【記者解説】コロナワクチン 接種進む米国・英国の状況は?

海外で接種が始まった新型コロナウイルスのワクチン。気になるのがアレルギー症状が出た人がいるという情報です。

接種しても大丈夫なの? いまわかっていることをアメリカの専門機関の報告などをもとにまとめました。

(国際部記者 北井元気・アメリカ総局記者 添徹太郎)

Q.ワクチンは接種したほうがいい?

(記者)
アメリカのCDC=疾病対策センターは1月6日に担当者が「接種でもたらされる利益は新型コロナウイルス感染症のリスクを上回っている」と述べるなど、接種を推奨しています。

日本には製薬大手ファイザーなどが開発したワクチンが供給される予定で、世界で最も早い12月8日にこのワクチンの接種が始まったイギリスでは、1月3日までに129万6432人が1回目の接種を受けました。

アメリカでは、12月14日から23日までの間に189万3360人が1回目の接種を受けました。

これまでのところ、イギリスでは少なくとも2人、アメリカでは少なくとも21人に、接種後アナフィラキシーと呼ばれる激しいアレルギー反応がみられたことがわかっています。

しかし、その後も注意しながら接種が続けられています。

Q.激しいアレルギー反応はどれくらいの割合で出ている?

(記者)
CDCが1月6日に公表した報告書によりますと、189万3360万回の接種で21件ということから、100万回で11件の割合だとしています。

Q.ほかの病気のワクチンと比べて高い?

(記者)
CDCの1月6日時点の情報によると、インフルエンザのワクチンの接種ではアナフィラキシーの症状が出る割合は100万回あたり1.3件だということです。

今回の新型コロナウイルスのワクチンでこの症状が出る割合は計算上、およそ10倍となりますが、CDCの担当者は「それでも極めてまれで、非常に安全なワクチンだ」としています。

また、まだワクチンの接種がはじまったばかりでデータが限られていることから、ほかのワクチンとのリスクの比較には限界があるとしています。

Q.アナフィラキシーの症状を示したのはどんな人?

(記者)
アナフィラキシーの症状を示した21人のうち17人は、薬や食べ物などで過去にアレルギー反応が出たことがあったということです。

▼年齢は27歳から60歳までで、中央値は40歳です。
▼90%が女性です。
▼地域的な偏りはないということです。

Q.接種後 症状が出るまでの時間は?

(記者)
症状が出るまでの時間は、
▼71%(15人)が15分以内、
▼14%(3人)が15分から30分、
▼14%(3人)が30分以上で、最も遅い人は2時間半後でした。

Q.症状は回復したのか?

(記者)
報告書によると、21人の中には入院した人もいましたが、その後の経過が追跡できた20人は全員すでに回復したか、退院したということです。

これまでに接種後のアナフィラキシーによる死亡例は報告されていないということです。

Q.アレルギー反応の原因は?

(記者)
原因はまだ特定されていませんが、アメリカのFDA=食品医薬品局は12月、このワクチンに含まれるPEG=ポリエチレングリコールという物質が関係している可能性もあるとして、調査する考えを示しました。

世界的にも有名なアメリカの医学雑誌「ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン」に掲載された総説によると、ポリエチレングリコールは医薬品などに用いられる化合物で、アレルギー反応との関係が指摘されているということです。

CDCは、ポリエチレングリコールやこれと密接な関係にある物質ポリソルベートにアレルギーのある人はmRNAのワクチンを接種すべきではないとしています。

Q.アナフィラキシー以外に報告されている症状は?

(記者)
報告書によると、健康に関する報告はワクチンと関係があるかわからないものも含めて、全体で4393件、0.2%だったということです。

接種後1日以内に、アナフィラキシーではないもののアレルギー反応を示した人は83人で、このうち72人は比較的症状が軽いということです。

また、67%にあたる56人は、薬や食べ物などで過去にアレルギー反応が出たことがあったということです。

症状は、かゆみ、発疹、軽度の呼吸器症状などが多かったということです。

症状を示した人の年齢は18歳から65歳までで、中央値は43歳、90%にあたる75人は女性でした。

症状が出るまでの時間は85%にあたる61人が接種後30分以内、11人が30分以上たってから、残り11人は不明でした。

Q.アレルギーがある人はワクチンを接種しないほうがいい?

(記者)
CDCは食べ物やペットなどでアレルギー症状が出たことがある人でも接種を避ける必要はないとしています。

一方で、以下の人は注意が必要だとしています。

▼ワクチンに含まれる成分によって比較的短時間のうちに、アナフィラキシーのほかじんましんや呼吸困難などのアレルギー症状が出たことがある場合は、接種しないよう呼びかけています。

▼また、1回目の接種でアナフィラキシーの症状などが出た場合は、2回目は避けるよう呼びかけています。

CDCは、激しいアレルギーの症状が出る場合に備えて、過去にほかのワクチンや注射でアナフィラキシーの症状が出たり、比較的短時間のうちにアレルギー症状が出たことがある人は、少なくとも30分間その場で健康状態を観察し、それ以外の人も接種後15分間は体調に変化がないか様子をみる必要があるとしています。

Q.CDCはこれまでのワクチン接種の結果をどう評価?

(記者)
CDCは1月6日、「これまでのところ憂慮すべき兆候はない」とした上で、アナフィラキシーを含む追跡調査を続けるとともに、接種によってもたらされる利益とリスクを定期的に評価していくとしています。

そして、高齢などリスクの高い人たちの新型コロナウイルス感染症による死亡率は高く、治療の選択肢は限られていることから、パンデミックを抑え込むには、効果の高いワクチンを広範囲で接種することは重要だとしています。

そしてワクチンを接種する際の備えとして、アナフィラキシーに対応できる十分な薬などを確保しておくことや発症が疑われる場合には直ちに治療を行うことなどが必要だとしています。

Q.女性の方がアレルギーの症状が出やすい?

(記者)
報告書では、接種したおよそ190万人の性別について、62%が女性、34%が男性、残りは不明としています。

アナフィラキシーの症状を示した人の9割は女性でしたが、女性の方が接種した人数が多かったことが影響している可能性があるとして、CDCは症状の男女差については慎重な見方を示しています。

また報告書そのものについてCDCは、医療従事者や接種した人などが自主的に報告するシステムであることや、安全性への懸念が高まった影響を受けている可能性があること、それにデータのとりまとめの時間差などによって実態を正しく反映できていない可能性もあり、一定の限界があるとしています。

Q.こうした情報はどうやって把握している?

(記者)
アメリカでは、FDAがCDCとともに運用する「VAERS(ヴェアーズ)=ワクチン有害事象報告システム」を使って、新型コロナウイルスを含む様々なワクチンの接種を受けたあとに起きた健康上の問題などに関わる情報を集めています。

医療従事者をはじめ、接種を受けた人や保護者など誰でも報告できるシステムで、ワクチンが原因なのかどうかわかっていないものも含まれます。

CDCなどはこの中でワクチンとの関連が疑われるものについて調査、原因を調べます。

新型コロナウイルスのワクチンは短期間で多くの人が接種することが予想されています。

このためCDCは、副反応の調査やワクチンの有効性を確認するため「V-Safe(ブイセーフ)」というスマートフォン向けのアプリを開発し、接種した人に健康状態を報告してもらえるようにしています。

もっと詳しく知りたい方は

▼CDC=疾病対策センターの報告書(Morbidity and Mortality Weekly Report/MMWR)2021年1月6日https://www.cdc.gov/mmwr/volumes/70/wr/pdfs/mm7002e1-H.pdf

▼CDCの記者ブリーフィング(発言録)2021年1月6日https://www.cdc.gov/media/releases/2021/t0106-cdc-update-covid-19.html

▼アレルギー反応に関するCDCの注意呼びかけ(最終更新日2020年12月31日)
https://www.cdc.gov/coronavirus/2019-ncov/vaccines/safety/allergic-reaction.html

ワクチン 米で約190万人中21人に激しいアレルギー反応

新型コロナウイルスのワクチンを接種したおよそ190万人のうち、アナフィラキシーと呼ばれる激しいアレルギー反応を示した人は21人に上ったとする報告書を、アメリカCDC=疾病対策センターが1月6日、公表しました。追跡できた人は、全員すでに回復したということで、CDCの幹部は「アナフィラキシーは、まれだが、今後も調査を続ける」としています。

報告書によりますと、製薬大手ファイザーなどが開発したワクチンを接種した人は、先月23日までに全米でおよそ190万人に上り、性別は62%が女性、34%が男性で、残りは不明でした。

このうち健康に関する報告は、ワクチンと関係があるか分からないものも含めて4393件、0.2%だったということです。

また、激しいアレルギー反応であるアナフィラキシーの症状を示した人は21人に上り、このうち17人は、薬や食べ物などで過去にアレルギー反応が出たことがあったということです。

症状を示した人の年齢の中央値は40歳で、9割が女性、症状が出るまでの時間は2分から2時間半までありますが、7割は接種後15分以内で、その後の経過が追跡できた20人は、全員すでに回復しているということです。

CDCの幹部は「新型コロナウイルスのワクチンによるアナフィラキシーは、まれだが、今後も安全性の追跡調査を続けていく」として、接種後、一定の時間の健康観察や激しいアレルギー反応への備えのほか、ワクチンの成分にアレルギーのある人は接種を受けないよう注意を呼びかけることが重要だとしています。