新型コロナ 感染拡大に歯止めかからず「勝負の3週間」も…

政府が「勝負の3週間」として新型コロナウイルスの感染拡大の対策を短期間に集中的に行うと呼びかけてから、今週で3週間となります。1週間当たりの感染者数は13日まででおよそ1万7700人、死者数は242人と過去最多を更新し続けていて、感染拡大に歯止めがかかっていません。

新型コロナウイルスへの感染が確認された人は、先月15日までの1週間で初めて1万人を超えた後、先月下旬までは1週間当たりおよそ1万4000人にまで増加しました。

そして、先月下旬に「勝負の3週間」の呼びかけが出された後も増加は続き、
▽今月6日までの1週間では1万5383人、
▽呼びかけから2週間たつ13日までの1週間では1万7694人で、過去最多を更新し続けています。
また、感染して亡くなった人の数は、
▽先月初めまでは1週間当たり50人前後でしたが、
▽先月15日まででは71人、
▽先月22日まででは93人、
▽先月29日まででは138人と感染の拡大とともに増加しました。

そして、
▽「勝負の3週間」が呼びかけられた翌週の今月6日までの1週間では233人と急増し、
▽13日まででは242人とさらに増えて、過去最多を更新し続けています。

政府の呼びかけのあとも感染拡大に歯止めがかからず、医療体制が厳しい状況に置かれる地域も出てきていて、亡くなる人も増え続ける状況になっています。

一方、感染拡大の第1波や第2波と比べると、
▽第1波の時期の5月末までに感染した人は1万6898人、亡くなった人は898人、
▽第2波の時期の7月から9月末まででは、感染した人は6万4975人、亡くなった人は601人、
▽10月以降の感染拡大、「第3波」では、13日までに感染した人は9万6892人、亡くなった人は1026人となっています。

致死率を比較すると、
▽第1波では5.31%、
▽第2波では0.92%、
▽第3波では1.06%となっていて、
第3波での致死率は第1波に比べると低いものの、第2波よりやや高くなっています。

勝負の3週間の人出は

新型コロナウイルスの感染拡大を食い止める「勝負の3週間」で、週末の人出はどこまで減ったのか。

IT関連企業の「Agoop」が携帯電話の利用者の許可を得て、個人が特定されない形で集めた位置情報のビッグデータをNHKが分析しました。

「勝負の3週間」の週末(先月28日・29日、今月5日・6日、12日・13日)と、その前の3週間の週末(先月7日・8日、14日・15日、21日・22日、23日)を比較しました。
それによりますと、1日当たりの人出の平均は、
▽東京駅周辺で13%減少したほか、
▽名古屋駅周辺で3%、
▽大阪梅田駅周辺と京都駅周辺で12%、
▽博多駅周辺で7%それぞれ減少しました。

ただ、▽札幌駅周辺では1%増加しました。

一方で、勝負の3週間の週末と、緊急事態宣言が出たことし4月の土日祝日(4月4日~29日)の平均と比べると、
▽東京駅周辺は4月の3.7倍に上ったほか、
▽名古屋駅周辺は3倍、
▽京都駅周辺は3.6倍、
▽大阪梅田駅周辺は4.1倍、
▽博多駅周辺は6.3倍、
▽札幌駅周辺は1.8倍などとなり、第1波のときの人出を依然として大幅に上回っていることが分かります。

政府の取り組み

新型コロナウイルスの感染拡大が続く中、政府は先月下旬から今週半ばまでを「勝負の3週間」と位置づけて対策を講じてきました。

具体的には、医療体制がひっ迫している都道府県の病床の確保を後押しするとともに、北海道には自衛隊の看護師らを派遣し、大阪府でも15日から活動を開始する予定です。

また、感染が拡大している地域では、知事と連携しながら、飲食店に対する営業時間の短縮要請や「Go Toイート」の食事券の販売停止の検討などを求めています。

さらにイベントの開催制限について、都道府県単位でもさらに強化できると通知し、対応を検討するよう求めています。

一方、国民に対しては、感染リスクの高い「5つの場面」の周知を図り、マスクの着用や手洗い、消毒などの基本的な感染防止策の徹底を繰り返し呼びかけているほか、経済界に対して、テレワークの推進を重ねて要請してきました。

専門家「感染拡大食い止めへ具体的な数値目標を」

現在の感染状況について、公衆衛生学が専門で国際医療福祉大学の和田耕治教授は「外出自粛や会食制限など、都道府県の知事が明確なメッセージを出している地域では新たな感染者の減少がみられているが、全国的にはピークは依然として見えず、重症患者も増え続けている。このままでは、年末年始にかけて必要な医療を受けにくくなる地方が出てくる可能性もある」と指摘しました。

そのうえで「この3週間『接触機会を何割減らせ』といった数値目標が示されていなかったため対策が進まなかったのではないか、人の流れが増えれば、当然、接触の場面が増え、感染拡大につながる」と話していました。

また、今後の感染拡大を防ぐ手立てとして和田教授は「一人ひとりが接触を減らすために家族以外との会食は避け、年末年始の帰省を遅らせることなどが必要だ。また、自治体に対してはこれから2週間は、人の流れを減らす施策を強めることが求められる。その際には例えば、東京都では新たな感染者の発生を1日に100人まで減らすなど、感染者や入院患者の数などをどこまで減らすのか、具体的な数値目標を示す必要がある」と話していました。

日本医師会 中川会長「年末年始の医療提供体制構築を」

新型コロナウイルスの感染拡大で医療提供体制がひっ迫する中、日本医師会の中川会長は「師走は正念場だ」として、感染者数を増やさないよう、感染防止策の徹底を繰り返し呼びかけてきました。

今月1日には総理大臣官邸を訪れ、菅総理大臣と会談し、人工呼吸器などを必要とする重症者が今後さらに増えることが予想されるとして、対策を強化する必要性を指摘していました。

政府が呼びかけた「勝負の3週間」の効果について中川会長は、東京都内で記者団に対し「まだ結果は分からないが、『勝負の3週間』ということばがなければ、感染者数はこんなものでは済まなかったのではないか」と述べました。

そのうえで「新型コロナウイルスに年末年始はないので、年末年始の医療提供体制を早急にしっかり構築しなければならないし、検査機能も低下しないよう、特に民間の検査機関に体制を維持してもらうよう、われわれからもしっかりお願いしたい」と述べました。

中川会長は、東京都内で記者団に対し「決着した以上は、その仕組みにおいて高齢者の負担がこれ以上増えないよう工夫をしていきたい。具体的にどうするかはこれから検討するつもりだ。納得感としては、われわれの思いとはそごがあるが、それはそれとして、できるだけのことはしたい」と述べました。