従業員にPCRの定期的検査で入湯税引き上げ 栃木 那須塩原

従業員にPCRの定期的検査で入湯税引き上げ 栃木 那須塩原
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栃木県那須塩原市は市内の宿泊施設の従業員らを対象に、新型コロナウイルスの定期的な検査を行うことになり、その財源として入湯税を引き上げるための条例の改正案が、28日の市議会で可決されました。
那須塩原市は、観光客に安心して来てもらいたいと来月から、月に1回、市内のホテルや旅館の従業員らのうち希望者を対象に、PCR検査などのウイルス検査を行うことにしています。
検査費用の一部は市が負担することにしていて、その財源として入湯税を引き上げるための条例の改正案が、那須塩原市議会に提案され28日、採決が行われました。

当初、市は入湯税を一律で200円引き上げるとする案を提出していましたが、宿泊事業者から客離れを懸念する声が上がり、その後、議会で宿泊料に応じて引き上げるよう修正されました。

修正された内容は、ことし12月から再来年3月まで、宿泊料が1万円以下の場合は入湯税を50円、2万円以下は100円、それ以上の場合は200円引き上げるとしています。

28日の本会議では反対する議員が「PCR検査は安全証明にはならず、観光客が賛同しているか不明だ」などと、討論を行いましたが、採決の結果、賛成多数で可決されました。

那須塩原市によりますと、宿泊施設の従業員らが定期的にウイルス検査を行う取り組みは、全国でも珍しいということです。

渡辺美知太郎市長は「現状では最善の決定になったと思っている。10月から東京でもGo Toキャンペーンが始まり、多くのお客様に来ていただくが、万全な体制で市民の不安に応えたい」と話しています。

地元の温泉旅館は

入湯税を引き上げる条例の改正案が可決したことを受けて、引き上げに反対してきた塩原温泉旅館協同組合の田中三郎理事長は、本会議を傍聴したあと「一貫して反対してきたが、市や議会からは回答がなく、粛々と可決されたことは非常に残念だ。検査自体に反対している宿泊施設もあるのに入湯税を引き上げるのは、お客様の疑問に答えられない」と話しました。

一方、検査と入湯税の引き上げに賛成している板室温泉旅館組合の室井孝幸組合長は「選ばれる温泉地、観光地となるために定期的に検査をして『安心安全だから来てください』といえるのは本当に、すばらしいことだと思っている。入湯税が上がるのはしかたがなく、お客様に理解をいただきたい」と話しました。

これまでの経緯

那須塩原市が、宿泊施設の従業員らへの定期的なPCR検査の実施を打ち出したのは、ことし7月でした。

渡辺美知太郎市長は記者会見で、感染防止対策の「見える化」が必要だとして、市内のホテルや旅館の従業員らを対象にPCR検査を行うとともに、検査費用の財源に充てるため、入湯税を引き上げる考えを示し、8月からは市が費用を負担したうえで試験的に実施していました。

市としては、従業員らの検査を行うことで宿泊施設などが安心・安全であることをアピールして、多くの客に来てもらうとともに、地元の市民にも安心してもらうことがねらいです。

しかし、関係者からは強い反発もありました。
栃木県内でも有数の温泉街、塩原温泉の旅館協同組合が8月に、加盟する48施設にアンケートを行ったところ、▽半数の24施設が定期的な検査に反対、▽入湯税の引き上げには、32施設が反対しました。

アンケートでは、検査で陽性となった場合や、入湯税の引き上げによる観光客の減少を懸念する声があげられ、組合は、この結果も踏まえPCR検査実施の見直しと入湯税引き上げの中止を求める要望書を、市に提出しました。

こうしたことから市側は、入湯税の引き上げについて、市議会に提案した条例の改正案の取り下げを提案しましたが、市議会が取り下げを認めず、議会で引き上げ額に幅を持たせる案に修正されました。