ワクチンの冷蔵輸送にバイク利用不可 振動で品質低下のおそれ

新型コロナウイルスのワクチンについて厚生労働省は、冷凍せずに輸送した場合、振動で品質や有効性が低下するおそれがあるとして、バイク便などで輸送しないよう自治体に通知しました。

アメリカの製薬大手ファイザーのワクチンについて、厚生労働省は専用の冷凍庫を使ってマイナス75度前後で保管し、必要に応じて接種を行う診療所などに冷蔵した状態で輸送するよう自治体などに求めています。

一部の自治体は、バイク便などで輸送することを計画している一方「命にも関わるワクチンなので輸送方法を具体的に示してほしい」などといった不安の声も聞かれ、厚生労働省がファイザーと対応を検討していました。

その結果、厚生労働省は、解凍したワクチンに振動を与えると品質や有効性が低下するおそれがあるとして、10日に輸送に関する新たな指針をまとめました。

指針では、
▽ワクチンが入った容器を、国が用意した保冷バッグに入れて固定し、
▽バイクや自転車の利用を避けて、安定した状態で運搬するよう求めています。

また、
▽市町村などの責任で運送業者に委託することも認め、
▽輸送にかける時間は、原則3時間以内、離島に運ぶ場合などでも12時間以内としています。

厚生労働省は10日に新しい指針を自治体に通知し、必要な体制の整備を進める方針です。

“分解され効果なくなるおそれも”

ワクチンの品質管理に詳しい亀田総合病院の舟越亮寛薬剤管理部長は「ワクチンの中の『mRNA』と呼ばれる遺伝情報の伝達物質は不安定で、揺らすと化学反応が起きて分解されやすくなってしまう。新しい医薬品なのでどれほどの振動を与えると分解が促進されるのかは分かっていないが、完全に分解されるとワクチンの効果がなくなるおそれすらある」と指摘しています。

そのうえで、輸送の方法について「まだ詳しいデータが公開されていないので国が指針で示したとおり『慎重に取り扱うように』としか言えない。過度な振動を与えるのを極力避けるしかないのではないか」としています。