休業支援金“大企業で働く非正規労働者も対象に” 田村厚労相

中小企業で働く人に支給される休業支援金について、田村厚生労働大臣は、大企業で働く非正規労働者の人たちにも、支給の対象を拡大することを明らかにしました。

新型コロナウイルスの影響が長期化する中、政府は、企業の指示で休業したにもかかわらず休業手当が支払われない人に対し、休業支援金として賃金の8割を支給していますが、対象は、中小企業で働く人に限られるため、大企業で働く非正規労働者にも支給を求める声が出ています。

田村厚生労働大臣は、閣議のあと記者団に対し、休業支援金の対象を、大企業で働き、休業手当を受け取れなかった「シフト制」や「日雇い」などの非正規労働者にも拡大することを明らかにしました。

そのうえで「大企業が対象になっておらず、与野党から要望をいただいていた。シフト制などで休業手当が受け取りづらい勤務形態の人たちも、支援の対象としたい」と述べました。

厚生労働省は、新たに支援の対象となるのは、緊急事態宣言の影響を踏まえ、先月8日以降に休業した人に限るとしていて、申請の受け付けは、今月中旬から下旬を予定しています。

「ほっとしたが、本当の解決とは言えない」

休業支援金の対象がシフト制で働く大企業の非正規労働者などにも広がったことについて、働く人からは生活の安心につながるなどという声が聞かれました。

その一方で企業が休業手当をきちんと支払うよう対策の強化などを求める意見も出ています。

神奈川県内で2人の子どもと暮らしている30代の女性は、2年前から大手飲食チェーンの店舗のアルバイトとして週4日から6日、1日5時間ほど働いてきました。

しかし、去年4月の緊急事態宣言の影響でシフトが全くなくなり、6月以降は、通常どおりに戻りました。

その後、先月、別の店舗に異動し働いていますが、緊急事態宣言を受けてシフトは週1日だけで勤務時間も大幅に減っているということです。

女性によりますと会社側は「正社員は生活の基盤が会社にあるので休業手当を支払うが、パートやアルバイトに支払う義務は無い」などと説明しているということです。

女性の夫は単身赴任をしていて、アルバイトによる月10万円ほどの収入のすべてを子ども2人との生活費にあてていましたが、収入は大幅に減っているため、今は貯金を取り崩して生活しているといいます。

女性が働いている飲食チェーンは「大企業」にあたるため、これまでは国の「休業支援金」の対象外とされてきましたが、5日、申請の対象に追加されることが決まりました。

これについて、女性は「ようやく認められ、正直、ほっとしました。経済的に苦しい中でどうにかやりくりしてきたので、本当にありがたいと思います」と話していました。

ただ、申請の対象となるのは先月8日以降に勤め先から休業手当が支払われなかった期間に限られます。

このため女性は「本当に苦しかったのは去年の4月と5月の休業期間だったので、その分が認められないというのは残念でなりません。会社側がシフト制で働く人には休業手当を支払わないという姿勢も変わっていないので、本当の解決とは言えないと思います」と話していました。

組合「対象期間の拡大を」

休業支援金の対象が、シフト制で働く大企業の非正規労働者などにも広がったことについて、非正規雇用で働く人たちなどでつくる「首都圏青年ユニオン」の原田仁希執行委員長は、5日、東京都内で開いた会見の中で「対象となったことは喜ばしいことではあるが、今回の緊急事態宣言が出された後だけが対象というのは不十分だと思う」と指摘しました。

そのうえで「休業手当が支払われないという問題は、去年4月から続いていて、困窮状態に陥っている人が多くいる。国は労働者の勤め先が中小企業か大企業かで差をつけることなく、さかのぼって支援の対象にするべきだ」と訴えました。

また、企業がシフト制の労働者に休業手当を支払わないという問題は、根本的には解決していないとして「休業手当の支払い義務があいまいなままではいけない。国はシフト制の労働者に対しても、企業に支払い義務があるという見解をはっきりと示し、強く働きかけてほしい」と話していました。