“インク詰め直し商品を排除”リサイクル会社がキヤノンを提訴

大阪のリサイクル会社が、大手電子機器メーカーのキヤノンに対し、「プリンターのインクカートリッジを再利用できないような仕様に変更したのは、リサイクル品を市場から排除するためのもので不当だ」と主張して損害賠償などを求める訴えを大阪地方裁判所に起こしました。

訴えを起こしたのは大阪のリサイクル会社「エコリカ」です。

この会社は、使用済みになった純正品の家庭用プリンターのインクカートリッジを回収してインクを詰め直し、リサイクル品として純正品より2割から3割ほど安い価格で販売しています。

しかし、3年前にキヤノンが発売したカートリッジは、インクの残量を記録するICチップの仕様が変更されたため、再利用できなくなったということです。

これについて「リサイクル品を市場から排除するための仕様変更で、独占禁止法に違反する行為だ」と主張して、キヤノンに3000万円の損害賠償などを求めています。

エコリカの宗廣宗三社長は会見を開き、「ユーザーの選択肢を奪う行為で不当だ。品質の良い純正品と環境にやさしく値段も安いリサイクル品のどちらを選ぶかをユーザーが決められるようにすべきだ」と話しています。

一方、キヤノンは「訴状が届いていないのでコメントできない。届き次第、精査したい」と話しています。

ICチップに複雑な暗号 リサイクル品は認識されず

エコリカは、家電量販店などで回収したメーカー純正の使用済みインクカートリッジに自社製のインクを詰め直したリサイクル品を販売しています。

純正品のカートリッジには、インクの残量を記録するICチップがついているため、再利用するにはインクの詰め替えだけでなくチップのデータも初期化する必要があります。

しかし、キヤノンが3年前に発売したカートリッジは、ICチップのデータをより複雑に暗号化する仕様変更が行われていて、技術的にデータの初期化が不可能になったということです。

カートリッジの形状は変わっていないため、従来のリサイクル品をプリンターにセットすることはできますが、正常に認識されず使えないということです。

この仕様変更についてエコリカは、市場からリサイクル品を排除するのが目的で不当な行為だと主張してキヤノンに対応を求めましたが応じてもらえず、商品の製造ができない状況が続いているということです。

販売店では リサイクル品を選ぶ消費者も

エコリカによりますと、先月の時点でインクカートリッジの家電量販店など店頭販売のシェアは、大手メーカーの純正品が85%、リサイクル品と互換品が15%だということです。

純正品とリサイクル品の両方を販売している大阪・住吉区の家電量販店では、どちらを選ぶか用途などによって決める客が多いということです。

店長の森下英則さんは「価格は純正品のほうがおよそ1.5倍しますが、リサイクル品よりも売れています。写真に使用する人は純正品を文書の印刷だけにしか使わない人はリサイクル品をそれぞれ購入していることが多いと思います」と話していました。

店を訪れた70代の男性は「仕事ではキレイに印刷したいし気分的に安心するので純正品を、趣味の俳句では安いのにこしたことはないのでリサイクル品というように両方使っています」と話していました。

一方、20代の女性は「リサイクル品では機械が壊れることもあると聞いたので、純正品を使っています。リサイクル品が安くていいかもしれませんが、純正品のメーカーからすれば怒っていると思います」と話していました。

専門家 「業界全体がじり貧になるのを防ぐことが重要」

パソコンの周辺機器の市場動向などに詳しい家電ジャーナリストの安蔵靖志さんに今回の提訴をどう見るか話を聞きました。

安蔵さんはキヤノンの動きについて「家庭用プリンターのメーカーは、本体を安い価格に抑える一方で、消耗品のインクカートリッジを多く売って利益を上げるビジネスモデルをとっている。今回の仕様変更はシェアをこれ以上失わず、利益を確保するためにリサイクル製品を排除することが目的とみられ、企業活動としては理にかなっている」と話しています。

一方、エコリカの提訴について「新商品を開発出来ないことは事業の継続にとって死活問題で、裁判を起こすのも理解できる」と話しています。

そのうえで、消費者に選択肢があることが業界全体のメリットになると指摘し、「スマートフォンの普及や、年賀状を出す人の減少などで紙の印刷という市場が縮小する中では、安心の純正品と安価のリサイクル品、双方が強みをしっかりアピールして業界全体がじり貧になるのを防ぐことが重要ではないか」と話しています。

過去の裁判でも争い

プリンターのインクカートリッジをめぐっては、純正品を販売するメーカーとリサイクル品を販売する会社との間で過去にも司法を舞台にした争いが起きています。

平成19年にはキヤノンとセイコーエプソンが、使用済みの純正品を加工して再利用できるようにしたリサイクル品はメーカーの特許権を侵害していると訴えた2件の裁判で、最高裁判所が、「メーカーの特許を使った製品を新たに作ったとみなせる場合は特許侵害にあたる」という判断を示しました。

そして1件はリサイクル品の廃棄や販売の禁止などを命じましたが、もう1件は特許侵害にはあたらないと判断して販売を認めました。

今回、提訴したエコリカによりますと、最高裁判決のあとメーカー側はインクの注入を難しくするなど再利用しにくいカートリッジを製造するようになったということですが、キヤノンが今回のカートリッジを発売するまでは、再利用が実質的に不可能になる商品はなかったということです。