【短観 景気の先行き懸念】苦境克服へ知恵絞る企業や飲食店

新型コロナウイルスの感染が再び拡大する中、企業の景気に対する見方は依然として厳しい状況が続いています。苦境を乗り越えようと、地方企業の間ではあの手この手で知恵を絞っています。

飲食の移動販売車向け製品に商機見出す 栃木 製造業

新型コロナウイルスの影響で、祭りなどのイベントが激減している中、屋台向けの器具を製造する栃木県のメーカーは、需要が拡大している移動販売車向けの製品を開発し、苦境を乗り越えようとしています。

栃木県小山市のメーカーは、60年以上前から祭りなどのイベント会場に並ぶ屋台やガスを使う調理器具などを製造しています。

しかし、こうしたイベントが春以降、次々に中止になり、ことし1月から今月までの1年間の売り上げは、例年の2割以下に落ち込む見通しです。
夏の繁忙期の需要を見込んで製造したガスコンロ80点など2500万円相当は、今も出荷の見通しが立っていません。

こうした中、会社では、需要が拡大している飲食の移動販売車向けの製品に商機を見いだそうとしています。
新たに開発したのは、軽トラックを低コストで移動販売車に変えられるように荷台に後付けで設置する「キッチンボックス」と呼ばれるもので、ボックスの中で調理ができます。

タカマチ産業の山嵜孝也社長は「コロナの終息後も売り上げが回復するとは思えない。露天商向けだけでなく、幅広い客層向けの製品を開発していきたい」と話していました。

“巣ごもり需要”に対応し品ぞろえ充実 広島 デパート

広島市中区にあるデパート「福屋 八丁堀本店」では、先月下旬以降、広島県内でも新型コロナウイルスの感染が再び拡大している影響で来店する客が減り始めているということです。
このため、デパートでは新型コロナウイルスの影響で高まる、いわゆる「巣ごもり需要」に対応した品ぞろえを充実させ、年末年始の商戦で売り上げを伸ばしたいとしています。

<おせち>
おせちは価格の高い商品の売れ行きが例年よりも伸びていて、このうち、老舗の料理店などが作るいくらや伊勢エビなどを使った10万円のおせちは、予約ですでに完売しています。
また、帰省を控える人が増えると見込まれる中、1人用のおせちや、1段に1人分を詰め合わせた3人から4人用のおせちの品ぞろえを増やし、こうした少人数向けのおせちの予約は去年の同じ時期と比べて10%あまり多いということです。

<福袋>
また、福袋では、地元産の米と土鍋のセットや、尾道市のコーヒー店が独自にばい煎した豆とコーヒーメーカーのセットなど家にいる時間が増えたことから一手間かけておいしいものを食べたいという需要に応えた商品を用意しています。
インターネットを使って販売する種類を増やしたこともあり、福袋全体の売り上げは去年の同じ時期より50%増えているということです。

福屋営業本部の中村真緒さんは「ことしは特に巣ごもり需要に特化した商品に力を入れていて、家の中で使う物をふだんよりもワンランク上の物を買いたいというニーズに応えていきたい」と話しています。

こんにゃくを海外へ オンラインで商談 群馬 製造会社

新型コロナウイルスの影響で売り上げが落ち込む中、群馬県のこんにゃくの製造会社は、海外への販路拡大に乗り出し、手応えを感じ始めています。

群馬県富岡市でこんにゃくを製造している会社では、緊急事態宣言が出た4月には、飲食店や旅館向けなどの需要が大きく落ち込み、売り上げは去年の2割まで落ち込みました。

活路を海外に見いだそうと、ことし10月から海外のバイヤーとオンラインで商談を始めました。
売り込むのは、大豆をまぜてこんにゃく特有のにおいを抑え、外国の人にも食べやすくしたこんにゃく麺です。

オンラインでの商談は、手軽に始められる一方で競争も激しく、ジェトロ群馬事務所からアドバイスを受け、健康志向を全面に打ち出した動画をつくりました。
3分間の動画は、原料の栽培から製品が完成するまでの過程をバーチャルで体験できる内容で動画を見た海外のバイヤーからは「ぜひ試食したい」などと前向きな反応が多く寄せられているということです。

ジェトロによりますと、海外でも外出自粛による“コロナ太り”などで健康志向が高まり、カロリーの低いこんにゃく製品に関心が寄せられているということです。

これまでに、アメリカの大手ネット通販会社との契約が決まったほか、5か国のバイヤーと契約に向けた交渉を続けているということです。

「ツトム食品」の土屋和巳さんは「動画があることによっていい評価をいただき、ぜひサンプルが欲しいと言ってもらえるようになりました。こんにゃくをアジアだけではなくヨーロッパやアメリカなど各国に広めていきたい」と話していました。

ランチ営業を強化 神奈川 居酒屋

新型コロナウイルスの感染を抑えるため、一部の地域の居酒屋などでは夜の時間帯の営業の縮小を余儀なくされています。
こうした中、ランチ営業を強化し、売り上げの減少を補おうという動きも出ています。

このうち、外食チェーン大手の「コロワイド」のグループ会社が神奈川県内で運営している居酒屋は、忘年会シーズンでもある今月の夜の宴会の利用が、感染の再拡大で以前の1割程度まで落ち込んでいます。

この店は少しでも売り上げの減少を補おうと、新たにランチの営業を始めています。

居酒屋のメニューを生かした定食だけでなく、同じグループのイタリアンレストランのパスタやピザも提供しています。

壁紙を洋風のデザインにして店内の雰囲気も変え、女性客や家族連れといった新たな客層を取り込もうとしています。

この店では当初、イタリアンのランチは、一日あたり20人から30人程度の利用を見込んでいましたが、想定を上回る日もあるということです。

この会社ではおよそ30の居酒屋の店舗で同様の取り組みを行っているということです。

30代の女性は「夜はほとんど来たことがありませんでしたが、ランチは週に1、2回ほど利用しています。近くにイタリアンの店がなかったのでよかったです」と話していました。

店を運営するレインズインターナショナルコロワイドカンパニーの松田篤史さんは、「男性が多かったところに主婦や家族での利用も増えている。厳しい状況だが外食の需要がなくなったわけではないので、居酒屋の店舗を利用して最大限対応したい」と話しています。

人件費削減へ業態転換し専門店化 大阪 飲食店

飲食店のなかにはこれまでの店の業態を転換することで生き残りをはかろうとするところもあります。

飲食店オーナーの中澤洋一さんは、大阪 港区の居酒屋など合わせて4店舗を経営しています。
港区の居酒屋「たんぽぽ」は、観光名所として知られる水族館の「海遊館」が近くにあります。

コロナ前は大勢の観光客が帰りがけにこの居酒屋を利用していました。しかし、新型コロナウイルスの影響で人通りは激減。
さらに先月、大阪市がGo Toトラベルから除外されたことから売り上げは一気に3分の1に減少しました。

居酒屋の経営でオーナーの中澤さんが課題だと感じているのが食材のコストと人件費です。

この店では客の満足度を高めようと食事だけで100種類以上のメニューを提供していました。
来店客が少ないなかでは大きな負担です。

また、小さい店ですが、調理には2人、接客サービスに1人の合わせて3人が必要でした。

そこで中澤さんはコロナ禍でも、営業を続けるために店の業態を居酒屋からギョーザの専門店に転換することを決めました。

ギョーザ専門店にすることで従業員は1人で対応が可能です。

仕込みの時間や調理にかかる人手を減らすことができます。

さらに持ち帰りもしやすく、冷凍した商品の展開も期待できるとしています。

中澤さんは「飲食店ではあまり長居をせず、大人数で飲まない風潮に変わってきている。なんとかして生き残っていくため、居酒屋にこだわらず専門店への切り替えに踏み切ります」と話していました。