家族コロナ感染で孤立化の高齢者相次ぐ 都 受け入れ体制整備へ

家族コロナ感染で孤立化の高齢者相次ぐ 都 受け入れ体制整備へ
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同居する家族が新型コロナウイルスに感染したことで、必要な介護が受けられず孤立化する高齢者が相次いでいることを受けて、東京都は、介護施設などで一時的に受け入れる体制を整備していくことになりました。
自宅で暮らす高齢者をめぐっては、同居する家族が感染して支え手を失い、「濃厚接触者」となって介護サービスも受けられずに孤立したり、感染した家族がそのまま自宅に残って介護を続けざるをえないケースが起きています。

ことし8月には、都内のケアマネージャーらが、身近な人が感染した高齢者の受け入れ先を確保してほしいと都に要望していました。

こうした中、東京都は、家族が感染し、自身は検査で陰性だった高齢者を、施設で一時的に受け入れる体制を整備していくことになりました。
具体的には、それぞれの市区町村が緊急の受け入れ先となる介護施設や宿泊施設を確保し、必要な場合は介護スタッフを派遣して対応に当たります。

また、地域包括支援センターなどが「受入調整機関」となり、当事者からの相談に応じたり施設への搬送を行ったりします。

施設の使用料は市区町村が負担します。

都は、この事業を行う市区町村に、最大で1000万円を補助することを決め、早ければ来週にも実施要項を示して体制の整備を進めていくことにしています。

東京都介護保険課は「家族が感染しても高齢者が安心して生活でき、家族も療養に専念できるよう取り組みを進めていきたい」とコメントしています。

53歳男性「高齢者を誰が介護するのか明確な対策を」

高齢の親と同居する人の中には、自分が新型コロナウイルスに感染したあと、親の預け先が見つからないケースが相次いでいます。

関東地方に住む金井晃さん(53)は先月、勤め先の介護施設で利用者が新型コロナウイルスに感染。

金井さんも検査をしたところ「陽性」と診断されました。

金井さんは認知症の88歳の父親と同居しています。

高齢で重症化リスクの高い父親にウイルスをうつしてはいけないと、受け入れてくれる施設を探しましたが、感染者の「濃厚接触者」ということもあり、受け入れ先は見つからなかったということです。

このため金井さん自身が自宅で介護を続けざるをえませんでした。

父親はウイルスに感染せず、金井さんもその後、回復しましたが、家族が感染した時に高齢者を誰が介護するのか明確な対策を示してほしいと考えています。
金井さんは「自分は症状が軽かったので自宅で何とか介護できたが、もし重症になったらどうすればよいか分からなかった。高齢の父親にウイルスをうつすおそれもありとても心配でした」と話しています。

ケアマネージャー「全国にも取り組み波及を」

都内で活動するケアマネージャーで、8月に都庁に受け入れ施設の確保を要望した後藤紀行さんは「都内全域で対策が実施されることになり、利用者の安心は広がると思う。どこでも起こりうる事態なので、全国の自治体にもこの取り組みが波及してほしい。また、せっかく体制を作っても使われないと意味がなく、関係機関や一般の人たちへの周知にも力をいれるべきだ」と話しています。