東京都 新型コロナ 「通常医療との両立 困難生じ始めている」

東京都内の新型コロナウイルスの感染状況などを分析・評価する「モニタリング会議」が開かれ、感染状況は最も高い警戒レベルを、医療提供体制は上から2番目のレベルを、それぞれ維持しました。専門家は「通常医療との両立が困難な状況が生じ始めている」と述べ、通常医療の継続のためには、新規陽性者と重症患者の増加を防ぐことが最も重要だと指摘しました。

会議では、2日までの7日間平均で、都内で新たな感染の確認がおよそ443人となり、1週間前のおよそ400人から、さらに増加したと報告されました。

専門家は「重症化リスクが高い高齢者の感染が増加している。感染経路が多岐にわたり、日常生活のなかで感染するリスクが高まっており、極めて深刻な状況になる前に、感染拡大防止策を早急に講じる必要がある」と指摘しました。

そして、先週に続いて、感染状況を「感染が拡大していると思われる」という最も高い警戒レベルにしました。

一方、医療提供体制は、「体制強化が必要であると思われる」という上から2番目の警戒レベルを維持しました。

会議では、専門家から、今週、入院患者数が1600人を超える水準となり、通常医療を行っている病床を新型コロナウイルス患者用に転用しているという説明がありました。

専門家は「新型コロナウイルス患者のための医療と通常医療との両立が困難な状況が生じ始めており、今後、医療機関は、さらに予定手術などを制限せざるをえなくなる」と述べ、通常医療の継続のためには、新規陽性者と重症患者の増加を防ぐことが最も重要だと指摘しました。

小池知事「感染対策を短期集中で」

東京都の小池知事はモニタリング会議のあと「1番目に死亡者を出さないこと。2番目に重症者を出さないこと。3番目に医療提供体制の崩壊を防ぐ。この3つの柱で都民を守るために、感染対策を短期集中でやっていきたい」と述べました。

そのうえで、重症化リスクの高い高齢者への呼びかけとして「高齢者の方は我慢をして、かなり症状が重くなってから病院にかかるケースが増えている。重症化して長引くのは高齢者なので、我慢せずにちょっとおかしいなと思ったら、かかりつけ医やコールセンターにちゅうちょせず相談し、必要な治療を受けていただきたい」と述べました。

専門家「いろんな意見 迷いあった」

モニタリング会議のあと、東京都医師会の猪口正孝副会長は医療提供体制について、上から2番目の警戒レベルを維持したことについて「専門家の議論ではいろんな意見が出て、一人一人が非常に迷ったところもあった。重症患者の入院に時間がかかることなどがあり、いちばん上の警戒レベルもあるのではないかという話は出た」と明らかにしました。

そのうえで「今、重症患者用のベッドを増やそうとしている。その策がきちんと功を奏せば、今のところひっ迫することにはならないだろう。打つ手がなくなってきて、本当にひっ迫してきたら、いちばん上の警戒レベルになる。今はやることをやって、患者さんをしっかり受け入れていこうということだ」と述べました。

専門家の分析は

3日のモニタリング会議の中で示された、都内の感染状況と医療提供体制についての分析結果です。

感染状況

新たな感染の確認は、2日までの7日間の平均が443.3人で、前の週からおよそ44人増えました。

「増加比」は、およそ111%で引き続き100%を超えています。

専門家は「週当たり、およそ3000人で、非常に高い水準で推移している」と指摘しています。

先月30日までの1週間で、確認された2830人の新規陽性者の年代別の割合をみると
▽20代が最も多く24.8%
▽30代が17.7%
▽40代が16.2%
▽50代が13.2%
▽60代が8.2%
▽70代が6.6%
▽10代が5.6%
▽80代が4.1%
▽10歳未満が2.5%
▽90代以上が1.1%でした。

65歳以上の高齢者は4週連続で増加していて、その割合は今週は15.8%で、前の週より2.8ポイント増えました。

患者数でみても390人から446人と増加しています。

また、7日間平均も72人と、先週からおよそ3倍に増加しています。

専門家は「重症化リスクの高い高齢者などが家庭内で感染することを防ぐためには、家族が家庭の外で感染しないことが最も重要だ。軽症や無症状であっても感染リスクがあることに留意する必要がある」と指摘しました。

このほか、この1週間で確認された新規陽性者のうち20.1%が無症状でした。

専門家は「無症状や症状の乏しい感染者の行動範囲が広がっている。集中的な検査の体制強化が求められる」と指摘しました。

一方、感染経路がわかっている人のうち、家庭内での感染は46.2%で、感染経路別では18週連続で最も多くなりました。

また、年代別にみると80代以上を除く、すべての年代で家庭内感染が最も多くなりました。

このほか
▽施設内は16.7%
▽職場内は12.9%
▽会食が6.8%
▽夜間営業する接待を伴う飲食店は1.7%でした。

専門家は「日常生活の中で感染するリスクが高まっていることが分かる。道ですれ違ってうつるのではなくて、要するに感染経路が多様化しているということだ」と分析しています。

また、「感染の広がりを反映する指標」としている感染経路の分からない人は7日間平均で249.3人で、前の週よりおよそ19人増えました。

増加比は100%を超える高い水準で推移していて、専門家は「今後の動向に厳重に警戒するとともに、濃厚接触者の疫学調査の拡充に向けて、保健所を支援する必要がある。通常の医療が圧迫される深刻な状況を目前にしており、感染拡大防止策を早急に講じる必要がある」と指摘しました。

都は、都外に住む人がPCR検査のため、だ液を都内の医療機関に送り、その後、都内の保健所に陽性の届けが出たケースを除いて、分析・評価していますが、今週はこうしたケースが98人いました。

医療提供体制

検査の「陽性率」は、2日時点では6.5%で、前回の6.6%からほぼ横ばいでした。

入院患者は、2日時点で1629人で、1週間前・先月25日の時点より68人増えています。

専門家は「病床を確保するために医療機関は、通常の医療のための病床を新型コロナウイルスの患者用に転用している。新たな感染の確認の増加に伴って、通常の医療との両立に困難な状況が生じ始めている」と指摘しました。

さらに「緊急性の高い重症患者のほか、透析患者などの受け入れ先の調整が困難な事例が見られる。調整が難しくなってきているということが、通常の医療と、医療機関自体がかなり圧迫している状況を示している」と指摘しました。

また、都の基準で集計した重症患者は2日時点で59人で、前回・1週間前より5人増えました。

59人中49人は、今週、新たに人工呼吸器を装着した患者で、先週より17人増えました。

59人を年代別にみると
▽40代が2人
▽50代が4人
▽60代が12人
▽70代が26人
▽80代が15人

性別では
▽男性が45人
▽女性は14人でした。

専門家は「新型コロナウイルスの診療体制の確保には、通常医療を行っている医師や看護師を転用する必要がある。医療機関は救急の受け入れや手術などを、さらに制限せざるをえなくなる。通常医療の継続のためには、新規の陽性者と重症患者の増加を防ぐことが最も大事だ」として、強い危機感を示しました。

先月30日までの1週間で都に報告された亡くなった人は10人でした。

10人のうち7人が70代以上でした。