生活保護申請ためらう理由に「扶養照会」 見直し求め署名活動

新型コロナウイルスの影響で生活に困窮する人が相次ぐ中、親族に問い合わせる「扶養照会」を理由に生活保護の申請をためらい、支援が届かないケースがあるとして、支援団体が運用の見直しを求める署名活動を行っていて、厚生労働省に提出する予定です。

「扶養照会」は、自治体が生活保護の申請をした人に親族の経済的な状況などを聞き、援助を受けられる可能性があると判断した場合に、親族に通知し、問い合わせることです。

厚生労働省は、親族からDVや虐待を受けていたり、親族がおおむね70歳以上であったりする場合などは「扶養照会」を行わなくてもよいと、自治体に通知しています。

東京の支援団体が年末年始に相談会に訪れた165人にアンケートを行った結果、ほとんどが生活に困窮していましたが、78%に当たる128人が生活保護を受けていませんでした。

このうち34%が「家族に知られるのが嫌だから」と回答するなど「扶養照会」を理由に生活保護の申請をためらい支援が届かないケースが相次いでいるということです。

このため、生活保護を申請する人が承諾し、親族からの援助が明らかに期待できる場合だけ扶養照会を行うなど、運用の見直しを求める署名を先月からインターネットで集めています。

団体によりますと、集まった署名は1日の時点で3万3000余りで、来週にも厚生労働省に提出する予定です。

支援団体「つくろい東京ファンド」の稲葉剛さんは「都内の一部の自治体に聞き取りを行ったところ、扶養照会で親族からの援助に結びつくケースはほとんどありませんでした。国には必要な支援が届くように対応を求めたい」と話しています。

厚生労働省は「親族と相談してからでないと生活保護の申請を受け付けないなど、扶養照会が要件であるかのような説明を行うことは不適切だと、自治体に改めて通知している」としたうえで「生活保護の申請は国民の権利です。生活保護を必要とする可能性はどなたにもあるものですので、ためらわずにご相談ください」とホームページなどで呼びかけています。