感染不安で自主的に休んでいる小中学生 少なくとも700人以上

感染不安で自主的に休んでいる小中学生 少なくとも700人以上
新型コロナウイルスの感染への不安を理由に、学校再開後も自主的に休んでいる子どもたちについて、NHKが政令指定都市と東京23区に聞いたところ、少なくとも700人以上いることが分かりました。専門家は「実態を把握して学習の保障を急ぐとともに不安を取り除くケアが必要だ」と指摘しています。
NHKでは、学校が再開したあとも、本人や保護者の感染への不安から学校を自主的に休んでいる小中学生について把握しようと、全国20の政令指定都市と東京23区、合わせて43自治体の教育委員会に取材しました。

その結果、夏休み明けから今月上旬までに、感染不安を理由に休んでいる小中学生の実数を把握していたのは16自治体で、合わせておよそ730人に上ることが分かりました。

ほかの27自治体は、公表していなかったり、調べていなかったりして把握できなかったことから、実際にはさらに多くの子どもが感染への不安により休んでいるとみられます。

具体的には、本人や家族にぜんそくなどの基礎疾患があり感染への不安が強い子どもなどで、時々、学校に通っている子どももいれば、学校再開以来、およそ4か月登校していない子どももいるということです。

こうした子どもへの学習をどう保障しているか複数回答で聞いたところ、43自治体のうち、「学校が個別に宿題や課題を設けて学習」と答えたのが30か所で、「教育委員会や民間が作成した動画で自主学習」と答えたのは8か所、「他の子どもとオンラインで一緒に授業を受けている」と答えたのは4か所でした。

このほか、教員が家庭訪問したり、他の子どもが下校した放課後に個別に授業を行ったりしている自治体もありました。

各教育委員会からは、「学習面や生活面が心配」とか「協同的な学びや社会性の習得が難しい」、「感染対策は講じているが不安を取り除けない」など、対応の難しさを訴える声が寄せられました。

こうした状況について、早稲田大学教職大学院の田中博之教授は「オンライン学習も家庭での学習も成立せずに学習が十分保障されていない子どももおり問題は深刻だ。実際はさらに多くいると見られまずは人数や理由など実態を把握したうえで、学習保障を急ぐとともに不安を取り除くケアができるよう、国が学校現場を支援する必要がある」と話しています。

NHKアンケートでは「本人や家族の『疾患』理由が最多」

新型コロナウイルスへの感染の不安から、学校を自主的に休んでいる子どもがいる家庭からは、切実な声があがっています。

NHKがホームページなどを通じて感染不安から自主的に学校などを休んでいる児童生徒について、意見を募集する形でアンケートを行ったところ、8日までに163の回答が寄せられました。

このうちいまも自主的に休んでいる子どもがいる家庭は142あり、その理由として最も多かったのが「子ども自身や同居する家族に持病や基礎疾患があるため」で全体の4割近くになりました。

このうち、千葉県の40代の女性は、「母親の私が去年大病を患い、2度手術をして免疫力が下がっている。上の子は免疫系の病気で5回、入院歴があるほか、下の子は生まれつき内臓に疾患があり病院に通っている。とても登校できる状態にない」とつづっています。

大阪府の40代の女性は、「中学生の娘は過去に川崎病にり患し、ほかの器官に炎症を起こしたこともあり、感染した場合に娘の体が耐えられる保証はどこにもない」と、つづっています。

また、「子ども自身が不安から休むことを決めた」という家庭は全体の2割近くに上りました。

一方、「休みたくても休めない」という声も複数寄せられました。

この中には、「欠席したら学びが置いていかれる。先生の忙しい状況を考えると家庭学習のサポートもお願いできない」とか、「学びが保障されていないため感染リスクにおびえながら通わせている」などと、学習面の不安を挙げる声がありました。

学習をめぐっては、自主的に休んでいる家庭からも、「自宅学習のフォローがなく学力低下は避けられない」とか「通知表の評価をつけることができないのでテストも必要ないと言われ困惑した」などという声があがっていて、子どもたちの学びをどう保障していくかが課題になっている現状が浮き彫りになりました。

ツイッターで「#自主休校」と付けた投稿も

新型コロナウイルスの感染への不安から子どもが自主的に学校を休むことについて、ツイッター上では、「#自主休校」と付けた投稿が広がっています。

保護者と見られるものが多く、感染不安から学校を休んでいる間の子どもの学びの保障や、家庭や学校の対応など互いの状況を報告しあうなど、情報交換がされています。

取材した保護者の中には、「感染不安で休んでいるのは校内で1人だけと言われ孤独だったのでツイッターを始めました。同じ悩みを持つ保護者とつながり、気持ちが楽になりました」と話していました。

感染や長期入院おそれて登校しないケースも

感染への不安から学校を休んでいる子どもの中には、感染や長期入院を恐れて登校していないケースもあります。

栃木県に住む小学校低学年のきょうだいは、学校の友達がインフルエンザとノロウイルスに感染したあと、2人とも感染して1週間ほど入院し、高熱やおう吐などで苦しんだ経験から、新型コロナウイルスへの感染や入院を強く恐れていて、6月の学校再開から、ほとんど登校していません。

母親によりますと、担任の教員によって対応が大きく異なるといい、きょうだいの担任の1人は、「未知のウイルスで怖いのはわかります」と話し、毎週、プリントを提出すると採点やコメントを付けて対応してくれる一方で、もう1人の担任は、「登校するなら感染を覚悟して下さい」などと話し、テスト用紙を渡され親が自分で採点するよう言われたということです。

母親は、「親が教えるには限度があり、だんだん難しくなって遅れが出てしまったらと思うと心配です。子どもたちは怖がっていますが無理にでも行かせた方がいいのではと葛藤があります」と話していました。