公取委 独禁法に基づいて電通を注意 コロナ給付金入札めぐり

新型コロナウイルス対策の国の給付金の入札をめぐり、大手広告会社の電通の社員が、下請け企業に対し競合相手に協力すれば「出入り禁止」にして、今後、取り引きしないという圧力となる発言をしたなどとして、公正取引委員会は17日、独占禁止法に基づいて電通を注意しました。

国が新型コロナウイルス対策で設けた「家賃支援給付金」の事務委託の入札をめぐり、電通の管理職の社員は、取引先の下請け企業に対し競合する博報堂に協力しないよう圧力をかけたとされ、公正取引委員会が調査を進めてきました。
この調査の結果について、公正取引委員会は17日記者会見し、この社員が下請け企業の社員に博報堂に協力すれば「出入り禁止」にして、今後、取り引きしないと発言し、関係する企業に伝達するよう指示していたと発表しました。

公正取引委員会は、博報堂にも下請けの企業があるため、電通の下請け企業の協力がなくても入札に影響はなかったとする一方、「競争者に対する取引妨害」につながるおそれがあったとして、電通を注意したと明らかにしました。

公正取引委員会の行政調査に基づく措置には、「注意」「警告」「排除措置命令」の3段階があり、「注意」は最も軽いものですが、放置すれば独占禁止法違反につながる可能性があったと判断されました。

この入札は人材サービス大手のリクルートが落札しています。

関係者によりますと、電通はこの入札には参加しませんでしたが、所管する中小企業庁の担当者から電通の持つネットワークを受注した企業に活用させたいと伝えられたということで、社員はノウハウを他社に漏らしたくなかったため問題の発言をしたと説明したということです。

電通「厳粛に受け止め あらためておわび」

電通は「当社はこの注意を厳粛に受け止めております。公正な競争の阻害につながるおそれがあったことにより、協力会社ならびに関係者の方々に多大なご迷惑をおかけしましたことをあらためておわび申し上げます。また再発防止のため、社員教育の再徹底を図ってまいります」とコメントしています。

背景には給付金事業の企業秘密

電通は近年、テレビや新聞の広告による売り上げが減る一方、国や自治体からの受注を伸ばしていて、新型コロナウイルスの感染拡大のあとは「持続化給付金」の業務を請け負っていました。

こうした給付金の事業では、全国でサポート会場を運営することなどが求められ、各地の企業とのネットワークが欠かせないほか、公共事業特有のノウハウも必要になります。

関係者によりますと、電通が参加を見送った「家賃支援給付金」の入札で、社員が圧力をかけた背景には、企業秘密を守りたい意識があったということです。

談合疑う事実 認められず

公正取引委員会は、官製談合の疑いがあるとする国会議員からの情報提供を受けて、電通が受注していた「持続化給付金」についても調査を行いました。

電通のほか、関係する一般社団法人の「サービスデザイン推進協議会」や中小企業庁の担当者などに聞き取りを行い、資料なども確認したということですが、公正取引委員会は、談合を疑う事実は認められなかったとしています。