています。今、重要なことは、アスリートが持てる力を最大限発揮できる大会になるよう、また、多くの人々に歓迎される大会になるよう、尽力することであると考えています」とコメントしています。

ブリヂストン

ブリヂストンは「組織委員会として適切に判断された人事と理解している」とコメントしています。

そのうえで森会長の後任については「大会運営をスムーズに行うために、速やかに後任を決めてほしい。新しい会長がこれまで以上にオリンピック・パラリンピックの精神に基づくリーダーシップを発揮することを期待している」としています。

三菱電機

三菱電機は「辞任はやむをえないものと考える。後任の会長には都民や国民をはじめとする皆様から理解され、協力いただけるような大会を目指してもらいたい」とコメントしています。

IT大手「楽天」三木谷浩史社長「開催するかどうか含め議論を」

東京オリンピック・パラリンピック組織委員会の森会長が辞任を表明したことについて、IT大手の「楽天」の三木谷浩史社長は、12日の決算会見の中で「発言は不適切で、極めて不適切と言わざるをえない」と述べました。

そのうえで「新型コロナウイルスの変異株が出ている現状を考えると、オリンピックをことし開催すべきかを議論すべきだと思っている」と述べ、予定どおりに開催するかどうかを含めて議論を深めるべきだという認識を示しました。

性的マイノリティーへの差別解消に取り組む団体は

森会長の発言や後任をめぐる一連の対応を受け、東京大会を性的マイノリティーへの理解を広げる機会にしようと活動してきた団体は「失敗を失敗で終わらせず、差別の解消と多様性の尊重という理念の実現に取り組むべきだ」と話しています。

東京大会にあわせて、去年10月に東京・新宿区に開設された施設「プライドハウス東京レガシー」は、性的マイノリティーへの差別解消に取り組む団体や企業が多様性への理解を進めようと交流や情報発信をしています。

こうした施設は、2010年のバンクーバー大会から現地に設けられましたが、東京大会では初めてオリンピック・パラリンピックの公式プログラムになっています。

それだけに、施設を運営する団体のメンバーで自身もトランスジェンダーの杉山文野さんは今回の発言や対応について「多様性への理解が広がることを期待し喜んでいたので、今回のことはとても残念です。東京大会は多様性と調和を掲げているが、それがパフォーマンスなのか本気なのかいま世界から厳しい目が注がれている」と話しています。

また、7年前のソチ大会の際に、同性愛者に対する差別などロシアの人権問題に対する批判が欧米諸国で広がり、その後、オリンピック憲章に性別による差別に加え、性的指向による差別の禁止が盛り込まれたことを挙げたうえで「今回の問題の本質を理解し、失敗を失敗で終わらせず、しっかり議論を進めていきたい。批判に批判を重ねるだけでは変わらない。大会までの時間がない中で、提案を出していくことが大事だ」としています。

そして「一人一人の小さな声が、拾われなかったり注目されてこなかったりしたからこそ起きた問題で、そういう意味では必然的だったと思う。今回の発言や対応は決していいこととは言えないが逆にこれを機会に議論を深めることによって、多様性のある社会はいい社会だと思えるよう変えてくことが大事だと思う」と話しています。

JOC 山下泰裕会長「辞任は極めて残念」

会合に出席したJOC=日本オリンピック委員会の山下泰裕会長は、森会長の辞任表明について「ラグビーのワールドカップや、この東京大会は森会長の力がなければ達成していけなかった。今回の辞任は極めて残念だ。しかし、発言そのものは非常に不適切だったと思うし、特に海外からの反響はすごいものがあった。辞任は致し方ない」と話しました。

また、正式な手続きを踏む前に会長の後任候補として川淵三郎氏の名前が挙がったことについては「国内外に正規の手続きではないところで次の会長が決まっていくようなイメージを与えたことは、決していいことではない。きちんと手続きにのっとって次の会長を決めようというのはきょうの会合でも全員一致した」と話しました。

そのうえで「後任の会長は、残り5か月のなか大変な役割を担うことになると思う。誰に決まってもまずはJOC、そして日本のスポーツ界で全面的に支えながら、大会を安心安全に開催できるよう努力したい」と後任の会長を支える意思を示しました。

さらに、JOCの会長として「こういう状況下で、アスリートたちは不安を抱えながらやっている。できるだけ早くアスリートたちが自分のやるべきことができる環境をつくれるように力を尽くしていく必要がある」と選手のサポートに全力をあげる考えを示しました。

日本陸連コメント

組織委員会の理事を務める日本陸上競技連盟の横川浩会長は12日の会合のあと東京オリンピックの日本選手団の総監督を務める尾縣貢専務理事と連名でコメントを発表しました。

この中で「森喜朗会長が東京オリンピック・パラリンピック競技大会に向けて歩みを進めるためになされた決断を尊重する。森会長の大会に対する長年のご尽力、ご功績に感謝したい。東京大会がオリンピック憲章にうたわれている理念を追求し、国民および世界から理解される大会となることを願う」としています。