都内の感染状況“今の増加割合続けば医療は破綻の危機”専門家

東京都の専門家の会議は、都内の新型コロナウイルスの感染状況と医療提供体制についていずれも最も高い警戒レベルとしました。専門家は、「今の増加の割合が続けば、医療提供体制は破綻の危機にひんする」などと指摘し、実効性のある強い対策を直ちに行い、新たな陽性者と重症患者を減らすことが最も重要だと指摘しました。

東京都のことし初めての「モニタリング会議」が開かれ、都内の感染状況と医療提供体制について、先週までに続き、いずれも最も高い警戒レベルとしました。

このうち、感染状況について専門家は、「新規陽性者の7日間平均が4週連続で最大値を更新し、複数の地域や感染経路でクラスターが頻発している。今の増加の割合が続けば、医療提供体制は破綻の危機にひんする」と指摘しました。

そして「感染経路がわからない人の割合が、およそ67%と上昇傾向が続き、経路の追跡が困難になりつつある」として、実効性のある強い対策を直ちに行うことが必要だと指摘しました。

また、医療提供体制について、別の専門家は「入院患者数はおよそ3000人と非常に高い水準で増加が続き、通常の医療との両立が困難になっている」と危機感を示しました。

さらに「確保した4000床を大幅に超える可能性もあり、医療提供体制の深刻な機能不全や保健所業務への大きな支障が発生する」と述べ、新たな陽性者と重症患者を減らすことが最も重要だと指摘しました。

都内の患者用ベッド 500床増やし4000床確保

東京都は、都内で新型コロナウイルスの患者用のベッドをこれまでより500床増やして、合わせて4000床確保したことを明らかにしました。

このうち、重症患者向けは30床増やして250床、中等症以下の患者向けが470床増やして3750床、それぞれ確保しました。

入院患者が増えていることから、都はさらにベッドを確保できないか医療機関と調整を行っていますが、「感染拡大が続けば、新型コロナウイルスの患者用のベッドを確保するために通常の医療をさらに縮小せざるをえない」と話しています。

宿泊療養施設 ホテル1棟借り上げ11に

東京都は、新型コロナウイルスに感染する人の増加を受けて、軽症や無症状の人に療養してもらうための宿泊療養施設として、さらにホテル1棟を借り上げ、来週中に開設することになりました。

これで都が運用する宿泊療養施設は合わせて11になります。

都内の感染状況の分析「急速に感染が拡大」

7日のモニタリング会議の中で示された都内の感染状況と医療提供体制についての分析結果です。

新たな感染の確認は、6日時点の7日間の平均が1029.3人で、前の週からおよそ278人増えました。

増加比はおよそ132%と非常に高い水準です。

専門家は「都内全域で急速に感染が拡大している」と指摘しました。

また「複数の地域や感染経路でクラスターが頻発している。通常の医療がひっ迫する状況はさらに深刻となっていて、新規陽性者数の増加を徹底的に防御しなければならない」と呼びかけました。

そのうえで「陽性者に占める入院する人の比率が変わらなければ、2週間後を待たずに確保した4000床を超える可能性もあり、医療提供体制は破綻の危機にひんする」と強い危機感を示しました。

さらに、「感染力が強いとされるイギリスや南アフリカから発生した変異したウイルスによる影響を注視する必要がある」としています。

今週、確認された人を年代別の割合でみると、
▽20代が最も多く27.1%でした。
次いで
▽30代が19.3%、
▽40代が15.5%、
▽50代が14.0%、
▽60代が6.8%、
▽10代が5.2%、
▽70代が4.8%、
▽80代が3.8%、
▽10歳未満が2.1%、
▽90代以上が1.4%でした。

また、65歳以上の高齢者は前の週より178人増えて777人となりました。

専門家は「非常に高い値で増加し続けている。家庭、施設をはじめ、重症化リスクの高い高齢者への感染の機会をあらゆる場面で減らし、基本的な感染予防策を徹底する必要がある」と指摘しました。

そのうえで「高齢者の家庭内感染を防ぐためには、外で活動する家族が感染しないことが最も重要だ。無症状であっても、感染リスクがあることに留意する必要がある」と呼びかけています。

一方、感染経路がわかっている人のうち、家庭内での感染は47.7%で、感染経路別では23週連続で最も多くなりました。

年代別にみると、80代以上を除くすべての年代で、家庭内感染が最も多くなりました。

80代以上では、病院や高齢者施設などの施設内での感染が62.6%と最も多くなっています。

このほか、感染経路がわかっている人のうち、
▽施設内は15.7%、
▽職場内は11.4%、
▽会食が9.0%、
▽夜間営業する接待を伴う飲食店は1.4%でした。

20代から30代では、他の年代に比べて会食による感染が多く報告されています。

専門家は「同居する人からの感染が最も多い一方で、職場、施設、会食、接待を伴う飲食店などから家庭内に持ち込まれた結果と考えられる」と分析しています。

そのうえで「職場、施設、寮などの共同生活や、家庭内での感染拡大を防ぐためにも、今一度みずから基本的な感染予防策を徹底する必要がある。特に不特定多数が集まる場では外が寒く暖房を入れていても、窓やドアを2方向に開けて風を通すなど、効果的な方法でこまめな換気を徹底する必要がある」と指摘しました。

このほか、飲食店だけでなく友人とのホームパーティーなどを通じての感染例が報告されていることを明らかにしました。

そして「新年会、成人式などで人と人が密に接触してマスクを外し、長時間または深夜にわたる飲食や飲酒、大声で会話をするなどの行動は感染リスクが著しく高まる」と指摘しました。

また「感染の広がりを反映する指標」としている感染経路の分からない人の7日間平均は、6日時点で697.6人です。

前の週よりおよそ222人増え、これまでで最も多くなりました。

増加比は、およそ138%と高い水準で推移しています。

感染経路が分からない人を年代別にみると、
▽20代から40代で70%を超え、
▽50代と60代は60%を超え、
▽70代は50%を超える高い水準となりました。

専門家は「新規陽性者数の急激な増加に伴い、積極的な疫学調査による接触歴の把握が難しくなると、クラスター対策による感染拡大防止は困難になり、爆発的増加につながる」と強い危機感を示しました。

そのうえで「今の比率で増え続けると、4週間後には1日2531人の感染経路不明者が発生する。実効性のある強力な感染防止策を直ちに行う必要がある」と指摘しました。

このほか、今月4日までの1週間で確認された新規陽性者のうち17.9%が無症状でした。

専門家は「無症状や症状の乏しい人の行動範囲が広がっている。引き続き、感染機会があった無症状者を含めた集中的な検査などの体制強化が求められる」と指摘しています。

都は、都外に住む人がPCR検査のため、だ液を都内の医療機関に送り、その後、都内の保健所に陽性の届けが出たケースを除いて分析・評価していますが、今週はこうしたケースが280人いました。

都内の医療提供体制の分析「多くの命失われる可能性も」

検査の「陽性率」は、6日の時点で14.4%と前回の8.4%から6ポイント上昇しました。

専門家は「年末年始の期間も関係して検査件数が大幅に減少している中、新規の陽性者が増加した影響を受けて、急速に、非常に高い値に増加している」と指摘しました。

入院患者は、6日時点で3090人で、先月29日の時点より816人増えています。

専門家は「入院患者は非常に高い水準で増加が続いていて、医療提供体制が危機的状況に直面し、通常の医療との両立が困難になっている」と指摘しました。

さらに「陽性者に占める入院する人の比率が変わらなければ、2週間を待たずに確保している4000床を大幅に超える可能性もあり、医療提供体制の深刻な機能不全や、保健所業務への大きな支障が発生する。実効性のある強い対策を直ちに行う必要がある」と強い危機感を示しました。

また、入院患者の受け入れ態勢がひっ迫して、受け入れ調整が難航していることを踏まえ、「陽性者の急増に伴って入院の調整の依頼は、年末年始の期間に非常に多い水準で推移し、今月3日以降は連日1日に300件を超え、翌日以降の調整に繰り越したり、待機を余儀なくされたりする例が多数生じている」と指摘しました。

このほか、6日の時点で自宅で療養している人は4901人と、前回より2133人増えていて、専門家は「自宅療養者の急激な増加に伴い健康観察を行う保健所の業務が急増している」と指摘しました。

また、都の基準で集計した6日時点の重症患者は、前回より29人増えて113人でした。

年代別にみると、
▽40代が6人、
▽50代が12人、
▽60代が32人、
▽70代が41人、
▽80代が20人、
▽90代が2人でした。

性別では、
▽男性は87人、
▽女性は26人でした。

専門家は「新規陽性者のおよそ1%が重症化する現状が続けば、2週間後には重症患者はおよそ221人となり、病床の不足がより顕在化する」と指摘しました。

そのうえで「現状の患者動向が継続すれば、新型コロナの重症患者だけでなく、ほかの傷病による重症患者の受け入れが困難になり、多くの命が失われる可能性がある」と、強い危機感を示しました。

一方、今月4日までの1週間で都に報告された亡くなった人は、前の1週間より25人減って21人でした。

このうち17人は70代以上でした。