テレワークしづらくないですか?

テレワークしづらくないですか?
上司  「出勤率8割減にしろと上からのお達しです」
私   「はい」
上司  「俺は毎日出勤するけどどうする?」
私   「は?」
別の上司「うーん、まあ、俺も出勤しとくかあ」
私   「は?」

緊急事態宣言の対象地域が拡大し、政府が「テレワークによる出勤者数7割減」を強く呼びかけるなか、SNSではこんな投稿が増えています。テレワークがなじまない、できない職種や職場があるのは現実で、出勤せざるをえない事情もわかります。
でも、本当はテレワークできる環境なのに、職場や業界の有言、無言の同調圧力で「テレワークできない」という嘆きの声も広がっています。皆さんの職場はどうですか?
(ネットワーク報道部 記者 目見田健・田隈佑紀)

“緊急事態”でも…

1都3県に緊急事態宣言が出された今月8日。

西村経済再生担当大臣は、経済3団体に対し「できれば去年の春以上にさらに踏み込んでお願いしたい」と述べ、テレワークの推進を強く呼びかけました。
しかし、朝の通勤電車の混雑は変わっていないとか、都市部の人出は思ったほど減っていないという報道が相次ぎました。

携帯電話のビッグデータを使った分析では、連休明けの1月12日午前8時の東京駅周辺の人出は、去年12月の平日の人出と比べて2%減と、ほぼ同水準でした。

また、新たに宣言の対象に加わった大阪、愛知、福岡など2府5県でも1月14日の朝の主要な駅周辺の人出は、去年12月の平日から大きな変化はなく、去年の宣言時と比べると多いところで50%近く増えていました。

“忖度のため出社”

SNSでは、テレワークをしないと判断した会社や上司への嘆きの声が相次いでいます。
上司「緊急事態宣言 出たよ!」
私 (テレワークか?)
上司「なので明日から…」
私 (テレワークか?)
上司「窓全開にするね」
私 「窓を全開にするね... ?????」
上司「明日からあったかくしてきてね!上着とか!」
私 「?????????」

めちゃくちゃ寒いんだが...。
夫の会社はテレワーク推進とは言ってるものの前回の総括でさぼってるのではないかという話が出た。その結果、夫の上司は上への忖度のために基本出社。テレワークは上司の許可制にしたので夫は出社
別に出社しなくてもできる仕事で、東京のど真ん中勤務で会社もテレワーク推奨してるのに上司様の判断でテレワークになりません。上司の言い分は「他の会社がテレワークになる分、電車が空く」「効率が下がる!」「今回の緊急事態宣言の主旨は飲食店!だからテレワークの必要なし!」

霞が関でも!?

国家公務員を名乗るツイッターのアカウントからは、こんな投稿も。
【大悲報】

緊急事態宣言の発出により、霞ヶ関でもテレワーク7割が推奨されております。それに伴い、課長補佐は有給休暇を取得しておりますが、なぜか本日も職場で働いております!毎週末のテレワーク実施率報告に向けた取り組みみたいです!霞ヶ関の現場からは以上です!
当人(上司)曰く、「職場」は「家」だそうです!
このツイートにテレワークを推進する河野規制改革担当大臣も「どこの部署?」と反応。
議員宿舎からオンラインで記者会見した河野規制改革担当大臣は「つじつまを合わせるため有給休暇を取って登庁していることがないよう指示を出し、管理職などに対応を徹底したい」と述べたうえで、発覚した場合、本人と上司は処分の対象になりうるとの考えまで示しました。
「出勤者数7割減」を呼びかける政府内での大臣の異例の呼びかけは、日本の職場の雰囲気を象徴しているようにも感じました。

“出勤7割減なんて建て前”

投稿した男性は、勤務する中央省庁を明かさないことを条件に、取材に応じてくれました。

「河野大臣がツイートに反応して自分が誰なのかばれるかもしれないと冷や汗をかきました」
上司が有給休暇を取って職場で働いていた背景について、男性は「出勤者数7割減を国民に呼びかけている立場の国ができていないのはまずい」という意識があって、なんとか取り繕わなければいけないという意識があったのではないかと話していました。

霞が関では「上からの命令は絶対」という意識が強いと指摘したうえで「ほかの省庁でも似たようなことはあると思いますよ。テレワークで出勤7割削減なんて建て前で、自分たちのことを棚に上げてよく言ってるなと感じます」と漏らしていました。

男性が勤める省庁では、現在、7割ほどの職員が出勤しているとのことで、特に管理職の上司は積極的に出勤しているように感じるそうです。
膨大な電話や国会議員への対応などテレワークでは難しい業務も多く「環境作りができていないので出勤者数7割減の達成は今すぐには難しい」と話していました。

もう諦めの気持ち

こんな投稿をした人にも話を聞きました。
リモート環境も整ってるし前回の非常事態宣言時はすぐに在宅に切り替えられたし、いつでもテレワークできる会社なのに現在、誰もしてないうちの会社。理由は「誰もしてないから」。朝礼でも「今回の宣言は前とは違く経済活動を止めないから気を引き締めて頑張ろう」みたいなこと言われたし
都内の会社でIT商材の営業をしている20代の会社員は「もう諦めの気持ちです」とメッセージを寄せてくれました。

週に3日以内ならテレワークができるという社内規律があるそうですが、上司も同僚も誰ひとりテレワークをしていないため、自分だけがテレワークをしにくい雰囲気があると感じています。

オフィスではおよそ100人が同じ空間にいるため、誰かが感染すれば全員が濃厚接触者になる危険性を感じていて、ほとんどの同僚がテレワークを希望しているといいます。

しかし会社の上司からは「政府の方針は前回の緊急事態宣言の時とは異なり、個人で最大限の感染防止をしつつ、あくまで『経済活動優先』」と言われていると打ち明けてくれました。

“不要な出社が増えている可能性”も

こうした職場の実情は、調査データからもうかがえます。

東京商工会議所が去年9月末から10月に会員企業13000社余りを対象に行ったアンケートでは、テレワークを「現在実施している」と答えた企業は53%で、去年5月、6月の調査より14ポイント余り減りました。

また、22%余りの企業が「一時期実施していたが、現在は取りやめた」と回答。

テレワークを継続するうえでの課題を複数回答で聞いたところ「社内のコミュニケーション」(57.9%)が最も多く「書類への押印対応」(56.7%)「労務管理・マネジメント」(51.6%)「ペーパーレス化」(45.0%)と続きました。
「現在は取りやめた」という企業があげた理由は「業務の生産性が下がる」(45.7%)「PC等の機器やネットワークの整備」(39.7%)「社内のコミュニケーション」(33.6%)などとなりました。

ハードルは「同調圧力」

一方、去年11月、従業員10人以上の企業で働くおよそ2万3000人を対象に行われた民間の調査では、正社員のテレワーク実施率は平均で24.7%。

テレワークをしていない理由について、5月に行った調査と比べると「テレワークで行える業務ではない」という回答が大きく減った一方「会社がテレワークに消極的で実施しにくい」との回答は増えました。
一方、この調査では、コロナ終息後もテレワークの継続を希望する正社員は、全体の78.6%にのぼりました。

調査を行った「パーソル総合研究所」は「テレワークでできる業務であっても、組織としてテレワーク推奨を継続するというメッセージが明示されていなかったり、上司・同僚の出社により『同調圧力』が生まれたりして、不要な出社が増えている可能性がある」と分析しています。

「心の足かせ」外すには

テレワークが進まない背景には職場の「同調圧力」による「心の足かせ」があると研究者は指摘します。
「日本の雇用形態は欧米と異なり、従業員の職務範囲があいまいで、それぞれの関係性の中で仕事を進めてきたため、『同調圧力』が生じやすい特徴があります。『上司や同僚も出社しているから自分も』と本来テレワークしたくても、他者との関係で『心の足かせ』がかかってしまう状態です」
「心の足かせ」を外してテレワークを推進するにはどうすればいいのでしょうか。
「パーソル総合研究所」上席主任研究員 小林祐児さん
「『同調圧力』が生じやすい職場環境では、個人一人一人に働きかける対策では限界があります。会社の経営層が、職種や地域の状況も見ながら『不要な出社はしない』とはっきりとしたメッセージを発する必要があります。また、原則テレワークというルールにして、出社する場合に上司の許可を得る『出勤承認制』を導入することも有効です。出勤7割削減の目標達成は容易でなく、業界団体など会社の枠組みを超えた取り組みも含め『テレワークすることが当たり前だ』という集団レベルの意識を形成する必要があります」

我が身を振り返って

今月、行われたNHKの世論調査では、緊急事態宣言の期間が2月7日までに解除できると思うか聞いたところ「できないと思う」が88%「できると思う」は6%にとどまりました。

仮に宣言の期間が延長されれば、そのしわ寄せは医療関係者や飲食店などを直撃し、私たちの日常生活に跳ね返ることになります。

テレワークだけで感染が終息するわけではありませんが、テレワークの推進をはばむ不要の「同調圧力」にみずからも「同調」していないか、振り返って意識を変えていく必要があると感じました。