妊婦の「新型出生前検査」 十分なカウンセリングなく実施も

妊婦の「新型出生前検査」 十分なカウンセリングなく実施も
妊婦の血液を分析して赤ちゃんの染色体に異常があるかを調べる「新型出生前検査」では、学会の認定を受けない医療機関、「非認定施設」で、妊婦に十分なカウンセリングが行われずに検査が実施されるケースが相次いでいます。
日本産科婦人科学会が妊産婦向けのスマホアプリの利用者を対象にアンケート調査を実施した結果、51%が「非認定施設」で検査を受けていたとみられることがわかりました。
厚生労働省は検査の在り方などについて検討を進めています。

「新型出生前検査」とは

「新型出生前検査」は妊婦の血液を分析して胎児にダウン症などの3つの染色体異常があるか判定する検査で、専門的なカウンセリングを妊婦に行うなど、一定の条件を満たした医療機関が日本医学会の認定を受けて実施しています。

十分なカウンセリングなく検査実施も

しかし、厚生労働省の調査では認定を受けずに検査を行う医療機関、「非認定施設」が少なくとも54か所確認され、妊婦に十分なカウンセリングが行われずに検査が実施されるケースが相次いでいます。

半数が「非認定施設」で検査~日本産科婦人科学会の調査~

日本産科婦人科学会は妊産婦向けの情報発信をしている、スマートフォンのアプリの利用者を対象に、先月から今月にかけて新型出生前検査に関するアンケート調査を実施し、寄せられた891人の回答を分析しました。

その結果、半数を上回る454人、51%が、学会の認定を受けていない「非認定施設」で検査を受けていたとみられることがわかりました。とくに「認定施設」がない自治体ではそうした傾向が大きいということです。34歳以下でみるとおよそ70%が「非認定施設」で検査を受けていました。
また、検査結果の説明方法についてたずねたところ、「陽性」または「判定保留」となった場合、▽「認定施設」では口頭で説明されていましたが、▽「非認定施設」では半数が郵送やFAX、メールなどで説明されていて、相談できる施設を紹介するなど、その後の対応が、何もなかったケースもあったということです。
一方、妊婦が「非認定施設」を選んだ理由として、
▽受診当日に検査を受けられるとか、
▽精度などの観点から「認定施設」では検査していない、3つの染色体以外の検査ができることのほか、
▽検査費用の安さや、
▽インターネット上の口コミ
などがあげられました。

「非認定施設」の実態は~厚生労働省の調査~

妊婦の血液を分析して赤ちゃんの染色体に異常があるかを調べる「新型出生前検査」をめぐっては学会の認定を受けずに検査を行う医療機関=「非認定施設」が増えているとされています。

厚生労働省はその実態調査を行い、7月に開かれた専門家会議で調査結果を報告しました。

それによりますと「非認定施設」は54か所確認され、美容外科など美容系の診療科が多かったということです。

ところが、「非認定施設」で行われた検査の件数については、ほとんどの施設から調査への協力が得られず、判明しませんでした。

アンケート調査に協力した「非認定施設」は9か所にとどまり、このうち専門的なカウンセリングを▽実施していないところが4か所、▽希望者にしか実施していないところが1か所ありました。
事前に十分なカウンセリングを行っている「認定施設」では、検査を辞退する妊婦が一定数いますが、これらの施設では辞退する妊婦はほとんどいなかったということです。
さらに、検査結果については、「認定施設」のほとんどが対面で伝えていたのに対し、「非認定施設」では、郵送や電子メール、電話も利用していて、結果が与える影響に比べると不十分な体制だったということです。

厚労省 「非認定施設」の対策検討で初会合

こうした中、厚生労働省は専門家で作る委員会の初めての会合を28日開き、対策について検討を進めることを確認しました。

会合では日本産科婦人科学会が先月から今月にかけて、妊婦およそ890人にインターネットで調査を行った結果、「非認定施設」で検査を受けた人のうち、75%が▽検査の説明がなかったり、▽説明の時間が15分に満たなかったと回答したことが報告されました。

調査では、検査の精度などの観点から「認定施設」では行われていない▽35歳未満の妊婦の検査や、▽3つの染色体以外の検査が「非認定施設」で実施されていることもわかったということです。

委員会では「新型出生前検査」の在り方や、妊婦への支援、福祉施策との連携などについて検討を進め、来年2月をめどに報告書をまとめることにしています。

出生前検査 これまでの経緯

新型出生前検査は、妊婦の血液を分析して胎児にダウン症など3つの染色体異常があるかを判定する検査で、国内では2013年から始まりました。

この検査は従来の同様の検査に比べて精度が高いとされ、仮に異常が見つかった場合、中絶を決断する妊婦も出てくることから、実施には十分なサポート体制が必要だとされてきました。

このため、日本産科婦人科学会では指針を作り、カウンセリング体制が十分に整っていることなどの要件を満たしたと日本医学会が認定した医療機関に限って実施することとし、これまでに全国で100あまりの医療機関が認定されています。

ただ、認定を受けた医療機関がまだ少ないことや法的な規制が無いことなどから認定を受けずに検査を実施する診療所なども多く、ことし7月の時点で、こうした医療機関は少なくとも135にのぼるという調査結果もあります。

このため日本産科婦人科学会では認可施設を増やす必要があるとして、ことし6月、条件を緩和してより小規模な医療機関でも検査ができるよう指針の改定を承認しました。

ただ、学会では、新たな指針を実際に運用するかどうかは、厚生労働省と協議するとしていてこれまでのところ運用は始まっていません。

新型出生前検査をめぐっては、生命倫理の専門家などから妊婦への支援体制について十分確保できているのかを懸念する声も出ていて、国が新型出生前検査に対する何らかの見解を示すべきだという声も上がっていました。

出生前検査 国の見解は

胎児に病気がないか調べる出生前の検査は、一部の医療技術が障害のある子どもの生きる権利を否定することにつながる懸念があると指摘されています。

このうち、血液中の成分で調べる「母体血清マーカー検査」について国は、1999年に見解をまとめました。

この中では妊婦や胎児への負担が少なく、簡単に検査ができることから、病気の発見を目的に不特定多数の妊婦を対象に広く行われてしまう可能性があるなどの問題点を指摘しています。

そのうえで専門的なカウンセリングの体制が十分でないことを踏まえ、医師から妊婦に、この検査についての情報を「積極的に知らせる必要はない」としています。

また、検査を実施する場合には、▼検査前に▽障害は子どもの個性のひとつの側面でしかなく、さまざまな成長や発達をすること、▽検査結果を確定させるためには流産の可能性もある「羊水検査」をしなければならないことなどについて、個別に口頭で説明した上で、妊婦が検査を受けるかどうか選べるようにすること。

そして、▼検査の後に衝撃を受けたり、不安を抱いたりすることがあるため、妊婦や家族に対する十分な支援を行うべきだとしています。

厚生労働省によりますとそれ以降、国は、出生前の検査について新たな見解を示しておらず、学会の指針などを守るよう、関係機関に要請するなどの対応をとっているということです。