参院予算委 コロナ対策含む第3次補正予算案 賛成多数で可決

新型コロナウイルス対策などの費用が盛り込まれた今年度の第3次補正予算案は、参議院予算委員会で採決が行われ、賛成多数で可決されました。このあと、参議院本会議でも可決されて成立する見通しです。

この中で、国民民主党の伊藤副代表は「国民民主党は、いち早く、一貫して、一律の10万円給付を訴えてきた。菅総理大臣は、追加の現金給付をやるつもりはあるのか」とただしました。
これに対し、菅総理大臣は「雇用調整助成金で1日最大1万5000円の支援を行っているし、緊急事態宣言で影響を受ける飲食店には、協力金などを支給することにしている。これらの対策を実施することで、国民の雇用や事業、暮らしを守りたい」と述べました。

また、各府省庁の新型コロナウイルスの感染者数について、内閣人事局の担当者は、今月21日の時点で、◇出先機関などを含む全国の一般職の常勤職員の累計で794人、◇自衛官など、防衛省の常勤職員の累計で798人の、合わせて1592人が報告されていることを明らかにしました。
共産党の小池書記局長は、感染症法の改正案について「厚生労働省の感染症部会の議事録では、出席した18名の委員のうち、罰則に賛成しているのは3名だけだ。慎重な意見が3名で、8名は反対あるいは懸念を表明している。多数の反対意見を踏みにじって法案を出してきた」と批判しました。
これに対し、菅総理大臣は「田村厚生労働大臣から『おおむねの了承が得られたので提出した』ということだった。そのような方向であれば、それは問題ないと思う」と述べました。
また田村大臣は「『罰則について慎重に議論すべき』『罰則は、実効性を担保するツールという考えが重要で、正しく伝わるよう説明が必要』など、いろいろな意見があったが、最終的におおむね了承をいただいた」と説明しました。

質疑のあと、委員会では、新型コロナウイルス対策などの費用が盛り込まれた今年度の第3次補正予算案の採決が行われ、自民・公明両党と日本維新の会の賛成多数で可決されました。

このあと、参議院本会議でも可決されて成立する見通しです。

自民 森山国対委員長「大変ありがたい」

自民党の森山国会対策委員長は、記者団に対し「新型コロナウイルス対応などを盛り込んだ補正予算案が成立することは大変ありがたい。毎年のように大きな災害も発生しているので、国民に安心感を与えることができる。政府には、成立したらスピーディーに執行し『15か月予算』の実効性を担保してもらいたい」と述べました。

立憲 蓮舫代表代行「柔軟な予算執行を」

立憲民主党の蓮舫代表代行は、NHKの取材に対し「『Go Toトラベル』の予算は、今はいらないという声が大半で、それよりも病院や飲食店への支援など使うべきところはもっとある。緊急事態宣言も今後どうなるかわからない中、変わりゆく状況にあわせた柔軟な予算執行を求めたい」と述べました。

第3次補正予算案の詳細

今年度の第3次補正予算案には、去年12月にまとめた経済対策を実行するため、追加の歳出として19兆1761億円が計上されています。

▽新型コロナウイルスの感染拡大防止に関する予算としては、◇病床や宿泊療養施設の確保など医療を提供する体制を強化するために「緊急包括支援交付金」を増額するため1兆3011億円、◇各都道府県が飲食店に営業時間の短縮や休業を要請する際の協力金などの財源として「地方創生臨時交付金」を拡充するために1兆5000億円、◇ワクチンの接種体制などを整備するための費用として5736億円を盛り込んでいます。

▽ポストコロナに向けた経済の構造転換や好循環を実現するための予算としては、◇中堅・中小企業が事業転換に向けて行う設備投資などを最大で1億円補助するための費用として1兆1485億円、◇行政サービスのデジタル化を進めるため、地方自治体のシステムを統一する費用などに1788億円、◇“脱炭素社会”に向けて基金を創設し、野心的なイノベーションに挑戦する企業を10年間継続して支援する費用として2兆円、◇Go Toトラベルの延長に伴う費用として1兆311億円を計上しています。

さらに▽防災・減災や国土強じん化を推進する予算として、◇風水害や巨大地震などへの対策やインフラの老朽化対策などの費用として、2兆2604億円が盛り込まれています。

国の財政状況は一段と厳しく

新型コロナウイルスの影響で企業業績が悪化したことなどから、今年度の国の税収は当初の見込みと比べて8兆円余り少ない55兆1250億円となる見通しです。

第3次補正予算に必要な財源を確保するため、政府は追加で赤字国債などを発行する方針です。

この結果、今年度の国債の新規発行額は、112兆5539億円と、初めて100兆円を超えることになります。

今年度の予算全体でみますと、歳入の64%余りを国債に頼る過去最悪の状況で、健全化が課題となっている国の財政状況は、一段と厳しくなります。

こうした財政事情も踏まえ、政府は、第3次補正予算案の財源に、昨年度・令和元年度の国の一般会計の剰余金を活用することを特例として認める法案も提出しています。

具体的には、追加の歳出、19兆1761億円の財源として昨年度の剰余金のうち、6852億円を活用します。

財政法では、剰余金の半分以上は国債の償還などにあてることが定められていますが、特例法案では昨年度の剰余金については、この規定を適用しないとしています。

予備費は残り3兆8000億円余り

今年度の第3次補正予算案が成立しますと、新型コロナウイルス対策にあてる予備費の残りは、3兆8144億円となります。

政府は今年度、新型コロナウイルスへの対応として、国会の承認を得ずに使いみちを決められる予備費として▽第1次補正予算で1兆5000億円▽第2次補正予算で10兆円、合わせて11兆5000億円の予備費を計上しています。

そして、これまでに24件、合わせて5兆8000億円余りの支出が決定されています。

主な使いみちは▽売り上げが大幅に落ち込んだ中小企業などに最大200万円を支給する「持続化給付金」の資金を増やすために9150億円。

▽海外の製薬会社からワクチンを購入する費用として6714億円。

▽雇用調整助成金の特例措置を行う予算の不足を補うために4391億円。

▽Go Toトラベルに必要な資金を増やすために3119億円。

▽営業時間の短縮に応じた飲食店に対する協力金を1か月あたり最大180万円に拡充する費用として7418億円となっています。

そして今回、政府は第3次補正予算案の財源に1兆8500億円の予備費をあてています。

予算案が成立しますと、今年度の予備費の残りは3兆8144億円となります。

政府は、感染拡大の状況に応じて機動的に対応するため、予備費が必要だとしていて、新年度の当初予算案でも、新型コロナウイルスへの対応として、5兆円の予備費を盛り込んでいます。

ただ、予備費の活用は、あくまで特例的な措置であり、使いみちや実効性の丁寧な説明が求められます。

政府は、今年度使った予備費の実績をまとめた書類を、今の通常国会に提出したうえで、事後承諾を得ることにしています。