北海道 奥尻島 新型コロナ 島民50人に1人の割合で感染

新型コロナウイルスの感染が拡大している北海道の奥尻島では、これまでに53人の感染が確認されています。およそ2500人が暮らす島で、50人に1人の割合で感染が広がっている状況に、奥尻町は、島民に不要不急の外出を控えるよう要請するなど、危機感を強めています。

北海道によりますと、奥尻島では、飲食店や航空自衛隊の基地でクラスター=感染者の集団が発生するなどし、6日までに53人の感染が確認されました。

島ではおよそ2500人が暮らし、50人に1人の割合で感染が広がっている状況となり、奧尻町は今月3日から16日までを集中対策期間として、島民に不要不急の外出を控えるよう要請するなど危機感を強めています。

また、島内に3校ある小中学校のうち2校で児童や生徒全員にPCR検査を行うなど対策を強化しています。

奧尻島で民宿を営む菊地里子さんは「感染が拡大してから出歩く人が減りましたが、外出自粛の要請がされてから、さらに減ったと感じます。職場や学校で感染したり、家庭内感染が起こったりするリスクがあり、怖いです」と話しています。

江差町の病院 奥尻島の患者増で受け入れ限界

奥尻島で感染した患者を受け入れている江差町の道立江差病院では、島の感染者の増加で受け入れが限界に近づいているということです。

このため一部の患者は函館市などに搬送されているということで、島の感染拡大が北海道南部の医療全体にも影響を及ぼしています。

奥尻島の感染者のうち軽症や中等症の患者は、入院する医療機関などを保健所から事前に指定されますが、多くは江差町の道立江差病院に入院するということです。

道立江差病院は感染の拡大を受けて1つの病棟を感染者の専用にしましたが、病院によりますと一時病床が満床近くになるなど、島での感染拡大に伴って受け入れが限界に近づいているということです。

このため保健所では、島で感染した患者について北海道南部の別の医療機関や函館市に11月に開設された宿泊療養施設に入るように調整しているということです。

道立江差病院は「病院の医療従事者だけでは対応が限界に近づいているため、保健所などには今の状況の中で対応できる人数を日々伝えている。今後感染が拡大し、これ以上の患者を受け入れざるをえない場合は、外来診療を中止することも検討しなければならない」と話しています。

函館市医師会長 感染拡大に危機感

奥尻島の感染拡大で患者が函館市などの医療機関にも搬送されていることについて、函館市医師会の本間哲会長は、北海道南部ではまだ医療機関の病床がひっ迫している状況ではないとしながらも、今後の感染拡大に危機感を抱いています。

北海道南部では現在、新型コロナウイルスに感染した患者は5つの医療機関で受け入れていて、このうち重症者は市立函館病院で、軽症や中等症の患者は道立江差病院などで受け入れているほか、函館市には宿泊療養施設が開設されています。

本間会長は「奥尻島を除くと北海道南部の全体で感染者はそれほど増加しておらず、宿泊療養施設もあり、病床がひっ迫している状況ではない」と話しています。

一方で、「もし函館市でクラスターが発生するなどして感染者が急激に増加すると、宿泊療養施設もいっぱいになり、パニックになる可能性は出てくる」と指摘しています。

そのうえで「今後の感染拡大に備えて、感染した患者を受け入れている5つの病院の負担を軽減するため、新型コロナ以外の重症患者をほかの医療機関に転院させるなどして、医療体制を整える必要がある」と話しています。