世界初 iPS細胞からの網膜細胞 網膜色素変性症の患者に移植

世界初 iPS細胞からの網膜細胞 網膜色素変性症の患者に移植
徐々に光を感じ取れなくなる「網膜色素変性症」という重い目の病気の患者にiPS細胞から作った網膜の細胞を移植する、世界で初めての手術を、神戸市の研究グループが今月実施したと発表しました。
この手術は神戸市にある神戸アイセンター病院の栗本康夫病院長らの研究グループが臨床研究として行いました。

グループでは今月上旬、重い目の病気「網膜色素変性症」を患う関西在住の60代の女性の目に、他人のiPS細胞から作った「視細胞」と呼ばれる網膜の細胞を移植する、世界で初めての手術を実施したということです。

手術では、iPS細胞から作った「視細胞」を直径1ミリ、厚さ0.2ミリのシート状にして3枚移植したということで、手術は2時間ほどで終わり、術後、特に異常は見られないということです。

「網膜色素変性症」は徐々に光を感じ取れなくなり、進行すると失明することもある病気で、国内におよそ3万人の患者がいるとみられますが、今のところ有効な治療法はありません。

グループでは、今回移植されたシートはごく小さいため大幅な視力の回復は難しいとしていますが、今後1年かけて安全性などを確認し、将来的には治療法として確立させたいとしています。

「中枢神経の細胞の手術でも大きな進歩」

栗本病院長は記者会見で、「今回移植した視細胞は中枢神経の細胞で、これまで治療法がなかった『網膜色素変性症』の治療法としてだけではなく、再生しないとされてきた中枢神経の細胞の手術という意味でも大きな進歩だ。中枢神経の再生は多くの患者、医療従事者の長年の夢であり、ほんの小さな1歩だが、無事に踏み出せたことは非常に感慨深い」と述べ、意義を強調しました。

iPS細胞 各地で臨床研究や治験

iPS細胞については、国内各地の大学や研究機関で再生医療での実用化を目指して安全性や有効性を確認する臨床研究や治験が始まっています。

世界で初めて実際にヒトでの臨床研究を行ったのは神戸市の理化学研究所などのグループです。平成26年に「加齢黄斑変性」という重い目の病気の患者にiPS細胞から作った目の網膜の組織を移植し、安全性などを確認する臨床研究を行いました。

同じく目の病気をめぐっては、去年、大阪大学などのグループが重い角膜の病気の患者にiPS細胞から作ったシート状の角膜の組織を移植する臨床研究を実施しています。

京都大学のグループはパーキンソン病の患者の脳にiPS細胞から作った神経のもととなる細胞を移植する治験を行い、新たな治療法としての承認を目指しています。

また、別の京都大学のグループはiPS細胞から作った血小板を血液の難病の患者に投与する臨床研究を行っています。

大阪大学のグループはiPS細胞から作った心臓の筋肉の細胞をシート状にした「心筋シート」を重い心臓病の患者の心臓に貼り付ける手術を治験として実施しました。

このほか、慶応大学のグループのiPS細胞から作った心臓の筋肉の細胞を患者の心臓に注入する臨床研究が国の部会で了承され、慶応大学の別のグループの脊髄を損傷した患者にiPS細胞から作った神経のもとになる細胞を移植する臨床研究も準備が進められています。