中国の判断で香港の民主派議員4人が失職 香港政府発表

中国の全人代=全国人民代表大会の常務委員会は香港の議会にあたる立法会の議員について、外国勢力に香港への介入を求めたり国家の安全に危害を加えたりした場合は直ちに資格を失うとする新たな判断を示しました。これを受けて香港政府は、民主派の議員4人について議員の資格を直ちに失効させたと発表しました。

中国国営の新華社通信は11日、北京で開かれた全人代の常務委員会で、香港の立法会の議員の資格について新たな決定を行ったと伝えました。

それによりますと、立法会の議員が香港の独立を主張したり外国勢力に香港への介入を求めたりしたほか、国家の安全に危害を加えた場合や香港の憲法にあたる香港基本法を支持しなかった場合は、直ちに議員の資格を失うとしています。

これを受けて香港政府は、ことし9月に行われる予定だった立法会議員選挙に立候補を届け出たものの当局に立候補を取り消された民主派議員4人の資格を直ちに失効させたと発表しました。

このあと4人はそろって記者会見し、このうち郭家麒氏は、「これで一国二制度はなくなった。議員ではなくなるが、われわれは絶対に諦めず、香港の自由と民主主義を守るためにたたかい続けたい」と述べました。

中国の習近平指導部は、6月末に香港での反政府的な動きを取り締まる「香港国家安全維持法」を成立させ、香港への統制を強めています。

今回の判断によって、立法会議員についても、中国共産党や政府に批判的な政治活動や言動が事実上封じ込められることになり、香港の高度な自治を認めた一国二制度の形骸化は一層鮮明になっています。

林鄭長官「愛国者主体の政治体制ができる」

中国の全人代=全国人民代表大会の常務委員会の決定を受けて、香港政府が、4人の民主派の議員の議員資格を失効させたことについて、香港政府トップの林鄭月娥行政長官が記者会見で経緯を説明しました。

この中で林鄭長官は、4人はことし9月に行われる予定だった立法会議員選挙で立候補を取り消されたとして、「選挙に参加する資格がない人が議員であることは理にかなわない」と述べて、香港政府から常務委員会に対し、対応を検討するよう要請したことを明らかにしました。

そのうえで、「ルールができたことで、これまでの法律と合わせて愛国者が主体となる政治体制ができる」と述べて、立法会議員に対して中国への忠誠心を求める姿勢を強調しました。

中国外務省 汪報道官「純粋に中国の内政」

中国外務省の汪文斌報道官は、11日の記者会見で「香港は中国の特別行政区であり、立法会議員の資格の問題は純粋に中国の内政だ。ほかの国がとやかく言ったり干渉したりする権利はない」と述べました。

香港の立法会 過去にも「議員資格無効」の例

香港の立法会では、過去にも中国の判断によって議員の資格が無効となった例があります。

2016年には議員に就任する際の宣誓を正確に行うことを求める基準が示され、「香港は中国ではない」と書かれた旗を広げるなどした合わせて6人が議員資格を失っています。
今回議席を失った4人は、いずれもことし9月に行われる予定だった立法会議員選挙で立候補を取り消されており、その際、選挙管理当局は4人について国家の安全に危害を加える行為を行ったなどと判断していました。

このため、来年9月に行われる見通しの選挙では4人とともに立候補を取り消された人たちも立候補できない可能性が高まりました。

また、議員選挙の延期にともなって先月から現職議員の任期を延長する形で行われている立法会では、民主派の議員の反対でたびたび議事が妨害されているなどとして親中派が不満を表してきただけに、中国政府としては今回の判断によって議会での反対意見を封じ込めるねらいがあると見られます。

香港 民主派議員団 決定に抗議「全員で議員を辞職」

香港政府が4人の民主派の立法会議員の資格を失効させたことを受けて、民主派の議員団が会見し、決定に抗議するため全員で議員を辞職すると発表しました。

北京で開かれた全人代=全国人民代表大会の常務委員会で、香港の立法会議員の資格について新たな基準が示されたことを受けて、香港政府は11日、民主派議員4人の議員資格を失効させたと発表しました。

これを受けて、失職した4人と民主派の議員団15人がそろって記者会見し、全員で議員を辞職すると明らかにしました。

会見で民主派最大政党、民主党の胡志偉代表は「すべての権力が行政長官に集中することになるうえ、行政長官は中国政府のただの操り人形だ。『一国二制度』が死んでしまったと言える」と述べて、今回の決定を強く非難しました。
民主派の議員団全員が議席を失うことで、立法会は民主派の議員団に所属していない2人以外はすべて親中派で占められることになり、チェック機能が大幅に失われることになります。

国際人権団体が声明

香港政府が民主派の立法会議員4人の資格を失効させたことについて、国際的な人権団体アムネスティ・インターナショナルは声明を発表し、「国家の安全を口実に資格を失効させたことは、香港をあらゆる手段で沈黙させる中国政府の政治活動の新たな事例だ」と指摘しました。
そのうえで、「中国政府を介した恣意的(しいてき)な決定によって強引に押し通すことは、法の支配の嘲笑だ」として、今回の決定を非難しました。
そして、今回の決定は民主派議員の弾圧を正当化するための政治的動機によるものだとしたうえで、資格が失効した人たちが異議申立てを行う場合は認めるべきだと訴えました。

官房長官「民主的、安定的な発展が重要」

加藤官房長官は、11日午後の記者会見で、「昨今の香港情勢については、重大な懸念を強めており、今回の状況も注視している。香港は、わが国にとって、緊密な経済関係と人的交流を有する、極めて重要なパートナーであり一国二制度のもとに、自由で開かれた体制が維持され、民主的、安定的に発展していくことが重要であるというのが、政府の一貫した立場だ。こうした考え方は、中国側にも、さまざまな機会に伝達しており、関係国とも連携しつつ、適切に対応していきたい」と述べました。