医療体制各地でひっ迫 危機感高まる “ギリギリの状態”

新型コロナウイルスをめぐっては、感染者とともに重症者が増加を続けています。
このため医療体制がひっ迫し、新型コロナの患者への対応や通常の医療に影響が出ています。

大阪府は、新型コロナウイルスの重症患者が急増し、医療体制がひっ迫しているとして独自に設けた「大阪モデル」で「非常事態」を示す「赤信号」を初めて点灯させるとともに、府民に対し、4日から今月15日までの期間、できるかぎり不要不急の外出を控えるよう呼びかけることを決めました。

大阪「病床運用率」82.9%

大阪府のすぐに患者を受け入れられる病床数と、それがどれだけ埋まっているかを示す「病床運用率」です。

3日時点で重症患者用の病床は、実際に運用されている病床が164床、患者が136人で、「病床運用率」は82.9%と、実に重症患者に使うことのできるベッドの8割以上が埋まっていることになります。

さらに、看護師の不足も深刻化しています。
新型コロナの患者に対応する看護師を確保するため、がん患者などを扱う一部の専門病棟を一時閉鎖する病院が出ているほか、看護師の不足で新型コロナ患者に対応するベッドを稼働できない病院も出てきています。

このため大阪府は全国知事会などに対して看護師の派遣を要請しています。

各地でひっ迫 

医療体制のひっ迫は大阪だけでなく各地で起きています。
新型コロナの重症患者用の病床が不足することが懸念されているうえ、緊急以外の手術を延期するなど通常の医療に影響が出る厳しい状況となっています。

茨城 水戸市の病院「患者一人一人にたくさんの時間と手間必要」

新型コロナウイルスの患者に対応するベッドの使用率が2日現在で30%の茨城県。

水戸市にある水戸済生会総合病院では、取材当時、重症と中等症の患者、合わせて3人の治療にあたっていました。

これまで、17人の患者の治療にあたってきたこの病院では、専用の病棟を作り、新型コロナに対応しています。

患者を受け入れる際には、廊下などを専用の動線にして、一般診療の患者が入らないようにしています。

コロナ対策チームとして、医師や看護師などおよそ35人が集められ何度もミーティングを重ねながら、より安全性の高い治療法などを日々模索していますが、現場の人手は、ぎりぎりの状態だといいます。

病院で治療にあたっている柏村浩医師は「お一人お一人にたくさんの時間と作業の手間が圧倒的にかかる。当院は3次救急を受け入れたり、周産期医療があったり、透析治療をやったりしていますが、これ以上増えると一般診療・救急も制限しないと人が回らないことになり大変だと思います」と話しています。

神奈川県は「緊急性低い手術延期しICU確保」緊急要請

新型コロナウイルスの入院患者が急増し、特に重症の患者が入る集中治療室がひっ迫していることから、神奈川県は、県内で患者を受け入れている医療機関に対し、緊急性が低い手術を延期するなどして、集中治療室の数を確保して欲しいと緊急の要請を行いました。

神奈川県は先月14日に、すぐに患者を受け入れられる県内の病床の数を1100床にまで増やすよう医療機関に要請しましたが、半月以上たった今も770床あまりにとどまっています。このうち集中治療室など重症患者用の病床は88床で、使用率は、60%近くに上っています。

2日、県医療危機対策統括官をつとめる阿南英明医師は、県内で患者を受け入れているおよそ100の医療機関の担当者とリモートの会議を開きました。

この中で阿南医師は、「今の状況が続けば、重症患者の病床が不足するおそれがある」として医師の判断で緊急性が低い手術を延期するなどして、コロナ対策に使える集中治療室を確保して欲しいと要請しました。

神奈川県では、来週から、症状が軽いコロナ患者の入院を絞り込む新たな基準の運用も始めることにしていて、阿南医師は、「通常の医療に影響が出ることは避けたかったが、これからコロナの患者がさらに増える可能性も考え、重症患者用の病床が不足する事態を回避するため、協力をお願いしたい」と話していました。

急速に感染広がる旭川 「緊急事態宣言時よりもひっ迫」

北海道旭川市では、基幹病院の集中治療室がひっ迫し、新たな重症患者の受け入れが難しくなっています。

旭川市では、22床の集中治療室を備えた基幹病院の一つ、旭川厚生病院で大規模なクラスターが発生し、原則、すべての患者の受け入れを休止しているほか、市立旭川病院でも新型コロナの患者に対応する人員を確保するため2床減らしています。

この結果、市内で確保できている集中治療室は、旭川医科大学病院など3つの基幹病院であわせて20床と従来の半分以下になっていて、いずれの病院もすでにひっ迫し、新たな重症患者の受け入れが難しい状態だということです。

旭川医科大学病院などでは、緊急の場合は臨時の集中治療室を設けることも可能だとしていますが、数に限りがあるため、緊急以外の手術を延期したり、遠く離れた市外の病院に患者を受け入れてもらい手術を依頼したりするギリギリの対応を迫られています。

旭川医科大学病院の古川博之病院長は、「ことし4月の緊急事態宣言の時よりも医療がひっ迫した状態で、感染が今以上に広がると、助けられる命も助けられなくなる」と危機感をあらわにしています。

専門家「医療崩壊避けられるか今月から来月にかけ正念場」

感染者の急増に伴って、新型コロナウイルスによる死者も増える傾向にあります。

感染症の治療に詳しい愛知医科大学の森島恒雄客員教授は、「ウイルス自体は変わっていないとみられ、感染拡大に伴って感染者数自体が多くなってきていることや高齢者が占める割合が増えていることが背景にあると考えられる。今後も感染者が増え続ければ死者の数も増えていくと思われる。亡くなる人の割合、『致命率』を悪化させないために、感染拡大を防いで、医療崩壊の事態を避けることができるかどうか、今月から来月にかけてが正念場だと思う」と話しています。