インドネシア 新型コロナワクチン接種開始 中国の製薬会社開発

新型コロナウイルスの感染者と死者が東南アジアで最も多いインドネシアで、中国の製薬会社が開発するワクチンの接種が始まりました。

インドネシアで接種が始まったのは、中国の製薬会社「シノバック」が開発しているワクチンで、13日、ジョコ大統領が国内で初めて接種を受けたのに続き、14日から医療従事者らを優先して各地で接種が始まりました。

首都ジャカルタ近郊のデポック市の病院では、医師や看護師らおよそ50人が接種を受けました。

接種を受けた39歳の男性は「副反応が心配だったが、大統領を見て信じることにした。ワクチンで感染拡大を乗り越えられたらいい」と話していました。

シノバックのワクチンは中国国内ではまだ正式に承認されていませんが、緊急投与が行われています。

インドネシアで行われてきたシノバックの臨床試験では、これまでに65.3%の有効性が確認され、WHO=世界保健機関の基準を満たしているなどとして、インドネシア政府は今月11日、緊急使用を許可していました。

インドネシアは4月までにおよそ4000万人に対して接種を行う計画で、シノバックからはおよそ1億2500万回分を確保しているほか、ほかの製薬会社からも調達を進めています。

一方、インドネシアはイスラム教徒の人口が世界で最も多く、国内のイスラム教団体はシノバックのワクチンがイスラム教の戒律に反していない方法で製造されたものと認める「ハラル認証」をしています。

東南アジア各国で中国製ワクチン調達の動き

東南アジア各国ではインドネシアのほかにも中国の製薬会社のワクチンを調達する動きが進んでいます。

各国政府の発表によりますと、タイは、「シノバック」が開発するワクチン200万回分をことし4月までに調達し、最初の20万回分は来月中に到着し、医療従事者らへの接種を始める予定です。

ラオスは、「シノファーム」が開発するワクチン2000回分をすでに調達し、医療従事者らが接種を受けてこれまでに副反応はなかったと発表しています。

ミャンマーは、中国の王毅外相が今週訪問した際に、中国製のワクチン30万回分を無償で提供するという申し出を受けています。

このほか、すべての住民にワクチンを行き渡らせる方針を示しているシンガポールも「シノバック」のワクチンを調達対象としてすでに契約を結んでいて、マレーシアは「シノバック」に加えて「カンシノ・バイオロジクス」のワクチンを調達しようと協議を進めています。

さらに、ベトナムやフィリピンも調達方針を示すなど、東南アジアではほぼすべての国が中国の製薬会社のワクチンを調達したり、調達に向けた動きを進めたりしています。

背景には、財源不足から、欧米製のワクチンだけでは十分な量を確保することができない国が多いことや、中国が対外的な影響力の拡大を図る、いわゆる「ワクチン外交」によって積極的に提供を進めていることもあります。

国際社会から「ワクチン外交」指摘も

中国は、途上国を中心に、ワクチンの提供を積極的に行っていて、国際社会からは、対外的な影響力の拡大を図る「ワクチン外交」だという指摘も出ています。

今週、東南アジアを訪問している王毅外相は13日、インドネシアのルトノ外相と会談したあとの記者発表で「中国はワクチンの国内需要が急増する中でも、最も早い段階でインドネシアの友人にワクチンを提供した。引き続きワクチンの研究開発と調達、製造における協力を推進したい」と強調しました。

外交問題に詳しいインドネシア大学の講師、アルディティヤ・ラリサン氏は「東南アジアは中国製ワクチン普及の主要なターゲットだ。インドネシアで大規模接種が始まったことは、この地域で中国が影響力を拡大するための最初の布石だ」と指摘しています。

また、インドネシアにとっては、中国のワクチン開発の臨床試験の場となることで、ほかの東南アジア諸国より優先的に中国からワクチンの提供を受け、先行して接種を始められたとして有益な面もあったとしています。

一方で、中国の「ワクチン外交」が中国と東南アジアの一部の国が領有権を争う南シナ海の問題に与える影響は「一時的に対立を和らげる効果はありうるが、その効果のほどは不明だ。主権と領土の保全の問題はワクチンとは引き換えにできない」と指摘しています。

トルコでも中国製ワクチン接種始まる

また、トルコでも13日、中国の製薬会社「シノバック」が開発するワクチンの緊急使用が許可され、接種が始まりました。

コジャ保健相が報道陣を前にみずからワクチンの接種を受け「通常の生活に戻るには接種を受けなければならない」と述べて、国民に接種を呼びかけました。ワクチン接種はまず、医療従事者や65歳以上の高齢者を対象とするということです。

トルコは、これまでに新型コロナウイルスの感染が確認された人の数が235万人以上と世界で7番目に多く、感染拡大をおさえるため、夜間と週末の外出制限措置を続けています。

トルコ政府は国民のワクチン接種を急ぐとともに、アメリカの製薬大手ファイザーなどが開発したワクチンについても確保を目指して交渉を進めているとしています。