座間 9人殺害事件初公判 【法廷詳細】

座間 9人殺害事件初公判 【法廷詳細】
3年前、神奈川県座間市のアパートで若い女性ら9人の遺体が見つかった事件で、強盗殺人などの罪に問われている29歳の被告の裁判員裁判の初公判が、東京地方裁判所立川支部で午後1時半ごろ始まりました。

被告入廷

法廷に白石隆浩被告(29)が入りました。
髪は肩まで伸びていて、青の長袖を着ていました。
めがねをかけて白いマスクをつけていて、時折、天井を見るなど、表情は落ち着いているように見えました。

人定質問

裁判の「冒頭手続」で、白石被告は、裁判長から証言台の前に立つように指示され、はじめに名前や職業などを尋ねられました。

これに対し、被告は「白石隆浩です」と、はっきりとした声で答え、職業については「無職です」と答えました。

被告罪状認否 殺害認める

白石被告は、起訴された内容について「起訴状のとおり間違いありません」と述べ、殺害などについて認めました。

弁護士罪状認否 被害者の同意得ていたと主張

被告の弁護士は、事件当時、刑事責任能力はなかったか著しく弱っていたと述べました。

また、被害者は殺害されることなどに同意していたとして、成立するのは承諾殺人の罪にとどまると主張しました

冒頭陳述

検察は冒頭陳述で次のように主張しました。

▼第1「事案の概要」
被告がおよそ2か月間にSNSを利用して知り合った被害者9人に対し、「一緒に自殺しよう」などとだまして自宅へ誘い込み、首を絞めるなどして失神させ、女性の被害者8人に性的暴行を加え、9人の首をつって殺害して現金などを奪い、遺体を切断するなどして一部を室内に保管した事案。

▼第2「発覚の経緯」
<平成29年10月24日>
9人目の被害者のIさんの行方不明届を警察が受理して行方を捜査していたところ、IさんとSNSのやりとりをしていた人物として被告が浮上した。

<10月30日>
警察官が被告のアパートを突き止めて訪問し、Iさんの行方を追及したところ、当初は弁解したがまもなく観念して自白し「金と性欲目的で9人を殺害した」という上申書を作った。また、被告の説明により、室内のボックス内から9人の遺体の一部が発見された。

<10月31日未明>
被告をIさんに対する死体遺棄容疑で逮捕し、その後被告は一貫して各犯行を自白した。

▼第3「各事案の主な犯行状況」
Aさん(21歳女性)
いきなり手で首を絞めるなどして失神させ、性的暴行を加え、その後ロープで首をつって殺害した(奪った金額は36万円の返済免除と現金数万円)。

Bさん(15歳女性)
いきなり手で首を絞めるなどして失神させ、性的暴行を加え、その後ロープで首をつって殺害した(奪った金額は現金数千円)。

Cさん(20歳男性)
いきなり腕で首を絞めるなどして失神させ、その後ロープで首をつって殺害した(奪った金額は現金数千円)。

Dさん(19歳女性)
いきなり手で首を絞めるなどして失神させ、性的暴行を加え、その後ロープで首をつって殺害した(奪った金額は現金数千円)。

Eさん(26歳女性)
いきなり手で首を絞めるなどして失神させ、性的暴行を加え、その後ロープで首をつって殺害した(奪った金額は現金数千円)。

Fさん(17歳女性)
寝ていたところを縛り、首にロープをかけるなどしていたところ覚醒。首を絞めて失神させ、性的暴行を加え、その後ロープで首をつって殺害した(奪った金額は現金数千円)。

Gさん(17歳女性)
いきなり手で首を絞めるなどして失神させ、性的暴行を加え、その後ロープで首をつって殺害した(奪った金額は現金数万円)。

Hさん(25歳女性)
いきなり手で首を絞めるなどして失神させ、性的暴行を加え、その後ロープで首をつって殺害した(奪った金額は現金数百円)。

Iさん(23歳女性)
いきなり手で首を絞めるなどして失神させ、性的暴行を加え、その後ロープで首をつって殺害した(奪った金額は現金数百円)。

▼第4「被告の経歴と犯行に至る経緯」
<平成2年10月9日>
神奈川県内で出生。その後、高校卒業後にスーパーやパチンコ店など職を転々とした。婚姻歴はない。

<平成27年10月>
インターネットを利用して女性を風俗店などに紹介するスカウトの仕事を開始した。

<平成29年2月>
職業安定法違反の罪で起訴された。

<平成29年3月>
保釈を機に実家に戻り、父親と2人で暮らしながら、倉庫会社でのアルバイトを開始した。
この際、被告は「父親のもとを離れて働かずに楽して暮らしたい」「女性のヒモになりたい」と考えスカウト時代の経験上、「自殺願望のあるような女性なら言いなりにしやすいだろう」と考えた。

<平成29年3月15日>
ツイッターのアカウントを開設し自殺願望を表明している女性を主なターゲットにしてやりとりを始めた。この際、自分に自殺願望があるかのような、うそのツイートを掲載したり、自殺願望を表明している女性らに「一緒に自殺しよう」と誘ったりした。

<平成29年5月29日>
職業安定法違反の罪で、懲役1年2か月、執行猶予3年の判決を受けた。判決後まもなく倉庫会社でのアルバイトをやめ、
それ以降は無職だった。

Aさんへの事件に至る経緯
1:8月上旬ごろにツイッターで自殺願望を表明していたAさんと知り合い、自殺を思いとどまらせる。
2:Aさんに自分との同居を持ちかけ、Aさんから預かった金で今回の犯行現場のアパートを借りる(この際、Aさんのヒモになれそうもなければ部屋でAさんの首をつって殺そうと考え、あえてロフト付きの部屋にした)。
3:いずれはAさんが自分から離れていくと感じたため、Aさんから預かった金や所持金を奪う目的でAさんの殺害を決意した。

8月23日(Aさん事件)
Aさんの首を絞めて失神させ、性的暴行を加えて殺害し金を奪う。
被告は快感を覚えるとともに、大金を手に入れたことに味をしめる。この方法なら働かずに金を手に入れられ、性欲も同時に満たせると考え、同種犯行の継続を決意した。

8月28日~10月23日
(Bさん事件~Iさん事件)
女性の被害者に対する共通の手口
1:自殺願望を表明している女性をだまして会う約束を取り付け、アパートに誘い入れる。
2:女性が金づるになりそうかどうか見極める。
3:金づるになりそうもなく、本気で自殺する気もないと判断するや、いきなり首を絞めて性的暴行を加える。
4:その後、首をつって殺害して金を奪い、証拠隠滅のために遺体を損壊するなどする。

※女性を失神させて性的暴行を加え、かつ、その所持金を奪うことが7人の女性を殺害した動機。

Cさん(男性被害者)を殺害するに至った経緯
CさんはもともとAさんとのつながりがあったことなどから、Cさんを通じたAさん事件の発覚を邪推し、口封じと金を奪う目的で殺害した。

▼第5 争点

(争いのない部分)
・被害者全員を失神させ、女性の被害者8人には性的暴行を加え失神中に殺害した事実
・被害者全員の遺体を損壊したり遺棄したりした事実

(争いのある部分)
1:被害者が
「被告により殺害されること」を真意に基づいて「承諾」していたか
(明示の承諾を得ずに被告がいきなり殺害行為に及んだ事実には争いがない)

●検察官の主張
各被害者の承諾はなく、被告の行為は単なる殺人であり、それぞれの犯罪が成立

●弁護士の主張
各被害者は、黙示のうちに意に基づく承諾をしており、同意殺人罪が成立
(さらに各被害者が被告による財産取得を承諾していたかどうかにも争いがある)

2:責任能力
物事の善悪を認識・判断する能力+その認識・判断に従い行動する能力の有無(責任能力が問題となるのは、罪を犯した人に精神障害があることが前提)

●弁護士の主張
被告には何らかの精神障害が存在したはずで、無罪もしくは刑を軽減すべき

●検察官の主張
被告は一貫して目的にかなった行動をしていて何ら精神障害はなく、責任能力に全く問題はない

▼第6 重要な情状事実

罪質の悪質性、専ら自己の欲望の充足を目的とした動機、計画的犯行で態様は卑劣かつ残虐、被害結果の重大性、ご遺族の処罰感情、犯行後の事情の悪質性など。

弁護士の冒頭陳述詳細

被告の弁護士は冒頭陳述で次のように主張しました。

去年までの10年間で平均2万5000人が自殺で亡くなっており、自殺は社会問題となっている。死を選ぶ理由はさまざまで、なぜ死を選ぶのか分からない人もいる。Aさんをはじめとする9人も、そういうみずからの死を望む気持ちがあった。それに基づいて行動を起こしSNSで白石被告と知り合った。

希死念慮は周囲から分からず、死にたいという気持ちが外に出る人もいれば、内に秘めた人もいる。希死念慮があっても前向きな言動をする一方で、胸の内にあるかもしれない。

今回の被害者の9人に共通しているのは、SNS上で死を望む気持ちを表明し、白石被告とつながりやり取りをしていた点。
これらの内容は死について具体的なもので、時期や場所、方法などについてやり取りしたうえで、9人は被告のところに行った。被告が強制したわけでも、脅して誘拐したわけでもない。SNSでのやりとりを通し、被告の手で死が実現されることを分かったうえで、みずからの意思で被告のもとに来た。9人には承諾があり、承諾殺人罪が成立するにとどまる。

次に責任能力で、被告は何らかの精神障害にかかっていた。その影響で、心神喪失の状態もしくは、心神耗弱の状態だった疑いがある。十分に調べてほしいという趣旨で、裁判所には精神鑑定を申し入れている。

9人にどんなことがあり死を望むようになったのか、行動を起こした時の心境について、丁寧に検証してもらいたいし、よく分からないままではいけない。

検察官は殺害の承諾がなかったことは間違いなく、責任能力も間違いなくあったと証明しなければならない。証拠をまっさらな目で見て、公正で公平な裁判にしてほしい。