米 黒人男性 警察官に撃たれ死亡 警察に抗議活動続き州兵招集

アメリカ東部ペンシルベニア州で26日、黒人男性が警察官に銃で撃たれて死亡し、警察による過剰対応だとして抗議活動が続いています。
一方、現地メディアは過激化した一部が店舗から商品を略奪するなどし、州兵が招集される事態となっていると報じていて、緊張が高まっています。

地元の警察などによりますと、ペンシルベニア州フィラデルフィアで、26日午後、黒人男性のウォルター・ウォレス・ジュニアさんが警察官に銃で撃たれて死亡しました。

現地のメディアによりますと、地元警察は現場に駆けつけた警察官がウォレスさんに持っていたナイフを捨てるよう警告したにもかかわらず、近づいてきたため発砲したと説明しているということです。

フィラデルフィアの司法当局が当時の状況を調べています。

インターネット上には、発砲の状況を写したとされる映像が拡散し、現地では、26日夜から警察による過剰な対応だとして抗議活動が続いています。

27日夜も数百人が集まって抗議活動が行われていて、現地のメディアは過激化した一部が、車に火をつけたほか店舗から商品を略奪したと報じていて、州兵が招集されるなど緊張が高まっています。

これに対し、ウォレスさんの叔父は、現地のメディアに「街が壊されるのを見たくない。何の解決にもならない」と述べ、破壊行為などをやめるよう訴えています。

ペンシルベニア州は、大統領選挙の結果を左右する激戦州の1つで、投票日まで1週間を切る中で、選挙にも影響する可能性があります。

インスタグラムに動画

インスタグラムには、ウォレスさんが警察官に撃たれた様子を撮影したとされる動画が投稿されています。

動画には住宅街でウォレスさんとみられる男性が、複数の警察官に銃を向けられて制止を求められている様子が写っています。

男性は刃物のようなものを持って歩いていて、警察官に向かって腕を振り上げた直後に銃声が複数回、鳴り響きました。

そして、男性が道路上に倒れ込んだ様子も確認できます。

また、現場に居合わせた人たちが、警察官に詰め寄って抗議している様子なども写っています。

バイデン氏とハリス氏 連名で哀悼の意示す声明

ペンシルベニア州で、黒人男性が警察官に銃で撃たれて死亡したことを受けて、民主党のバイデン氏とハリス氏は27日、哀悼の意を示す連名の声明を発表しました。

声明の中では、亡くなった黒人男性のウォルター・ウォレス・ジュニアさんの家族や事件に悲しむすべての人に対して「胸が張り裂けるような思いだ。すでに多くのトラウマを抱えて耐えてきた地域のコミュニティに、この事件はさらなる苦痛をもたらした。ウォレスさんの命はほかの命と同じように大切だ」とつづり、哀悼の意を示しました。

そのうえで、一部の過激化した抗議活動による暴動や略奪については「警察官への攻撃や、すでにパンデミックで苦しんでいる小さな商店を破壊することは、正義をもたらすことにはつながらない。略奪は抗議ではなく犯罪だ」と批判し、「国家として、われわれは警察改革と地域の平和と安全を維持する2つの課題を解決できる十分な強さを持っている。それが私たちアメリカの使命だ。それが本当の正義を実現する方法だ」と呼びかけました。

そして、トランプ大統領については「私たちの社会の分裂の炎をあおっているだけだ。彼は人々を1つにするという本当の仕事をすることができない。私たちはやれる」と批判しました。

死亡した男性の両親「暴力や略奪行為 許さない」

黒人男性が警察官に銃で撃たれて死亡した事件をめぐって男性の両親は27日、メディアの取材に応じ、街なかで広がっている暴力や略奪などの行為をやめるよう呼びかけました。

この中で、亡くなったウォルター・ウォレス・ジュニアさんの父親は「街を引き裂く暴力や商店からの略奪行為、この混乱を許さない。私の息子や家族を救うために正義が行われることを望む」と呼びかけました。

そのうえで「よい警察官もいれば悪い警察官もいる。責めるわけではないが、彼らがしたことについて、誰かが責任を負うべきだ」と述べ、適切な対応を求めました。

また母親は「息子を撃たないでと何度も呼びかけましたが、警察は息子を撃ちました。そしてそれは完全に間違っていました」と話していました。

専門家「投票先未定の有権者に影響も」

アメリカの社会問題に詳しい慶應義塾大学の渡辺靖教授は、大統領選挙の投票日が迫る中、起きた今回の出来事について「ことしの5月に黒人のジョージ・フロイドさんが白人の警察官に首を押さえつけられて死亡した事件があって以降も、同じようなことが繰り返し起きている。アメリカの有権者にとっては既視感があり、今回のような人種や治安に関する問題に対しては明確に態度を決めている人がほとんどだと思うので、トランプ氏とバイデン氏、どちらかの候補を大きく利することにはならないと思う」と述べました。

一方で、渡辺教授は現時点で投票先を決めていない有権者の割合は、5%前後にすぎないとしながらも「両候補がどう発言し対応していくのかが、態度を決めていない有権者の最後の一押しになる可能性もある」と指摘しました。

そのうえで「抗議運動が穏健なままでいくかどうかが今後のポイントだ。一部が過激化して暴力や略奪が目立つようになれば、特に投票先をまだ決めていない有権者にとっては、警察への支援や治安対策の強化を訴えているトランプ大統領のメッセージが心に響く人がいると思うので、トランプ大統領に有利な状況になるのではないか」と分析しました。