旭川 クラスター対応医師“最悪の事態想定した支援態勢必要”

去年、病院などで大規模なクラスターが相次いだ北海道旭川市で、当時、対策にあたった医師が取材に応じ、病床不足から重症化のリスクが高い患者にクラスターが発生した施設で療養してもらわざるをえない状況だったと明らかにしました。
医師は、全国で同じ対応を迫られる可能性があり、最悪の事態を想定した支援態勢が必要だと指摘しています。

取材に応じたのは、DMAT=災害派遣医療チームの近藤久禎医師で、旭川市でクラスターの対策に当たりました。

旭川市は、重症化のリスクが高い患者は全員、受け入れ態勢の整った市内の基幹病院に入院させる対応を取っていますが、近藤医師によりますと、去年11月上旬、「慶友会 吉田病院」でクラスターが確認されたあと、病床の不足が深刻になり、11月17日の時点で、患者の受け入れが実質的にできない状況になったということです。

このため、大規模なクラスターが発生した2つの病院と、障害者施設の患者については、基礎疾患がある人や介護を必要とする人など、重症化のリスクが高い患者であっても、施設にとどまって療養してもらわざるをえなくなったということです。

市は、基幹病院に入院できない患者にも、必要な医療が受けられるよう医師や看護師を派遣するなどして支援に取り組んだということです。

近藤医師は、「医療を受けなければ、直ちに命の危険がある人のための病床確保を優先した結果、重症化リスクの高い患者にも施設にとどまってもらった。どこでも同じ対応を迫られる可能性があり、最悪の事態を想定した医療の支援体制を早急に整える必要がある」と指摘しています。

規模が大きくなるにつれて転院困難な状況に

旭川市では、2つの病院と1つの障害者施設で100人を超える大規模なクラスターが発生しました。

近藤医師によりますと、このうち去年11月6日にクラスターが発生した「慶友会吉田病院」について、旭川市は16日までに合わせて42人を設備の整った基幹病院に転院させていたということです。

しかし、クラスターの規模が大きくなるにつれ、基幹病院が用意していた患者を受け入れられる病床や、看護師などのスタッフが足りなくなり、直ちに命の危険がある患者以外は、転院が困難な状況になっていたということです。

このため、100人以上の大規模なクラスターが発生した「慶友会吉田病院」と「旭川厚生病院」、それに、障害者福祉施設「北海道療育園」の患者については、それぞれの施設にとどまってもらわざるをえなくなったということです。

このうち、「北海道療育園」については、入所者どうしを隔離することが難しいため、患者を施設にとどめた場合、感染がさらに拡大するおそれがあったということです。

しかし、この施設だけで20人以上を入院させる必要があるうえ、入院先では専門的なケアを行う職員も必要になるため、現実的ではないと判断し、必要な医療を施設で提供できるよう、人員の派遣などの支援に集中したということです。

一方で、「慶友会吉田病院」と「旭川厚生病院」については、人員の派遣などとともに、いわゆる「ゾーニング」で感染した患者を院内で隔離するなど、対策も支援したということです。