東京都 新型コロナ モニタリング会議「深刻な感染状況続く」

新型コロナウイルスの東京都の「モニタリング会議」で、専門家は都内の新規陽性者数は依然として高い値で推移していて深刻な感染状況が続いていると指摘し、実効性のある対策を緩めることなく徹底する必要があると訴えました。

東京都は28日、「モニタリング会議」を開き、専門家は都内の感染状況と医療提供体制をいずれも最も高い警戒レベルで維持しました。

このうち感染状況について、新規陽性者数の7日間平均は、先々週の1699人や先週の1471人から、27日の時点で1015人に減少したと指摘しました。

専門家は「7日間平均は減少したものの、緊急事態宣言発令前の今月6日とほぼ同数で、いわゆる第2波のピーク時のおよそ3倍と依然として高い値だ。深刻な感染状況が続いている」と指摘し、実効性のある対策を緩めることなく徹底する必要があると訴えました。

また、全体の新規陽性者数は減っているものの65歳以上は減少が見られず、全体に占める割合が大きく上昇したことを指摘し、重症化リスクの高い高齢者の感染を防ぐことが必要だと呼びかけました。

一方、医療提供体制については「ひっ迫が長期化し、通常の救急医療も含めて危機的な状況が続いている。新規陽性者数を減らし、重症患者数を減少させることが最も重要だ」と指摘しました。

小池知事「感染押さえ込めるか分岐点」

東京都の小池知事は記者団に対し「緊急事態宣言が出されてから3週間がたとうとしている中で、感染を押さえ込めるかどうか分岐点だ。ここでさらに徹底していくんだという意識を皆さんと共有したい」と述べ、不要不急の外出や飲み会の自粛、テレワークの実施などで徹底的に感染の機会を減らすよう呼びかけました。

また、「特に重要なのは重症者の数で、重症化しやすい65歳以上の世代は増加傾向にある。命に関係してくるので、重症者の増加には改めて厳重に警戒しなければならない」と述べ、感染が多くなっている20代30代も含めて、引き続き感染防止対策を徹底するよう呼びかけました。

都 患者用ベッド 700床増やし計4700床を確保

東京都は、都内で新型コロナウイルスの患者用のベッドをこれまでより700床増やし、合わせて4700床確保したと明らかにしました。

このうち、重症患者向けは15床増やして265床、中等症以下の患者向けが685床増やして4435床それぞれ確保しました。

このうち1500床は、「都立病院」と、都の政策連携団体の公社が設置する「公社病院」が確保したベッドで、「都立」と「公社」では今後さらに200床増やして来月1日には1700床にするということです。

新規陽性者 高い水準で推移

28日のモニタリング会議の中で示された都内の感染状況と医療提供体制についての分析結果です。

【感染状況】

新たな感染の確認は、27日時点の7日間の平均が1015.1人で前の週からおよそ456人減少しました。

増加比はおよそ69%と先週に引き続き100%を下回りましたが、専門家は「新規の陽性者数は高い水準で推移しており深刻な感染状況が続いている。新規陽性者をさらに減少させなければならない」と指摘しました。

今週、感染が確認された人を年代別の割合でみると、
▽20代が最も多く20.2%、
▽30代が15.6%、
▽40代が14.6%、
▽50代が14.2%、
▽60代が9.6%、
▽70代が7.6%、
▽80代が6.8%、
▽10代が5.4%、
▽10歳未満と▽90代以上が3.0%でした。

65歳以上の高齢者は1663人と前の週より59人増えたほか、新規の陽性者に占める高齢者の割合は21.8%と前の週より6ポイント高くなっています。

専門家は「65歳以上の高齢者数は減少が見られず高い水準で推移していて割合が大きく上昇した。家庭、施設をはじめ重症化リスクの高い高齢者への感染の機会をあらゆる場面で減らすとともに基本的な感染予防策を徹底する必要がある。また、無症状であっても感染源となるリスクがあることに留意する必要がある」と指摘しました。

一方、感染経路がわかっている人のうち、家庭内での感染は52.7%で、経路別では26週連続で最も多くなりました。

年代別にみると80代以上を除くすべての年代で家庭内感染が最も多くなりました。

80代以上では病院や高齢者施設などの施設内での感染が76.6%と最も多くなりました。

このほか、感染経路がわかっている人のうち
▽施設内は27.3%、
▽職場内は6.9%、
▽会食が3.3%、
▽夜間営業する接待を伴う飲食店は0.2%でした。

前の週と比べると会食での感染の割合は減少した一方、施設内での感染はおよそ1.7倍に増えています。

専門家は「複数の病院や高齢者施設で施設内感染が急増していて、その中には死亡事例も含まれている。同居する人からの感染が最も多いのは、職場、施設、会食などから家庭内に持ち込まれた結果と考えられる」と指摘しました。

そのうえで「日常生活の中で感染するリスクが高まっており、テレワーク、時差通勤・通学などの拡充を図り、感染リスクを大幅に減らす必要がある」と呼びかけました。

また、「感染の広がりを反映する指標」としている感染経路の分からない人の7日間平均はきのう時点で539.9人で、前の週よりおよそ325人減りました。

増加比はおよそ62%で、先週に続いて100%を下回りましたが専門家は「依然として人数は高い値で推移しており、引き続き厳重に警戒する必要がある」と指摘しています。

また、今週の全体の新規陽性者のうち、感染経路の分からない人の割合はおよそ55%と、前の週のおよそ60%と比べて低下しました。

ただ専門家は「依然として高い値で推移している。積極的な疫学調査による接触歴の把握が難しくなり、感染経路がわからない人の数とその割合も高い値で推移している可能性がある」と指摘して、強い危機感を示しました。

このほか、今月25日までの1週間で確認された新規陽性者のうち20.2%が無症状でした。

専門家は「感染機会があった無症状者を含めた集中的な検査などの体制強化が引き続き求められる。無症状の陽性者が早期に診断され感染拡大防止につながるよう、保健所の体制整備へのさらなる支援策が必要だ」と指摘しています。

都は、都外に住む人がPCR検査のためだ液を都内の医療機関に送り、その後、都内の保健所に陽性の届けが出たケースを除いて分析・評価していますが、今週はこうしたケースが219人いました。

医療の危機的状況続く

【医療提供体制】

検査の「陽性率」は27日時点で8.4%と、1週間前の10.6%から低下したものの、専門家は「高い値が続いている」と分析しています。

入院患者は、27日時点で2871人で、今月20日の時点より22人減少しました。

ただ、専門家は「非常に高い水準で推移していて、医療提供体制のひっ迫は長期化し、通常の救急医療なども含めて危機的状況が続いている」と指摘しました。

そのうえで「現状の新規陽性者数に対応する病床を確保するためには、通常の医療をさらに縮小せざるをえない。救急の受け入れが困難になったり予定していた手術を制限したりするなど、都民が必要とする通常の医療をこれまでどおり実施できない状況が生じている」として、強い危機感を示しました。

また、「保健所から都に寄せられる入院調整の依頼は、連日、1日に300件を超え、患者が退院したあと次の患者がすぐに入院する状況が続き、調整が難航している」と述べ、実効性のある感染防止対策を緩めることなく継続し、新規陽性者をさらに減少させる必要があると指摘しました。

また、都の基準で集計した27日時点の重症患者は159人と、過去最多だった前回より1人減りました。

年代別にみると、▽40代が6人、▽50代が17人、▽60代が48人、▽70代が58人、▽80代が27人、▽90代が3人でした。

性別では男性は116人、女性は43人でした。

専門家は「高齢者の新規陽性者数の割合が上昇する中、重症患者のための医療提供体制は危機的状況が継続している。人工呼吸器の離脱まで長期間を要する患者が増加すると、重症患者数は急増し医療提供体制の危機的状況が数週間続くと思われる」と分析しています。

そのうえで「新型コロナの重症患者だけでなく、ほかの傷病の重症患者の受け入れが困難になっており、多くの命が失われる危機に直面している」と強い危機感を示しました。

一方、今月25日までの1週間で都に報告された亡くなった人は前の1週間より29人増えて68人でした。

このうちおよそ9割の61人は70代以上でした。

専門家“新規陽性者 すぐに下がらない”

モニタリング会議に出席した国立国際医療研究センターの大曲貴夫 国際感染症センター長は記者団に対し、今後の新規陽性者の動向について「未来予想はなかなかできないと思うが、現状の数字がすごく高く、だいたい下がっていく時はなだらかだ。今後、1週間2週間でびっくりするほど500人も1000人も下がることは普通はないというのが私の見立てだ」と述べました。

そして、緊急事態宣言の期限となる来月7日までに、都内の感染状況や医療のひっ迫状況が宣言解除の目安の1つとなる「ステージ3」相当まで改善するかどうか記者団に聞かれると「そこのところは議論した上でものを言いたい。ただ、簡単ではないだろう」と述べました。