感染急拡大の札幌市 入院患者が増加 満床状態の病院も

新型コロナウイルスの感染が急速に拡大している札幌市。
入院患者が増加し、すでに満床の状態になっている病院が出てきていることがわかりました。
現場の医療関係者は、より多くの病院で患者を受け入れないと、助かる命も救えなくなると指摘しています。

札幌市中央区にある「斗南病院」は、市内におよそ20ある新型コロナウイルスの患者を受け入れている救急病院の1つで、現在は5つの病床で主に中等症や介護を必要とする患者の治療にあたっています。

病院の奥芝俊一院長は、「最近は、外来に来た患者が検査で陽性と分かり、そのまま入院というケースが続いている」と述べ、今月に入り、病床は常に満床の状態になっていると説明しました。

そのうえで、「症状が改善した患者を引き取ってくれる病院が少なく、病床をひっ迫させる一因になっている」と述べ、ベッドが空かず、新たな患者を受け入れられない事態が起きていることを明らかにしました。

奥芝院長によりますと、患者の中でも、介護を必要としたり基礎疾患があったりする人は、症状が改善して転院先を探しても、「治療にリスクが伴う」として、多くの病院に引き取りを断られるということです。

奥芝院長は、「救急病院が受け入れるだけでは限界がある。コロナに関わる医療をどう回すのか、根本から考え直さないといけないのではないか」と述べ、より多くの病院で患者を受け入れる態勢を早急に整えないと、助かる命も救えなくなると指摘しています。
札幌市に派遣されている国のクラスター対策班のメンバーで、国立感染症研究所の山岸拓也室長は「市が計画していたほどの病床をまだ確保できておらず、症状の重い人、特に介護が必要な人の入院が難しくなってきている」などと述べて、市全体でも病床が不足してきている現状を明らかにしています。

その要因として山岸室長は、新型コロナウイルスの重症患者を受け入れている地域の基幹病院などでも、職員や入院患者の感染が相次ぎ、事前の計画どおりに病床を確保できていないことを挙げています。

山岸室長は「1日に100人を超える患者が毎日出ているなか、入院の状況は改善していく方向に無い」と述べて、病床の不足は簡単には解消せず、すぐに入院できない患者は今後も出てくると予測しています。

そのうえで、症状が一定程度改善した患者を受け入れるいわゆる「後方病院」を確保していかないかぎり、重症や介護が必要な患者を受け入れる病床が無くなるおそれがあると指摘しています。