米ファイザーのコロナワクチン 5回分しか接種できない理由とは

アメリカの製薬大手、ファイザーが開発した新型コロナウイルスのワクチンについて、1つの容器から6回の接種ができると想定されていましたが、厚生労働省は9日、国内で用意されている注射器では5回しかできないことを明らかにしました。これについてワクチンの接種の準備を進めている大学病院で理由を聞きました。

東京 港区にある東京慈恵会医科大学附属病院で、医療従事者へのワクチン接種のリーダーを務める石川智久教授によりますと、今、使われている注射器では、ファイザーのワクチンで、1つの容器から6回分の接種を行うことは難しいと感じていたということです。
このワクチンは、1回の接種ごとにバイアルと呼ばれる容器から、注射器で1回分の量を吸い出して接種することになっています。
1つのバイアルには1回、0.3ミリリットルのワクチンが6回分入っています。
しかし、注射器でワクチンを吸い出していくと、6回目にはバイアルの中に1回の接種に必要な0.3ミリリットルが残っていないということです。

これは、国内で一般的に使われている注射器では、針の付け根の部分に少量のワクチンがたまる構造になっていて、0.3ミリリットルのワクチンをとる際には、実際にはそれよりも多く吸い出してしまっているからだということです。
注射器の中に残ったワクチンは、押し込んでも出てこないため、このまま捨てるしかないということです。

海外では欧米を中心に、針の付け根の部分にワクチンが残らないように、押し込む部分の先端に突起がついた特殊な形の注射器が流通しているということですが、海外でも不足しているということです。
石川教授は「院内で準備を進める中で、試しに作業してみたところ、1つの容器に入っている量を6人分に分けるのは難しそうだという話が現場では出ていた。世界中で初めてのことなので、そのつど対応しながら準備を進めて、医療を守りたい」と話していました。

国内のシリンジ確保は

新型コロナウイルスのワクチンの接種に備え、厚生労働省は去年の夏からシリンジ(注射筒)の確保を進めてきました。

厚生労働省によりますと、これまでに国内の9社との間で、合わせて2億本を超えるシリンジを購入する契約を結んでいるということです。

一方で契約しているのは、国内の医療現場で一般的に使用されているシリンジが中心で、6回分を採取できる特殊なシリンジはほとんど含まれていないということです。

厚生労働省は、メーカーに特殊なシリンジを生産できないか問い合わせていますが、必要な数を確保できるめどは立っていないとしています。

ファイザーからは、当初、必要なシリンジの種類について説明がありませんでしたが、去年12月に「1つの容器で6回の接種を検討している」と連絡があり、先月になって正式に方針を伝えられたということです。

厚生労働省は、ファイザーから年内に1億4400万回分の供給を受ける契約を結んでいて、必要な量のワクチンを供給するようファイザーと交渉を進めています。

厚生労働省は「現時点では供給への影響についてコメントできない」としています。