バイデン新大統領 “パリ協定復帰” 署名 政策転換をアピール

アメリカの第46代大統領に民主党のジョー・バイデン氏が就任しました。バイデン新大統領はさっそく、トランプ政権下で離脱した地球温暖化対策の国際的な枠組み「パリ協定」に復帰するための文書などに署名し前政権からの政策の転換をアピールしました。
今後10日間でまずは新型コロナウイルス対策や経済、人種問題など喫緊の課題での具体策を示し、対応を急ぐ方針です。

アメリカの大統領就任式は、連邦議会の乱入事件などを受けて、厳戒態勢がとられる中、首都ワシントンで20日行われ、ジョー・バイデン氏が宣誓を行い第46代大統領に就任しました。

就任演説でバイデン新大統領は、大統領選挙後の混乱などを念頭に「民主主義が勝利を収めた」と述べた上で、「国民と国家の結束に全霊をささげる」と訴え、分断が進むアメリカ社会の融和を呼びかけました。

初日は大統領令など15の文書に署名

その後、大統領として初めてホワイトハウスに入ったバイデン新大統領は、さっそく執務を開始し、大統領令など15の文書に署名しました。

この中にはトランプ政権下で離脱した地球温暖化対策の国際的な枠組み「パリ協定」に復帰するための文書やWHO=世界保健機関からの脱退の撤回を命じる大統領令、新型コロナウイルス対策として連邦政府の施設でマスクの着用を義務づけるよう命じる大統領令などが含まれています。

このうち、「パリ協定」への復帰について、ホワイトハウスのサキ報道官は初めての記者会見で「アメリカが世界で指導的役割を果たそうとするものだ」と述べその狙いを説明しました。

トランプ政権はアメリカ第一主義を掲げ、環境対策よりも経済を重視する姿勢を示したほか、新型コロナウイルスをめぐっては脅威を軽視したとも批判されましたが、バイデン新大統領は政権発足初日から政策の転換をアピールすることでトランプ前大統領との立場の違いを鮮明にした形です。

ただ、こうした政策をめぐっては前大統領の支持者らからの反発が強く、融和と結束を訴えるバイデン新大統領としては難しいかじ取りを迫られることになりそうです。

就任2日目には新型コロナ対応策を示す予定

ホワイトハウスによりますとバイデン新大統領は就任2日目の21日には喫緊の最重要課題、新型コロナウイルスの感染拡大への対応策を示すということです。

バイデン新大統領は新型コロナウイルス、経済危機、気候変動、人種問題をアメリカが直面する「4つの危機」だとしていて、今後10日間でまずはこれらの問題に対する具体策を示し、対応を急ぐ方針です。

また外交では21日にはWHOからの脱退の撤回を受けて、新型ウイルスの対策を担うファウチ博士がWHOのオンライン会合に参加するほか、22日にはカナダのトルドー首相と新大統領就任後初めての首脳会談が行われる予定です。

バイデン新大統領は就任演説で国際協調を重視する姿勢を示していて、外交面でもトランプ前大統領のアメリカ第一主義からの転換をはかる方針です。

パリ協定 来月19日に復帰へ

バイデン新大統領は気候変動を安全保障上の脅威とみなし、その対応を新政権の最優先課題の1つに位置づけて取り組みを強化する方針を示しています。

その上で再生可能エネルギーへの投資を拡大するとともに100日以内に国際会議を開き、各国への働きかけを強める考えを明らかにしていて、今回の署名により国内外に新政権の姿勢を示すとともにトランプ前政権からの転換を印象づける狙いもあるとみられます。

新政権はアメリカ政府としての復帰のための文書を20日付けで国連に提出し、国連は同じ日にグテーレス事務総長が文書を受理したことから、協定の規定に基づいて30日後の来月19日に、復帰することになり、今後、国際社会で再び指導力を示すことができるかが問われることになります。

連邦政府の建物内 マスク着用を義務化

バイデン新大統領は新型コロナウイルスの感染対策として連邦政府の建物のなかで、大統領の権限でマスクの着用を義務づけることを命じる文書に署名しました。

バイデン新大統領は、政権発足から100日間に新型コロナウイルスへの対策に集中して取り組む考えを示していて、アメリカ国内でワクチンの1億回分の接種を目指す方針を掲げると共に、日本円で200兆円規模の追加の経済対策の実現に取り組むとしています。

トランプ前政権の入国制限措置を撤回

アメリカのバイデン新大統領は、トランプ前政権がテロ対策などを理由にイスラム教徒が多い国からの入国を制限していた措置について、大統領の権限で撤回を命じる文書に署名しました。

バイデン新大統領はトランプ前大統領が不法移民対策として取り組んだメキシコとの国境沿いの壁の建設を中止することや、子どもの頃に親に連れられ入国し、アメリカで育った「ドリーマー」と呼ばれる移民に市民権を与えることを公約に掲げていて、トランプ前政権の強硬な移民政策から転換をはかる方針です。

サキ報道官が初めて会見「透明性を取り戻そう」

バイデン新政権の発足とともに就任したホワイトハウスのサキ報道官は初めての会見を開き、「大統領とは真実と透明性を記者会見室に取り戻そうという話をした。みなさんとは意見がぶつかることがあるかもしれないが、それも民主主義の一環だ」と述べました。

その上で「アメリカ国民との信頼を築き直すのがわれわれがもっとも大切にしていくことだ」と述べ多くの主要メディアと対立してきたトランプ政権とは異なるアプローチをとる考えを強調しました。

バイデン新大統領が就任初日に、トランプ政権下で離脱した地球温暖化対策の国際的な枠組み「パリ協定」に復帰するための文書に署名したことについては、「野心的な合意目標を前に進めるために、アメリカが世界で指導的役割を果たそうとするものだ」と述べその狙いを説明しました。

また、WHO=世界保健機関からの脱退の撤回を命じる大統領令に署名したことに関連して、新型コロナウイルス対策の大統領首席医療顧問のファウチ博士が21日にWHOとのオンライン会合に参加すると明らかにし、新政権としてウイルス対策で国際機関と協調していく考えを示しました。

そして今月22日にバイデン新大統領がカナダのトルドー首相と外国の首脳とは初めてとなる電話会談を行うと明らかにしました。

新ファースト・レディー ジル夫人がメッセージ

バイデン氏が新大統領に就任し、ファースト・レディーとなったジル夫人は、国民に向けたビデオメッセージをツイッターに投稿しました。

この中でジル夫人は「アメリカにとって輝く新たな1章の始まりで、わたしたち全員が1つの政府のもと、1つのアメリカとして団結する時です。そして私たちは、就任式のなかで、希望を目の当たりにしました。この特別に困難な年に、何千人もが協力して素晴らしいものを作り上げたのです。私たちの就任式を国の誇りと約束を反映したものにしてくれた人たちに感謝します。そして、彼らを支援してくれた家族や、この都市で歓迎してくれた皆さんに感謝します。就任式をジョーと私にとって、そして何よりもアメリカの人たちにとって特別なものにしてくれてありがとう」と話しています。

就任演説 「バイデン氏らしい」 専門家

バイデン陣営で東アジア政策のアドバイザーを務め、バイデン新大統領が上院議員時代にスタッフを務めたフランク・ジャヌージ氏はNHKのインタビューに対し、「就任演説の内容は、共和党との協力を常に試みてきたバイデン氏の政治人生そのもので、結束と癒やしを訴えたことは、時宜にかなっているだけでなくとてもバイデン氏らしい」と述べました。

そして、「最優先課題は新型コロナウイルスへの対応や経済再生だが、同盟関係を修復することも就任当初から取り組んでいくという決意も感じられた」と話していました。

そして、同盟国などとの外交関係についてジャヌージ氏は、「バイデン大統領の中国に対する姿勢は当初から国際規範を守らせる一方で、国際社会の一員として迎え入れるというもので、そのバランスがアジア太平洋地域の外交政策の中心になるだろう。日本だけでなく、韓国、オーストラリア、ニュージーランド、タイ、フィリピンといった国と協力して、中国が参加できる規範作りを行っていくことになる」と述べ、バイデン政権が日本などの同盟国と協調して中国に対応していくという見方を示しました。

バイデン政権の閣僚人事 初めて承認

アメリカ議会上院は20日、本会議を開き、バイデン新大統領が新政権の国家情報長官に指名していたアブリル・ヘインズ氏を賛成多数で承認しました。

バイデン大統領が指名した閣僚人事が承認されたのはこれが初めてです。

国家情報長官はCIA=中央情報局やNSA=国家安全保障局などアメリカの情報機関を統括する閣僚級のポストで、女性が就任するのは初めてです。

ヘインズ氏は51歳。

ニューヨーク市の高校を卒業したあと、日本に1年間滞在して柔道を学んだことでも知られています。

その後、NSC=国家安全保障会議の法律顧問などを経て、オバマ政権時代の2013年から2年間、CIAの副長官を務めていました。

ホワイトハウスのサキ報道官は20日の記者会見で、速やかに国家安全保障の態勢を築く必要があるとして、議会に対し、外交・安全保障を担う閣僚の早期の承認を呼びかけました。

就任に合わせ特別番組放送

アメリカでは、就任式の日の夜、舞踏会が催されるのが恒例となっていますが、今回は新型コロナウイルスの感染が拡大しているため、代わりにバイデン新大統領や人気歌手らが出演する特別番組が主要テレビ局で放送されたほか、インターネットでも配信されました。

番組の司会は俳優のトム・ハンクスさんが務め、歌手のジョン・ボン・ジョヴィさんやケイティ・ペリーさんらが歌を披露しました。

また、最前線で新型コロナウイルスの患者の治療にあたる医療従事者らの姿なども紹介されました。

番組の中でバイデン新大統領は「今は新型コロナウイルスの感染拡大や経済や気候の危機、民主主義への脅威といった課題があるが、私たちが力を合わせれば解決できないことはない」と述べました。

そして、番組の最後には、バイデン大統領とジル夫人がホワイトハウスのバルコニーから見守る中、首都ワシントンの夜空に花火が打ち上げられました。