「Go Toトラベル」東京発着スタート

「Go Toトラベル」東京発着スタート
観光需要の喚起策「Go Toトラベル」は、1日から東京発着の旅行が対象に加わりました。感染防止策の徹底が改めて重要となる中、宿泊施設で従業員と対面しないままスマートフォンでやり取りできるサービスも登場しました。
ことし7月に始まった「Go Toトラベル」の旅行代金の割り引きは、対象から外れていた東京都内への旅行と都内に住んでいる人の旅行も、1日から対象になりました。

感染拡大を防ぐ対策の徹底が改めて重要となる中、宿泊施設の利用者が従業員と対面しなくても、スマートフォンでやり取りできるサービスが始まりました。

大手旅行会社の「JTB」がITベンチャーと共同開発したこのサービスは、客室にあるQRコードをスマホで読み取れば、ルームサービスの注文や観光案内の確認、それに、チェックアウトの手続きなどができます。

今後、各地の宿泊施設に本格的に販売を始めるとともに、浴場やレストランの混み具合を確認できる機能なども加えていく方針です。

JTBの檜垣克己法人事業推進部長は「お客様とスタッフが安全、安心を確保しながら円滑にやり取りするのに貢献できると思う」と話しています。

専門家「移動自体リスク 3密避け行動を」

観光需要の喚起策「Go Toトラベル」の対象に1日から東京を発着する旅行が加わることについて、政府の分科会のメンバーは「感染拡大につながらないよう、旅行は小規模にし、3密が重なるリスクを避けて行動する必要がある」と指摘しています。

新型コロナウイルス対策を検討する政府の分科会のメンバーで、日本医師会の釜萢敏常任理事は「Go Toトラベル」について「もともとは、流行が落ち着いている中で実施する予定の事業だった」としたうえで「この2か月ほどで感染が拡大したかどうかをデータで裏付けるのは難しいが、総合的な評価として大きな影響はなかったと思う」と述べました。

そのうえで「今は爆発的な感染はないものの、新規感染者の減少は鈍くなっている。一方で医療がひっ迫している状況ではなく、経済とのバランスを考えていく必要もある。東京を加えるかは国の判断だが、今後、感染が拡大する地域があれば事業の対象から外すことも検討してもらいたい」としています。

さらに東京発着の旅行を予定している人に対しては「移動すること自体に感染のリスクがあるので、旅行は小規模にして時期や場所を分散させる必要がある。3密が重なるリスクを避けるなど、感染対策の基本を踏まえて行動してほしい」と呼びかけています。

Go To東京初日で新幹線にも旅行者

JR東京駅の新幹線のホームでは旅行に出かける人の姿が見られました。

東海道新幹線のホームでは、スーツ姿の人たちにまじって、「GoToトラベル」を利用して、旅行に出かけるという人もいました。

2か月の子どもを連れて家族で神戸に行くという男性は、「神戸は妻の実家なので、リゾートのようなホテルに泊まりつつ、初孫を見せに行きます。孫を連れていくのをこれまで控えていたので、感染に気をつけながら行ってきたいです」と話していました。

また、家族3人で京都に旅行に行くという女性は、「“Go Toトラベル”の予約方法は高齢者には分かりづらかったので、すべて娘にやってもらいました。外出をずっと控えていて、1年ぶりの旅行なので少しよい宿に泊まる予定です。楽しみです」と話していました。

JR東海によりますと、グループ会社の「JR東海ツアーズ」で、新幹線を利用した旅行商品の予約が、去年の同じ時期に比べて先月が、3割程度だった一方で、今月は7割程度まで回復しているということです。

加藤官房長官「経済効果の波及期待」

加藤官房長官は、午前の記者会見で「東京都が追加されることによって、他の地域も含め、全体としての経済効果の波及が期待される。これまでも『3密』の回避や手洗いの徹底など基本的な感染防止策をしっかりやってほしいと申し上げてきたが、引き続き、観光関連事業者や旅行者も含め感染症の拡大防止をお願いしたい」と述べました。

西村経済再生相「体調悪いときは家に」

西村経済再生担当大臣は、沖縄県糸満市で記者団に対し「事業者にも、旅行や食事をする人たちにも、感染防止策を徹底してもらい、皆で努力して感染防止と経済社会活動を両立させていくことが大事だ。感染が広がれば、また経済活動を抑制しなければならなくなる。その大前提として、体調が悪いときには家にいることを徹底していただきたい」と述べました。

東京対象追加でも休業継続の施設も

東京 葛飾区の宿泊施設ではキャンペーンによる利用客の大幅な増加は見込めないとして、引き続き休業することを決めました。

東京 葛飾区柴又の宿泊施設では、比較的安い料金で海外からの観光客などを受け入れていましたが、新型コロナウイルスの感染拡大で利用客が激減したため、4月上旬から臨時休業を続けています。

施設は「Go Toトラベル」の登録をすでに済ませていますが、東京が対象に加わっても利用客が大きく回復することが見込めず、営業を再開しても赤字が続くことなどから、今月末まで休業を続けることを決めました。

今は、施設の責任者が週に1回程度訪れて、清掃などを行っている状態だということです。

施設では「Go Toトラベル」は、割引額が大きくなる宿泊料金が比較的高い施設に人気が集まっているとみられるうえ、価格帯が安い施設も飲み放題の特典をつけるなど競争が激しくなっていることなどから、利用客を増やすことは難しいとしています。

「柴又フーテン」の谷川洋平マネージャーは「人件費などの経費を削減し生き延びていくため、休業しています。この状況を乗り越え、またオープンさせることがいちばんの目標です」と話していました。