コロナ感染拡大 忘年会どうする? オンラインでこんな工夫も…

各地で新型コロナウイルスの感染者が過去最多となる中、多くの企業が忘年会や新年会の開催を見送っています。こうした中、ことしの忘年会をどうするか、さまざまな模索をしている企業を取材しました。

9割の企業 忘年会・新年会“開催しない”

東京商工リサーチが今月9日から16日にかけて、忘年会と新年会についてのアンケート調査をインターネットで行ったところ、忘年会と新年会を「開催しない予定」と答えた企業は8840社で全体の87.8%に上りました。

資本金が1億円以上の大企業では92.9%で中小企業でも86.9%となっています。

“忘年会は活気の源…”社長 苦渋の決断

長野市で印刷や製本を手がける会社は、忘年会や新年会は社員の結束を高めるためにも欠かせない行事としていて、毎年、社員も企画に加わり、盛大に開催してきました。

長野市の工場の従業員およそ60人のうち、ほぼ7割が女性で、夜の外出が難しい従業員も多いことから、会場を社内にしたり、参加が難しい人には料理を持ち帰ってもらったりするなど、社員全員が楽しめることを大切にしてきたといいます。

こうした忘年会を開く背景には、一時、社内の雰囲気がギクシャクしていたことにあります。

印刷業は、セクションごとに作業が分かれているため、部をまたいだ交流の機会が少ないと感じた松澤義晃社長(46)は、10年ほど前から忘年会をはじめとするイベントに力を入れるようになりました。

マグロの解体ショーやボーリング大会なども開く中、しだいに社内に活気が出て、社員も「コミュニケーションが円滑になった」と感じています。

松澤社長によりますと、誤植などのミスは10年前からおよそ9割減ったということで、業務にもプラスにつながっているとしています。

ことしの忘年会をどうするか、悩み続けていた松澤社長は、例年、忘年会をとりまとめている社員と話し合いをしました。

社員から、感染対策を徹底したうえで開催を希望する声と、開催をためらう声の両方があることを伝えられると、松澤社長は、「感染が一時的におさまった時には、やれるかな、やりたいなと強く思っていたけれど、今の状況だと皆やお客さんの安全を優先しないといけない」と、忘年会の中止を決断しました。

中止を伝える紙が掲示板に貼り出されると社員が集まり、状況を理解しつつも残念がる姿も見られました。

毎年参加してきたという女性社員は、「1年の楽しみでしたから残念ですけど、仕方ないですね」と話していました。

「松澤印刷」の松澤義晃社長は、「仕事上のコミュニケーションとは違う貴重な場として、忘年会を大切にしてきました。ことしはグッと我慢し、コロナが収まった時に2年分盛大にやりたい」と話していました。

独自システムで社員を複数グループに「マッチング」

一方、リモートワークやオンライン飲み会が浸透している企業では、社員どうしが直接顔を合わせる機会が大幅に減っています。

オンラインであっても、社員のつながりを確保できる忘年会にできないか、模索している企業もあります。

インターネットのクラウドを活用した会計ソフトなどを事業所に提供している東京・品川区のベンチャー企業は、忘年会を重要な催しと位置づけてきました。

都内のイベントスペースなどを貸し切って行われる忘年会には全国の社員およそ500人が集まり、すぐれた業績のあった社員を表彰するほか、上司とも気兼ねなく話せる場にもなることから、社員のコミュニケーションを活性化させる役割があったといいます。

一方、新型コロナウイルスの影響が広がり始めたことし3月からは、原則としてリモートワークになり、社員どうしが直接顔を合わせる機会は大幅に減りました。

業務の効率は良く、事業は円滑に進んでいるということですが、リモートワークをしている社員から社員どうしのコミュニケーションが業務を通じたものだけに限られ、このままでは、新しいつながりや、ふとしたアイデアで生まれる新規の事業ができなくなっていくのではないかという声も出てきたといいます。

「ただオンラインで飲むだけではつまらない」。

8月の段階で全社員に忘年会のアイデアを募り、オンラインによるコンテストを開きました。

▽eスポーツ大会や、▽参加者が同時に料理をする、といった案が出される中、最も多くの支持を集めたのが、「スパイダーネット」という案です。

この案では、「#お酒大好き」、「#スニーカー好き」、それに「#子育て」などあらかじめ用意されたことばの中から、趣味や家庭環境など、自分にあてはまる事柄をあらかじめ複数、選択してもらいます。

すると、独自に開発したシステムが、社員を複数のグループに「マッチング」させます。

画面上には仮想のテーブルやいすがあり、マッチングされたグループの社員どうしで、オンライン忘年会を開きます。

▽社員どうしの新たなつながりを生み出すことができる点や、▽オンライン飲み会で課題となっていた沈黙が生まれにくい、という点が高く評価されたということです。

社員を結んで行われたデモンストレーションでは「#地方移住」を題材に、好きな地域やリモートワークのあり方などについて会話が弾んでいました。

「freee(ふりー)」のコミュニケーション開発担当関口聡介さんは、「悩みや思いつきをふと話しかけ、社員で共有できることが非常に重要で、大きいイノベーションにつながっていくと思います。出会いや会話は大切にしていきたい」と話しています。

忘年会 参加少数

飲食店予約サイトを運営している「ぐるなび」は9月の末から10月のはじめにかけてインターネットの会員に忘年会についてアンケートを行い1464人から回答を得ました。

▽飲食店で開かれる職場・仕事関係の忘年会に参加するか、という質問に対しては「参加しない、または開催されない」と答えたのは全体の49.7%で、「参加する」と答えたのは4.6%、「開催されれば参加する」と答えたのは17.6%、「現時点ではわからない」と答えたのが28.2%でした。

一方、▽プライベートの忘年会については、「参加する」が10.2%、「開催されれば参加する」が25.8%と職場や仕事関係の忘年会に比べると多くなっています。

また、▽オンラインや誰かの自宅で開かれる忘年会に参加したいか、という質問に対し、「参加する」または「開催されれば参加する」と答えたのは、プライベートの忘年会ではあわせて32.1%、職場・仕事関係の忘年会ではあわせて17.5%でした。

さらに、「緊急事態宣言が解除された直後の6月ごろと比べ、外食したい気持ちに変化はあるか」という質問に対し、▽弱まっていると答えたのは14%だった一方▽強まっていると答えたのは45.8%と半数近くに上りました。▽変化はないと答えたのは40.2%でした。

年代別でみると、外食をしたい気持ちが強まっていると答えたのは、20代や30代の若い世代に、より多くみられたということです。