第3次補正予算案 閣議決定 追加の歳出19兆円余

政府は、新型コロナウイルスの感染防止やポストコロナに向けた経済構造の転換などを後押しする経済対策を実行するため、追加の歳出を19兆1761億円とする今年度の第3次補正予算案を決定しました。

政府は15日の臨時閣議で先週まとめた経済対策を実行するため、追加の歳出として一般会計で19兆1761億円を盛り込んだ今年度の第3次補正予算案を決定しました。

主な施策

新型コロナウイルスの感染拡大防止のための予算としては、
▽病床や宿泊療養施設の確保など医療を提供する体制を強化するために「緊急包括支援交付金」を増額する費用として1兆3011億円

▽各都道府県が飲食店に営業時間の短縮や休業を要請する際の協力金などの財源として「地方創生臨時交付金」を拡充する費用として1兆5000億円を盛り込んでいます。
ポストコロナに向けた経済構造の転換や好循環を実現するための予算としては、
▽中堅・中小企業が事業転換を行うための設備投資などを最大で1億円補助するための費用として1兆1485億円

▽遅れが指摘される行政サービスのデジタル化を進めるため、地方自治体のシステムを統一する費用などに1788億円

▽「脱炭素社会」の実現に向けて基金を創設し、野心的なイノベーションに挑戦する企業を10年間継続して支援する費用として2兆円を計上しています。

防災・減災や国土強じん化を推進

防災・減災や国土強じん化を推進する予算として、
▽激甚化する風水害や巨大地震などへの対策、インフラの老朽化対策などの費用として2兆2604億円が盛り込まれました。

国債の新規発行額は初の100兆円超え

一方で、新型コロナウイルスの影響による企業業績の悪化や消費の低迷で今年度の国の税収は、当初の見込みから8兆円余り減少して、55兆1250億円となりました。

今年度は当初予算が一般会計の総額で102兆円余りでしたが、補正予算を3度にわたって組んだ結果、一般会計の総額は175兆円余りに膨らみました。

今回の補正予算に必要な財源を確保するため、政府は追加で赤字国債などを発行する方針で、今年度の国債の新規発行額は、112兆5539億円と、初めて100兆円を超えることになります。

今年度の予算全体でみますと、歳入の64%余りを国債に頼る過去最悪の状況になります。

政府は、15日、第3次補正予算案を決定したのに続いて、来週には来年度の予算案を決定し、15か月予算の形で切れ目のない対策を実行することにしています。

新規国債発行額の推移は

新規の国債発行額は、今から30年前、1990年度は7兆円余りでした。その後、増加が続き、2000年代は30兆円前後で推移していました。

この時期には、すでに歳入の3割から4割を国債に頼る状況となり、財政の健全化が課題とされていました。

2009年度にはリーマンショックに伴う景気対策などで歳出が一気に膨らみ、国債発行は過去最大の51兆9550億円となりました。

その後、景気回復に伴う税収増加で国債の増加ペースはいくぶん抑えられましたがそれでも30兆円台から40兆円台で高止まりする状況が続いていました。

そうした中、今年度は新型コロナウイルスへの対策で、3度にわたる補正予算が編成される一方、企業業績の悪化で税収は当初の見込みを8兆円余り下回りました。

巨額の歳出を賄うため、大量の国債発行を余儀なくされ、今年度の発行額は112兆5539億円に上ることになりました。

過去最大だった2009年度の51兆9550億円を2倍以上も上回る規模で、初めて100兆円を超えることになります。歳入に占める国債の割合は実に64%を超え、過去最悪の状況です。

次の焦点 来年度予算の課題は

今年度の第3次補正予算案の編成が終わり、次の焦点は編成作業が大詰めを迎えている来年度・令和3年度予算案に移ります。

「感染拡大の防止」「ポストコロナに向けた経済構造の転換」それに「財政健全化」という3つの課題に対し、バランスをはかりながら、予算を組んでいく例年以上に難しい編成作業となります。

感染拡大の防止

このところ、新規の感染者や重症患者の数が夏の“第2波”のピークを超え、“第3波”に入ったという指摘もあります。

国民の命はもとより、経済を下支えし、雇用や暮らしを守るうえでも、感染拡大の防止は最重要の課題です。

医療体制が機能不全に陥ることを食い止める実効性のある対策が求められています。

ポストコロナに向けた経済構造の転換

日本経済を安定的な成長軌道に戻すには、新型コロナウイルスで様変わりした人々の意識に適応した形に社会や経済を転換していく必要があります。

政府は来年度の予算編成の基本方針で、デジタル改革や、脱炭素に代表されるグリーン社会の実現、それに中小企業などの事業転換を後押しすることで、生産性の向上と継続的な賃金の底上げによる好循環の実現などを打ち出しています。

“新たな日常”への対応で海外に遅れを取らず、国際競争力を高めていけるかが問われます。

財政の健全化

感染拡大を防ぎながら、将来の成長への種をまき、財政状況にも目配りしなければならないという難題を抱えての予算編成となります。

麻生副総理・財務相「民需主導の経済回復を確かに」

麻生副総理兼財務大臣は、今年度の第3次補正予算案を閣議決定したあとの記者会見で「コロナの危機を乗り越えて未来をつないでいくことが責任だと思っている。経済対策を迅速に実行してコロナの災いを乗り越えて、未来の成長力を強化して民需主導の経済回復を確かなものにしないといけない」と述べました。

一方、今年度の予算全体で、歳入の64%余りを国債に頼る過去最悪の財政状況になったことについて、麻生副総理は「足元の財政が悪化しているのは事実だ。信認が損なわれないよう経済再生と財政健全化の両立を進める必要がある。また、難しい時だからこそコロナだけではなく日本が抱える構造的な課題に着実に取り組まないといけない。最も差し迫った問題が少子高齢化で引き続き、社会保障を持続可能なものにしていかなければならない」と述べ、歳出と歳入の両面で改革を進めていく考えを強調しました。