「緊急事態宣言」からまもなく1か月 首都圏の1都3県では

首都圏の1都3県に緊急事態宣言が出されてから4週間がたちました。
宣言が出されてから、まもなく1か月を前に、人出や感染の広がり具合など、どのような変化があったのでしょうか。

売り上げ84%減の飲食店 千葉

緊急事態宣言による営業時間の短縮に応じてきた千葉県内の飲食店の中には、売り上げが去年と比べて80%以上減少した店もあり、協力金だけでは損失を埋められないとして、店の規模に応じたさらなる支援を求める声が上がっています。
千葉市中央区の飲食店「旨いもん食堂かどや」は、緊急事態宣言に伴って先月から午後8時までの営業時間短縮の要請に応じてきました。

その結果、全体のおよそ7割を占めていた夜の営業の売り上げがほとんど無くなったうえ、外出自粛の影響でランチ営業も半分以下に減少し、1月の売り上げは去年の同じ月と比べて84%もの大幅な減少となったということです。

この店は70席の客席があり規模が比較的大きいことからテナント料や光熱費の負担が重く、1日あたり一律6万円の協力金が支給されても、損失を埋められないとしています。
千葉県は、3月7日まで延長された緊急事態宣言の期間中、協力金はこれまでと同じ1日当たり6万円としていて、店を経営する澤永真佐樹さん(46)は「このままでは経営があと1年しか持たない。県の時短要請にはこれからも応じていくが、店舗の売り上げや立地条件に応じた補償をしてほしい」と述べ、店の規模に応じたさらなる支援を求めていました。

弁当で医療従事者と飲食店を支援 東京 品川区

新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受ける医療従事者と飲食店の双方を支援しようと、東京 品川区では、区の助成金を使って飲食店が作った弁当を無料で病院に届ける取り組みが行われています。
品川区では、区内の商店街連合会の呼びかけで集まったおよそ40の飲食店が、先月18日から、それぞれの店で弁当を作って、区内の病院に無料で届ける取り組みを行っています。

この弁当代や配達の費用などには区から950万円余りが支出されていて、区の助成で、飲食店の売り上げも確保され、医療従事者への支援にもつながるという仕組みです。
弁当を作っている飲食店は、営業時間の短縮要請に応じながら、平日は300食、土曜日は120食を届けていて、弁当には「ご苦労様です」とか、「いのちを守ってくれてありがとうございます」などのメッセージも添えられ、ともに苦境を乗り超えようという思いが込められています。
取り組みに参加しているトルコ料理店では、日々奮闘している医療従事者への支援の気持ちから、弁当代への助成費用を超える1300円ほどの弁当を提供しています。
トルコ料理店のマネージャーを務めるヤーヌクひとみさんは、「売り上げは半分以下になっていると思います。自分たちが作った弁当を喜んで食べていただき、1日の流れのちょっとだけ心が休める時間であってほしいと思います。力が出るような料理にしたので体に気をつけて頑張ってほしいです」と話していました。
弁当が届けられる「東京品川病院」には、去年の1月から新型コロナウイルスの患者を受け入れていて、現在、50人近くの新型コロナの入院患者がいます。
病院事務長の國仲良和さんは、「外食に行ったような気分になり、非常においしく食べさせていただきました。手書きのメッセージをもらい、感動して非常に心強く感じます。たくさんの温かい気持ちも一緒にいただいてます。病院で患者さんをみていることに対して、地域の方が応援してくれるので心に響く感じです。緊急事態宣言が延びても延びなくても、一生懸命治療させていただきます」と話していました。

この取り組みは、今月6日で終わる予定でしたが、緊急事態宣言の延長に伴って、今月27日まで継続されることになりました。

トルコ料理店のヤーヌクひとみさんは「時短営業がまた続きますが、前回、解除したあとに感染者や重症者が増えたことを考えると、今は1つになって、春を待ちたいという思いです。この店が10年、20年と維持できるように頑張っていきたい」と話していました。

人出の変化は?

NHKは、IT関連企業の「Agoop」が利用者の許可を得て個人が特定されない形で集めた携帯電話の位置情報のデータを使って、緊急事態宣言が出ている首都圏の1都3県の主な地点の人の数を分析しました。

分析した時間は
▼日中が午前6時から午後6時まで
▼夜間が午後6時から翌日の午前0時までです。

その結果、主な地点の4日の人出は日中も夜間も、前の4週間の平日の平均と比べて増えたところが多くなっています。

日中の人出の比較

まず、日中です。
▼千葉駅付近で23%増加したのをはじめ、
▼渋谷スクランブル交差点付近と大宮駅付近で15%、
 それぞれ増加しました。
▼東京駅付近は0%でほぼ同じでした。

一方、横浜駅付近で1%減少しました。

【1回目の緊急事態宣言との比較】
▼大宮駅付近は101%でおよそ2倍となっています。
また
▼渋谷スクランブル交差点付近と横浜駅付近は75%、
▼千葉駅付近は71%、
▼東京駅付近は61%増加し、
 すべての地点で人出は増加しています。

夜間の人出の比較

続いて夜間の人出です。
▼渋谷スクランブル交差点付近で31%増加したのをはじめ、
▼千葉駅付近で22%、
▼大宮駅付近で20%、
▼横浜駅付近で12%、
▼東京駅付近で4%それぞれ増加しました。

【1回目の緊急事態宣言との比較】
▼渋谷スクランブル交差点付近が145%でおよそ2.5倍、
▼大宮駅付近は100%でおよそ2倍でした。
また、
▼横浜駅付近で96%、
▼東京駅付近で76%、
▼千葉駅付近で74%増加し、夜間もすべての地点で人出が増えています。

1人の感染者から何人に感染が広がっているか

感染状況を示す指標の1つで、1人の感染者から何人に感染が広がるかを示す「実効再生産数」をNHKが簡易な手法で計算したところ、緊急事態宣言が出されている11都府県では、一部で感染が減るスピードが鈍る傾向も見られましたが、おおむね収束の方向に向かっています。

専門家は「減少の傾向は鈍っているが、対策の効果が一定程度出ていると考えられ、今後もこの状態をずっと維持できるかがポイントになってくる」と指摘しています。
NHKは、緊急事態宣言が出ている11都府県について、4日までのデータに基づいて、疫学の専門家の監修を受けた簡易な手法で実効再生産数を計算しました。

実効再生産数は、1人の感染者から何人に感染が広がるかを示し、「1」を上回ると感染が拡大に向かう一方、「1」を下回ると収束に向かうとされています。

より正確に出すには発症日を推定して計算するなど、さらに多くの条件を考慮する必要がありますが、時間がかかるため、あくまで目安の数値として確認された日ごとの感染者の数をもとに簡易な手法で計算しています。

※今後、公的な機関などが発表する実効再生産数のデータと結果的に異なる場合があります。

東京都

東京都の実効再生産数は、
▽緊急事態宣言が出された先月7日時点で1.27、
▽先月14日時点で1.21と「1」を超えていましたが、
▽先月21日時点では0.96と「1」を下回り、
▽先月28日時点で0.74、
▽4日時点でも0.75でした。

神奈川県

神奈川県では
▽先月7日時点で1.11、
▽先月14日時点で1.45と緊急事態宣言が出された後も上がりましたが、
▽先月21日時点では0.97、
▽先月28時点では0.68、
▽4日の時点では0.71と「1」を下回っています。

埼玉県

埼玉県では
▽先月7日時点で1.10、
▽先月14日時点で1.25、
▽先月21日時点では1.05、
▽先月28時点で0.73、
▽4日の時点で0.89と減少のスピードが鈍る傾向も見られますが、
「1」を下回っています。

千葉県

千葉県では
▽先月7日時点で1.22、
▽先月14日時点で1.42、
▽先月21日時点で1.04と「1」を超えていましたが、
▽先月28日時点では0.82、
▽4日の時点で0.78と「1」を下回っています。

また、1都3県全体では
▽先月7日時点で1.20、
▽先月14日時点で1.29、
▽先月21日時点で0.98、
▽先月28日時点で0.73、
▽4日の時点では0.77と「1」を下回っています。

全国

また全国では
▽先月7日時点で1.17、
▽先月14日時点で1.27と「1」を上回っていましたが、
▽先月21日時点では0.96、
▽先月28日時点で0.77、
▽4日の時点でも0.75と「1」を下回っています。

専門家「改めて一人一人が油断せずに対策継続を」

日本感染症学会の理事長で東邦大学の舘田一博教授は「今後もこのままの状態を維持できれば、ゆるやかだが確実に収束に向かっていくと考えられる。一方で、実効再生産数が0.7から0.8の状態を最低限維持していかないと、来月7日に延長された緊急事態宣言の解除が難しくなるので、改めて、感染が広がりやすい飲食の場への参加を控え、テレワークを積極的に進めて不要不急の外出を控えるなど、一人一人が油断せずに対策を継続する必要がある」と指摘しています。