空手 専用防具とシールド装着 「気合い」認めた初の大会

空手 専用防具とシールド装着 「気合い」認めた初の大会
東京オリンピックの新競技、空手で新型コロナウイルスの感染防止対策のため、大きな声を上げる「気合い」について控えるよう求められる中、「組手」に限って、頭部を覆う専用の防具と口元にシールドを着ければ「気合い」が認められた初めての大会が都内で行われました。
全日本空手道連盟はことし6月、飛まつによる感染を防ぐため、技が決まった時などに大きな声を上げる「気合い」を出さないことを検討するよう求めていました。

しかし、1対1で対戦する「組手」については、頭部を覆う「メンホー」と呼ばれる防具と口元に特製のシールドを着ければ飛まつのほとんどを防げる可能性が高いことが分かり、連盟は9月末、「気合い」を出しながらの大会や練習について認めました。

新たな取り組みが決まってから初めての大会が4日、東京オリンピックの会場となる東京・千代田区の日本武道館で行われました。

大会には関東地方の大学生が出場し、シールドはこの日初めて選手に手渡されました。

「メンホー」と呼ばれる防具は頭部を守るため、高校生以下に着用が義務づけられていますが、久々に使用する選手も多く、口元にシールドを貼り付けた防具をかぶって試合に臨みました。

選手たちは迫力のある「気合い」を何度も出して、蹴りや突きなどを決めていました。

慶応大学2年の女子選手は「メンホーと口元のシールドを着けての試合は大きな違和感はなかった。『気合い』を出せたので、気持ちを込めて試合ができた」と話していました。

“防具とシールドで飛まつ98%抑える”

全日本空手道連盟はことし7月中旬、大手の設備工事会社「新日本空調」と協力し、選手が「気合い」を出した時の飛まつの数を調べる試験を行いました。

試験は特殊な装置を使って行われ、高校生の選手2人が、何も着けない場合、頭部を覆う防具「メンホー」のみ、「メンホー」の口元にシールドを着けた場合の3つのパターンで行われました。

それぞれ「気合い」を5回連続で出して、5ミリの1000分の1の単位に当たる5マイクロメートル以上の飛まつの数の平均を比較しました。

その結果、「とう」と気合いを出した場合、何も着けない時には500個前後の飛まつが測定されましたが、防具のみでは7割から8割ほど減り、防具とシールドを着けると8個まで大幅に減って、飛まつが98%まで抑えられたということです。

また、「よっしゃ」と気合いを出した場合は、何も着けない時には300個余りの飛まつが測定されましたが、防具とシールドを着ければ僅か5個となり、こちらも98%まで減ったということです。

その一方で、口元をシールドで覆うため、選手が息苦しくならないか懸念され、連盟では今回の飛まつの測定とは別の調査で、防具とシールドを着けた高校生12人の試合前後の血液中の酸素濃度を測ったということです。

その結果はほとんどの選手が試合後の血液中の酸素濃度が90%を超えていて、試合前の数値と大きな変化はなかったということです。

全日本空手道連盟 医科学委員会委員「1つハードル超えた」

防具とシールドを着用して飛まつを防ぐ取り組みについて、全日本空手道連盟で医療やスポーツ科学の視点から選手をサポートする医科学委員会の鈴木浩司委員は、「選手の安全を守ることにつながる十分な対策だと言える。これで1つ大きなハードルを超えることができたと感じている」と話していました。

国際競技団体も評価

大会を視察した国際競技団体、WKF=世界空手連盟の奈藏稔久事務総長は「選手・審判の安全を守るためのいい方法だと思う。新型コロナウイルスの感染を防ぐという意味では参考になる」と評価していました。