10万円の給付 実際に使ったのは1万円? 証券会社が試算

新型コロナウイルスの感染拡大を受け実施された1人当たり現金10万円の一律給付について、実際に使われたのは1万円程度にとどまるという試算を大手証券会社がまとめました。

1人当たり現金10万円の一律給付は、新型コロナウイルスの感染拡大を受けた経済対策の一環として実施され、12兆円を超す予算が計上されました。

これについて野村証券は、総務省が公表している「家計調査」などをもとに10万円のうちいくら消費に使われたのか、独自の手法で試算しました。

それによりますと、ことし6月と7月の2人以上の世帯の消費支出と預貯金の額を分析したところ、消費に使われた金額はおよそ2万9000円でした。

1世帯当たりの平均の人数が3人程度ということを考慮すると、実際に使われた給付金は1人当たり1万円程度にとどまるということです。

今後感染が収まれば消費にまわる金額が増える可能性があるものの、今のところは大部分が預金や貯金に回ったと見込まれると分析しています。

野村証券の岡崎康平エコノミストは「家計のセーフティーネットとなり、景気の底割れを防ぐという点では大きな役割があった。ただ国の財政が厳しい中、一律に現金を配ったことで、財政規模が大きくなってしまったことは指摘せざるをえない」と話しています。

専門家「収入減った人たちには生命線 よかったかは疑問も」

また、第一生命経済研究所の熊野英生首席エコノミストは「新型コロナウイルスの影響で、収入が減った人たちや非正規で働く人、年金生活者にとって、生命線、生活の糧として重要性が高かった。先行きの不安感を和らげる効果もあった」と一定の評価をしています。

そのうえで「ただ、富裕層の人たちまで給付金の対象にすることが本当によかったかどうかということについては疑問もある。どのくらいの規模がよかったのか、貯蓄にまわらず消費に回るためにどういう政策誘導をしたらよいのか、追跡調査や検証を行うことで今後の政策の有効性を高めることも必要だ」と指摘しています。