【詳細】コロナ対策の改正特別措置法など成立 その内容とは?

新型コロナウイルス対策の特別措置法などの改正案は参議院本会議で採決が行われ、自民・公明両党や立憲民主党、日本維新の会などの賛成多数で可決され、成立しました。改正法は3日に公布され、今月13日に施行されます。
今回の法改正で具体的にどうなるのか、主な内容を法律ごとに見ていきます。

1. 改正特別措置法

改正された新型コロナウイルス対策の特別措置法の主な内容です。

対策の実効性を高めるため、緊急事態宣言のもとで都道府県知事は施設の使用制限を「要請」できることに加え、正当な理由なく応じない事業者などには「命令」ができるようになります。
また、緊急事態宣言が出される前でも集中的に対策を講じられるよう「まん延防止等重点措置」が新たに設けられます。

そのうえで、政府が対象地域とした都道府県の知事は事業者に対し営業時間の変更などを「要請」し、応じない場合は「命令」ができるようになります。

さらに、緊急事態宣言や「重点措置」のもとでの「要請」や「命令」を行うために、必要な範囲で立ち入り検査なども可能となります。
そして「命令」に応じない事業者には行政罰としての過料が設けられています。

▽緊急事態宣言が出されている場合は30万円以下、
▽出されていない「重点措置」の場合は20万円以下、
▽立ち入り検査を拒否した場合は20万円以下の過料をそれぞれ科すとしています。
過料の額をめぐっては政府は当初、
▽緊急事態宣言が出されている場合は50万円以下、
▽出されていない「重点措置」の場合は30万円以下、
とする案を国会に提出しましたが与野党で協議した結果、減額されました。

このほか改正法では、国や自治体は感染防止の措置によって影響を受けた事業者に対する支援に必要な財政上の措置を講じると明記しています。

また、
▽これまでは緊急事態宣言が出されている時に開設できるとしていた「臨時の医療施設」について、政府の対策本部が設置された段階から開設できるとしているほか、
▽患者や医療従事者などが差別的な扱いを受けることがないよう、国や自治体が実態の把握や相談支援、啓発活動などを行うことも盛り込んでいます。

2. 改正感染症法

改正感染症法では、知事などが感染者に自宅療養や宿泊療養を要請できる規定が新たに設けられました。

そのうえで、感染者が宿泊療養などの要請に応じない場合は入院を勧告し、それでも応じない場合や入院先から逃げた場合には行政罰として「50万円以下の過料」を科すとしています。

また、保健所の調査に対して正当な理由なく虚偽の申告をしたり、調査を拒否したりした場合も行政罰として「30万円以下の過料」を科すとしています。
これらの罰則をめぐって政府は当初、懲役や罰金の刑事罰を科す案を国会に提出しましたが、与野党で協議した結果、前科の付かない行政罰に修正され過料の額も引き下げられることになりました。

このほか、改正法では厚生労働大臣や知事が医療機関に必要な協力を求めることができるとし、正当な理由なく応じなかった場合には勧告したうえで従わなかった場合は医療機関名を公表できる規定も盛り込まれました。

さらに、国や自治体との間で感染者に関する情報共有を図るため、保健所を置く自治体から都道府県知事に発生届を報告することや、保健所の調査結果を関係自治体に通報することを義務づけています。

3. 改正検疫法

新型コロナウイルスの水際対策として政府は、海外からの入国者に対し空港での検査結果が陰性でも原則14日間は自宅などでの待機を求めています。

しかし法的な根拠がなく求めに応じてもらえないケースもあることから、改正法では対策の実効性を高めるため検疫所長が感染者に対し自宅待機など必要な協力を要請できる規定を設けました。

また、感染者が自宅待機などの要請に応じない場合、施設に「停留」させる措置などをとることができ、これに従わない場合には刑事罰として「1年以下の懲役または100万円以下の罰金」を科すという規定が設けられています。

付帯決議の概要は

改正された新型コロナウイルス対策の特別措置法などには、与野党の協議の結果、政府に対し「まん延防止等重点措置」の運用や事業者への財政支援の在り方の明確化などを求める付帯決議が、衆参両院の内閣委員会でそれぞれ可決されました。

このうち衆議院内閣委員会では、
▽「まん延防止等重点措置」について、あらかじめ客観的な基準を要件として示し、学識経験者の意見を聞いたうえで実施し国会に速やかに報告するとしています。

さらに「営業時間の変更と、みだりに出入りしないこと」を要請し、
▽休業要請やイベントによる施設の使用停止、
▽緊急事態宣言時のような全面的な外出自粛要請は含めないとしています。

また、
▽罰則や過料について「国民の自由と権利が不当に侵害されることのないよう慎重に運用し、不服申し立てなどの権利を保障する」としているほか、
▽事業者への財政支援について「要請による経営への影響の度合い等を勘案し、必要な支援となるよう努める」などとしています。

一方、参議院内閣委員会では、こうした内容に加え濃厚接触者について「調査を効果的に実施し必要な検査を幅広く実施するとともに、自宅待機などに対するフォロー体制に万全を期す」としています。

日本フードサービス協会 “支援の拡充を”

新型コロナウイルス対策として罰則の導入を盛り込んだ特別措置法が改正されたことについて、大手外食チェーンなどでつくる「日本フードサービス協会」がコメントを発表しました。
この中で、営業時間の短縮などの命令に応じない事業者に対して過料が科せられることについて「新型コロナウイルスの影響は資金余力の少ない外食企業の体力を奪いすでに限界に達している。過料を設けるのであれば補償とセットでなければならない」として、政府に対して飲食業界への支援の拡充を求めています。

そのうえで「店舗名の公表は予想以上に厳しいものだ。SNS社会の中で営業時間短縮に応じないと書き込まれれば、それだけで非難や炎上につながるおそれがあり、店舗や従業員の疲弊は極めて大きな負担になる」として、店名の公表に対して強い懸念を示しています。

飲食店 “罰則導入より財政支援の具体化を”

新型コロナウイルス対策の特別措置法の改正について、営業時間の短縮要請に協力している飲食店からは罰則の導入よりも事業規模に応じた財政支援の具体化を急ぐよう求める声があがっています。

大阪 梅田にある創業35年のすし店「魚心」本店は本来の営業時間は深夜1時までですが、今は大阪府の短縮要請に応じて午後8時に閉店しています。

売り上げは前の年の2割まで落ち込んでいて、繁華街に40余りの客席を構えるこの店では短縮要請に応じた事業者に一律に支給される1日6万円の協力金で家賃や人件費などを賄うことはできません。先月、緊急事態宣言が出てからの赤字は250万円を超えるといいます。
罰則の導入を盛り込んだ特別措置法について「魚心」本店の村田鉄平店長は「なんで先に罰則だけ決められて補償が決まってないのか」と疑問を呈しています。

そして、罰則の導入については補償とセットが前提だとしたうえで「売り上げは店舗によって違うので一律の補償ではなく前年の8割を補償するなど事業を継続できる支援を迅速に実現してほしい。補償内容によっては閉店する店もあると思うのでしっかりしてほしい」と話し、事業規模に応じた支援策の具体化を急ぐよう求めています。

日本医師会 中川会長「丁寧な仕組みになった」

日本医師会の中川会長は記者会見で、患者の受け入れを拒否した医療機関名の公表の扱いについて「『正当な理由なく勧告に従わないのであれば公表する』という丁寧な仕組みになった。通常の医療がきちんと守られることのほか、ゾーニングができないことや専門性の高い医師や看護師が確保できないことも含めて現場の『正当な理由』を丁寧に考えてもらえると期待している」と述べました。