「妊婦健診」で子宮頸がん発見 1年間で少なくとも234人

「妊婦健診」で子宮頸がん発見 1年間で少なくとも234人
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妊娠した女性が受ける「妊婦健診」で子宮頸がんが見つかった人が、2017年度の1年間でごく初期のものも含め、全国で少なくとも234人に上っていたことが、日本対がん協会などの調査で明らかになりました。治療のため、妊娠中絶を選択せざるをえない場合もあり、協会は「妊娠を希望する前に必ず検診を受けてほしい」と呼びかけています。
子宮頸がんは、ウイルス感染が主な原因で子宮の入り口付近にできる若い女性に多いがんで、国内では年間およそ2800人が死亡しています。

がん検診をすすめている公益財団法人、日本対がん協会などは妊婦健診で子宮頸がんが見つかった人数を調べるため、去年秋から全国1741の自治体を対象にアンケートを行い、38%にあたる664の自治体から検診結果についての回答を得ました。
これらの自治体では、2017年度の1年間に、42万7000人が妊婦健診の際に子宮頸がんの検診を受けていて、その後の精密検査の結果、ステージ1以降のがんが69人、治療の対象となるごく初期のがんが165人見つかっていたことが分かりました。

日本対がん協会によりますと、子宮頸がんは、早期に発見すれば治療できますが、妊娠中に進行した状態で見つかると、女性の命を守るために、妊娠中絶や子宮の摘出を選択せざるをえないケースも少なくないということです。

日本対がん協会は「実際はもっと多くの人でがんが見つかっていると考えられ、重い事実だと感じる。妊娠を希望する前に必ず子宮頸がん検診を受けてほしい」と呼びかけています。

子宮頸がんとは

子宮頸がんは子宮の入り口付近にできるがんで主に性交渉によって「ヒトパピローマウイルス」に感染することで発症します。

国立がん研究センターの統計によりますと、国内では年間およそ1万1000人が発症し、およそ2800人が死亡しています。

20代から30代の若い女性に多いのが特徴で、2000年以降、発症する人の数と死亡者数がともに増え続けています。

子宮頸がんは、定期的な検診とワクチンの接種で予防が可能で、早期に発見すれば、治療することができます。


しかし、2015年のOECD=経済協力開発機構のまとめによりますと、日本の子宮頸がん検診の受診率は42%で、
▽アメリカの84%
▽イギリスの78%
▽ニュージーランドの77%
▽オランダの65%など
ほかの先進国と比べて低い状態となっています。
妊婦健診で子宮頸がんが見つかるのが相次いでいることについて、日本産婦人科医会がん部会の上浦祥司部会長は「出産年齢が高齢化し、妊娠する人の多くが子宮頸がんを発症しやすい年齢層と重なっている。妊娠して初めて子宮頸がんが見つかると治療の幅が非常に狭くなってしまう。子宮頸がんになる率も、死亡者数も増えているのは先進国で日本だけだ。20歳から定期的な検診を受けることで自分の体を守れることを知ってほしい」と話しています。

調査の詳細

今回、日本対がん協会などは、妊娠した女性が受ける妊婦健診で子宮頸がんが見つかった人数を調べるため、全国の自治体を対象にアンケート調査を行いました。

調査は去年の秋から開始し、2017年度の1年間に妊婦健診で子宮頸がんが見つかった女性がどれくらいいるかを全国1741の自治体に尋ね、38%にあたる664の自治体から検診結果についての回答を得ました。

これらの自治体では2017年度に42万7000人が妊婦健診の際に子宮頸がんの検診を受け、1万341人が精密検査が必要とされました。

このうちの3726人について精密検査の結果がわかり
▽ステージ1以降のがんが69人
▽治療の対象となるごく初期のがんが165人
▽経過観察となる「中度の病変」は214人
▽経過観察となる「軽度の病変」は535人で見つかっていたことがわかりました。

治療の対象となるごく初期のがんも合わせると、子宮頸がんが見つかったのは234人に上っています。

日本対がん協会は「アンケートに回答がなかった自治体からも同じ割合で発見されると仮定すると、もっと多くの妊娠中の女性に子宮頸がんが見つかっていると考えられる」としています。

子宮頸がんワクチンの現状

子宮頸がんを予防する方法として厚生労働省は、20歳以上の人に対する2年に1回の検診に加え、子宮頸がんワクチンの接種を挙げています。

このうち、子宮頸がんワクチンは、7年前(2013年)小学6年生から高校1年生の女性を対象に定期接種に追加されましたが、接種後に原因不明の体の痛みなどを訴える女性が相次いだため、積極的な接種の呼びかけが中止され、現在の接種率はおよそ1%にとどまっています。

厚生労働省は、ワクチンの効果について、国内で年間におよそ2800人が子宮頸がんで死亡する中、原因の5割から7割を占めるウイルスへの感染を防げるとしています。

また、今月、スウェーデンの研究所のグループが発表した167万人の女性を対象にした大規模な調査結果では、ワクチンを接種しなかった女性では、子宮頸がんが進行した状態と診断されたのは、10万人当たり94人だったのに対し、接種した女性は10万人当たり47人と半減していて、子宮頸がんになるリスクが大幅に減ったとしています。

一方、厚生労働省は、1万人におよそ5人の割合で接種後に重いアレルギー症状などの「重篤な症状」が報告され、一部で認知機能の低下などが確認されているなどとしています。

妊婦健診の現場

大阪・天王寺区にある産婦人科では妊娠中の女性が1日に15人ほど、妊婦健診を受診しますが、妊娠がわかるまで子宮頸がん検診を受けたことがない人も多いといいます。

このため、妊娠を希望しているかどうかにかかわらず、クリニックを受診した女性に対して子宮頸がん検診を受けるよう案内を行っています。

妊婦健診に訪れた30代の女性は「妊娠するまで子宮頸がん検診を受けたことはありませんでした。症状も何もなかったので考えたこともなかったです」と話していました。

また、別の30代の女性は「妊娠を意識する前に婦人科に通ったことがありませんでした。症状がないのに診てもらってもいいのかなと思っていました。定期的に受けたらいいとは聞きますが、予約して病院に足を運ぶところまでせっぱ詰まっていなかったです」と話していました。

クリニックの脇本剛副院長は「妊婦健診が子宮頸がん検診を受けるきっかけになった人は多くいます。理由やきっかけがないと、産婦人科を受診しにくいかもしれませんが、日常の小さなことでも気軽に相談してもらいたい」と話していました。

子宮摘出経験した女性

妊婦健診の際に子宮頸がんが見つかり、その後、子宮をすべて摘出した女性に話を聞くことができました。

大阪府内に住む45歳の女性は、12年前、33歳の時に双子を妊娠しましたが、妊娠が判明した3日後、妊婦健診で子宮頸がんが見つかりました。

その後、がんが見つかった部分を切除する手術を2度受けましたが、がんを取りきることができず、医師からは「いま子どもを諦めて子宮を摘出すれば命は助かるが、子どもが生まれるまで治療を引き延ばした場合、命の保証はできない」と告げられました。

女性は、医師と話し合った結果、妊娠後期に入って以降、妊娠30週まで待って、帝王切開で出産することを決めましたが、おなかの中に赤ちゃんがいるため、治療もMRIなどの検査も行えず、およそ5か月の間、がんがどれくらい進行しているかわからない日々が続いたということです。

その後、女性は、帝王切開で双子を出産し、その1か月後に子宮をすべて摘出する手術を受け、がんの転移はなくその後の経過も良好だということです。

女性は「子どもを望んでいたので、誰がなんと言おうが産む、自分は死んでもいいから、子どもを産むという気持ちしかなかった。二度と産めなくなるので、子どもをあきらめる選択肢はなかった。産んだあとで、一緒に生きたいという気持ちが自分の中であふれてきて、子どもたちと父親と一緒に家族になりたいと思った。このとき初めて死ぬのが怖いと思いました」と話し、自身の経験を振り返りました。

女性は、妊娠を意識するまで子宮頸がんについて知らなかったということで、「ひと事ではなく、自分の体のことなので、恥ずかしいとか言っている場合ではない。私のような思いをもう誰にもしてほしくないので、自分の反省もこめて検診をしっかり受けてほしいしそれが当たり前の社会になってほしいと強く願います」と訴えました。