新型コロナ 医師不足の地域 ワクチン接種に課題 北海道東部

新型コロナウイルスのワクチン接種について、医師不足の地域が多い北海道東部の市町村を対象にNHKが聞き取りを行った結果、医師の確保など体制の構築が厳しいとする回答が多くを占めました。通常の医療との両立を懸念する声もあり、医師の少ない地域をどのように支援していくかが課題となっています。

新型コロナウイルスのワクチンについて、政府は、できるかぎり今月下旬から医療従事者を対象に始め、4月1日以降、高齢者への接種を行いたい考えで、自治体が医師などの接種体制を確保することになっています。

NHKが医師不足の地域が多い北海道東部の釧路・根室地方の13の自治体に準備状況を聞いたところ、医師の確保については「足りない」「厳しい」などとする回答が相次ぎました。

接種を担う医師については、羅臼町では人口およそ4700人に対し常勤の医師が1人、浜中町では人口およそ5700人に対し内科医が1人、標津町は人口およそ5100人に対し内科医が3人と少ない状況だということです。

また、厚生労働省が65歳以上の高齢者を対象におよそ3か月間で必要な2回の接種を受けられる体制を整備するよう求めていることを踏まえ、今の体制で接種を3か月以内に終えられるか尋ねたところ、多くの市町村が「難しい」、「不安」などと厳しいという見通しを示しました。

近隣の市町村と共同の接種会場を設けることも認められていますが、それぞれ面積が広く互いの距離も離れていることなどから、共同の接種を検討しているところはありませんでした。

また、市町村の中からは「医師が接種に専念すると通常の診察を休診せざるをえない」という懸念の声も出ていて、医師の少ない地域をどのように広域的に支援していくか課題となっています。

「3000人を3人の医者で接種はなかなか厳しい」

北海道東部にある人口およそ7500人の白糠町は、町内に公的な医療機関がなく、民間のクリニックに内科医が3人勤務しています。

ワクチンの接種体制の確保はほかの自治体も同じように大変で応援は求めづらいとして、町単独で体制を整えることを決めました。

通常の診療との両立を図るため、町内の内科医3人のうち2人がワクチン接種を担当、1人が通常の診療にあたることを検討していて、限られた医療体制で準備を進めています。

集団接種の会場として町内の公共施設3か所を押さえたほか、ワクチンを超低温で保管する専用の冷凍庫を置くため役場内の倉庫で新たに電気設備の工事も行っています。

しかし、こうした準備の積み重ねをしても町内のおよそ3000人の高齢者への接種を3か月間で終えられるかは現時点で見通せないといいます。
ワクチン接種を担当する介護健康課の二色郁子課長は、「3000人を3人の医者で接種するのはなかなか厳しい数だと思っています。ワクチンがいつ届くのか、またワクチンの数によって接種できる人数が限られてくるので、集団接種を日程的に何回組まないといけないのかが課題になっています」と話しています。

町外から応援求める町も

北海道東部の知床半島に位置する羅臼町では、およそ4700人の人口に対し、常勤の医師は診療所に勤務する1人だけです。

一方、町の高齢者はおよそ1500人で、1人の医師がワクチン接種にかかりきりになると、通常の診療への影響が懸念されます。

このため、町は町外から医師の応援を求めることを決め、これまでに50キロ余り離れた中標津町から医師1人の派遣が決まりました。

しかし、通常の診療とワクチン接種を両立させるには、もう1人必要だとして450キロ離れた札幌市や150キロ離れた釧路市にも応援を求めています。
町内唯一の医師で、知床らうす国民健康保険診療所の木島真さんは「ふだんは常勤1名の体制で、それだけでワクチンを全部うちきるのは無理だと思います。医師の確保に関して、何らかの補助があるといいと思います」と話しています。