コロナ禍でクラウドファンディング広がる 新事業に活用も

新型コロナウイルスの感染拡大で影響を受けている飲食店などが、インターネットを通じて個人から幅広く資金を募るクラウドファンディングで支援を呼びかける動きが広がっています。影響の長期化を見据えて最近は新たな事業に活用するケースが増えています。

クラウドファンディング協会によりますと、去年6月までの半年間に事業者が返礼品を支援者に贈る仕組みで集めた資金は223億円と、前の年のおよそ3倍に増えて過去最高となり、その後も増加しています。

クラウドファンディングを運営する各社によりますと、最近は運転資金を得るだけでなく、飲食店がネット通販を始めたり、イベント運営会社がオンラインでサービスを提供したりするなど、影響の長期化を見据えて新たな事業に活用するケースが増えているということです。

クラウドファンディングの運営会社「Makuake」の坊垣佳奈取締役は「一時的に資金を得るだけでなく新商品の開発や業態変更のために資金を集める事業者が増えている。消費者もこうした動きを応援するために、お金を使いたいというニーズが増えていると感じる」と話しています。

時短営業で使用激減の野菜を返礼品に

東京・渋谷など都内で7店舗の飲食店を経営する会社では、緊急事態宣言後の時短営業で、売り上げが以前の4割ほどに落ち込んでいます。

店では、千葉県佐倉市など、合わせて13ヘクタールある自社農場で育てた野菜を提供していますが、時短営業で野菜の使用も激減しています。

このため、事業に必要な資金をクラウドファンディングで募っていて、1000円を支援した人には大根やゴボウなど農場の野菜を返礼品として送るということで、フードロスを防ぐねらいもあります。

さらに、店のシェフが考えたレシピをインスタグラムで配信し、料理で野菜の味を知ってもらうことで、これから本格的に取り組む野菜の通販事業での顧客の獲得も視野に入れています。

「ALL FARM」の寺尾卓也取締役は「影響が長期化するなかで、いろいろ新しいことを試していかないと、事業を続けていくのは難しくなっている。クラウドファンディングを通じて、小さな取り組みから始めていきたい」と話しています。

プレミアム日本酒で需要開拓

一方、群馬県長野原町の酒造会社では、地元の観光施設などで日本酒を販売してきましたが、緊急事態宣言後は、売り上げが前の年の2割ほどに減少しました。

新たな需要を取り込もうと、ネット販売に取り組む事業者と協力して、1本1万円を超える高価格帯の酒を作ることを決め、クラウドファンディングで支援を呼びかけています。

浅間酒造の櫻井武社長は「コロナの第3波が来て、精神的にも非常にきつかったが、サイトを通じて予想外に多くのお客さんから応援の声をもらい、ありがたい」と話しています。