アメリカ コロナワクチンの供給開始 14日以降各地に到着見通し

アメリカのFDA=食品医薬品局がファイザーなどの新型コロナウイルスワクチンの緊急使用を許可したことを受け、アメリカ政府の当局者が会見し、配送に向けた作業がすでに始まり、14日以降、全米各地にワクチンが到着する見通しを示しました。

FDAは11日、製薬大手ファイザーとドイツの企業ビオンテックの新型コロナウイルスワクチンについて、16歳以上の人への接種を可能にする緊急の使用許可を出しました。

これを受けて12日、アメリカ政府のワクチン供給計画の責任者が記者会見し、供給の見通しを説明しました。

それによりますと、中西部ミシガン州にあるファイザーの拠点では、ワクチンの梱包など配送に向けた準備が始まっていて、13日、全米636か所の配送拠点への輸送が始まるということです。

そして、14日から16日にかけて全米50州や首都ワシントンなどに順次、ワクチンが到着する見通しだとしています。

最初に供給されるのは290万回分で、各州には人口などに応じて配分され、医療従事者や高齢者施設の入所者などに優先して接種が行われることになっています。

今月17日には製薬会社モデルナのワクチンの緊急使用の許可について、専門家が議論するFDAの委員会が開かれる予定で、このワクチンにも緊急使用の許可が出れば、今月中にファイザーとモデルナのワクチン合わせて4000万回分が全米に供給される見通しです。

疾病対策センター 接種推奨を決定の見通し

FDAがファイザーなどの新型コロナウイルスワクチンに緊急使用の許可を出したことを受け、12日、CDC=疾病対策センターは緊急の専門家委員会を開催し、このワクチンの接種を推奨するかどうかを議論しました。

委員会では、妊娠中や授乳中の女性への接種についてや、過去に激しいアレルギーによる症状が出た人への対応について話し合われましたが、最終的に賛成多数で緊急使用の許可にもとづいた16歳以上へのワクチン接種を推奨する意見をまとめました。

これを受けて近く、CDCは正式に推奨を決定する見通しです。

課題は飛行機の輸送力の確保

FAA=アメリカ連邦航空局は、アメリカ各地の空港に対しワクチンの輸送への協力を要請しています。

FAAは11日に出した通達で各地の空港の管理者に対し、ワクチンの迅速な輸送を可能にするため、航空機の発着に遅れが出ないように滑走路の除雪を行うための人員や設備を余分に準備することや、ワクチンを搭載した飛行機から荷物を運ぶための車両を優先して配分することなどを求めています。

また、アメリカメディアは、ワクチンを搭載した航空機は発着にあたっても優先される見通しだと報じています。

一方、ワクチンの輸送にあたっては国際的にも飛行機での輸送力の確保が課題となっています。

IATA=国際航空運送協会によりますと、世界人口の78億人に1回分のワクチンを提供する場合、その量はボーイング747型の貨物機8000機の積載量に相当するということです。

アメリカ・ユナイテッド航空の貨物部門の責任者ヤン・クレムス氏はNHKのインタビューに対し「ワクチンの輸送は航空貨物業界にとってこれまでに最も大きな出来事だ」と話しています。

そのうえで「ワクチンそのものの輸送はふだんから行っているが、これだけの規模の輸送を実現するには、航空貨物会社だけでなく、出荷する製薬会社や陸上での保管や輸送を行う企業などのコミュニケーションと協力が不可欠だ」と述べています。

ニューヨークでは喜びの声

FDAがファイザーなどの新型コロナウイルスワクチンの緊急使用を許可したことについて、アメリカ ニューヨークでは喜びの声が聞かれました。

このうち、67歳の男性は「すぐにでも接種したいです。ワクチンは日常を取り戻すために必要なものだと思います。この日を待っていました」と話していました。

別の36歳の男性は「すばらしいニュースです。早くワクチンが十分に供給されて、誰もが接種できるようになってほしいです」と話していました。

一方で、50歳の女性は「ワクチンはこれまでになかったものなので、接種には不安があります。少し時間をおいて体への影響や問題がないかを確認できてから、接種するかどうか考えたいです」と話していました。