聖火リレー 緊急事態宣言などの場合“人が走る”見合わせ検討

東京オリンピックの聖火リレーをめぐり、大会組織委員会は、リレーを実施する都道府県でその期間中に緊急事態宣言などが出されている場合には、人が走るリレーは見合わせ、聖火を持ち込んだイベントだけを行って次につなぐ形の代替案を各都道府県の実行委員会に伝え、検討していることがわかりました。

延期された東京オリンピックの聖火リレーは、3月25日に福島県をスタートし121日間をかけて全国を回ることになっていて、スタートがおよそ2か月後に迫る中、新型コロナウイルスの感染防止対策が課題となっています。

組織委員会は、リレーを実施する都道府県でその期間中に緊急事態宣言が出されたり外出自粛が求められたりするなど規模を縮小する必要がある場合には、人が走ってつなぐ公道でのリレーを見合わせ、代替案として、1日の最後に聖火が到着するセレブレーション会場に聖火を持ち込んでイベントだけを行い次につなぐ形で実施する案を各都道府県の実行委員会に伝え、検討していることが関係者への取材でわかりました。

リレーの実施方法は、各都道府県でリレーが始まる30日前に組織委員会と実行委員会が判断し、判断がつかない場合はその後、改めて協議されるということです。

組織委員会の関係者は「これは聖火リレーの中止ではない。感染状況が悪い場合は安全を最優先し、次の県につなぐという形のリレーで聖火を運びたい」としています。

聖火リレー 全国各地で約1万人が参加予定

聖火リレーは年齢や性別などの異なる幅広い層から選ばれたおよそ1万人が全国各地を走ることでオリンピックの機運を全国に広げる役割を担います。

東京オリンピックの聖火は去年3月にギリシャから日本に運ばれ、延期が決まったあとはことし3月まで14の道府県を巡回し、施設や広場などで展示されています。

大会組織委員会はことしも延期前と変わらず全国859の市区町村を121日かけてまわる計画で、およそ2か月後の3月25日に福島県からスタートします。

「聖火ランナー」からは聖火リレー実施に不安の声も

こうした中、世界的な感染拡大や緊急事態宣言を受け、一部の聖火ランナーからは聖火リレーの実施に不安の声があがり始めています。

川崎市に住む日本体育大学4年の松本凌さん(21)は去年、聖火ランナーに選ばれ、リレー開始初日の3月25日に出身地の福島県を走る予定です。

東南アジア発祥の球技、セパタクローの日本代表選手としてオリンピックでは行われないマイナー競技をPRしようと先月下旬、大会組織委員会から改めて参加の意思を確認するメールが届いた際にも「走ります」と返信しました。

しかし、緊急事態宣言が出され、感染拡大を伝えるニュースを日々、目にするうちに2か月後に迫った聖火リレーが本当にできるのか、不安に感じるようになったといいます。

松本さん自身も大学の授業がオンラインになり都内のキャンパスに通学したのは今年度わずか1日だけで、教員免許取得のため予定されていた教育実習は中止されました。

セパタクロー日本代表の活動も緊急事態宣言で体育館の確保が難しくなったため練習や全国大会が中止され、次の試合の機会は夏までなくなるなど生活の変化を余儀なくされています。

松本さんはいまも聖火リレーが実施されれば走りたいと考えていますが家族や友人との間で話題にのぼることもなくなり、春から始まる社会人生活の準備もあって聖火リレーに対する熱意が薄まっているといいます。

松本さんは「1回目の緊急事態宣言の時より感染者が多い状況が続いている中では聖火リレーは簡単ではないし、海外から人を呼ぶと感染のリスクが増すのでオリンピックの開催自体も難しいのではないか。今は走るための準備よりも、自分の競技生活や社会人に向けた準備にもっと時間を使いたいと思うようになっている」と話しています。